エマニュエル・スチュワート氏が語るヘビー級史 PART2 | Go↑kunの海外ボクシング記♪

Go↑kunの海外ボクシング記♪

ボクシング…勝者と敗者のあまりにクッキリとしたコントラスト…。魅力的な選手達のバックグラウンド、ボクシングビジネスの側面、プロモーター達の思惑、選手の声、あまり入ってこない海外ボクシング情報を書きたいと思います!宜しくお願い致します!

さてスチュワートさんが語るヘビー級史、続きを頑張ります^^

【以下ニュアンス訳文】※誤字脱字誤訳ご容赦下さい。

Q:
モハメド・アリは自他共に彼が最も偉大なヘビー級だと言われてます。彼がグレーテストだったと思いますか?あるいはジョー・ルイス辺りには別の意見があったでしょうか?

エマニュエル・スチュワート(以下E.S.):
ジョー・ルイスとモハメド・アリは2人の最も偉大なファイターだと言えるだろう、でも別の意味でね。ジョー・ルイスは彼の時代で成し遂げたことを考えると最も偉大な王者だったと言えると思う。当時に11年に渡って25度の防衛記録を達成したんだからね。当時に彼がしたことを象徴している戦いがマックス・シュメリング戦だろうね。ヒトラーのイメージがあった世界を支配しようとしていた怖いドイツを体現していたシュメリングとの対戦は印象深いよ。ボクシングの枠を超え、スポーツの枠を超えた戦いだよ。本当に凄い状況だったんだ。2人の男が裸でリングという狭い空間で殴り合うことが世界中に影響を与えた。アメリカだけじゃなく世界中にね。そして彼は信じられない様な見事なノックアウトを見せてくれたんだ。まるでヒトラーを倒したかの様にね。あの瞬間から彼の存在はボクサーを超えたんだ。今後、恐らく誰も彼の領域にはたどり着けないだろうね。チャンピオンという言葉を聞いた時、彼が思い浮かぶ。もしルイスとアリが戦ったら…間違いなくアリが勝つとも思うんだ。アリはルイスに問題を生じさせる全ての要素を持っていたファイターだからね。ジョー・ルイスは動きの良い相手には苦戦していたんだ。サイズが小さくてもビリー・コンとかジャージー・ウォルコットの様なね。ジョーのマネージャーをしていた人を知ってるんだけど、やっぱりジョーは良く動くファイターを苦手としていたことに同意していたよ。それにしたってジョーは彼の時代で全員倒しているわけだし…完璧な紳士だったよね。だからルイスはチャンピオンという言葉が最も似合うグレーテストだったと思うんだ。実際に戦ったらアリが勝ったとも思う。アリは尊敬に値すべき男だ。彼はスタイル云々ではなく、誰とでも何とでも本当に戦った男だったからね。スタイル的に苦戦するであろう相手であろうが、彼はアンジェロ・ダンディに『戦うぜ!』って言うだけだった。ケン・ノートンなんてスタイル的には最悪だったはずだよ。エルボーは使うしアリの武器だったジャブと右ストレートをブロックするしね。それでも戦った。フレイジャーとも何度も戦った。ロンドンに行ってブライアン・ロンドンとヘンリー・クーパーと試合をした。カナダに行ってジョージ・チュバロと戦って、ドイツに行ってドイツ人のカール・ミルデンバーガーと試合をした…。彼は対戦相手のスタイルも場所も関係なく誰とでも何処でも戦ったんだ。リマッチだろうが何だろうがね。ルイスもアリも時代背景の違いはあれど2人のグレーテストだと思うよ。でもそれだからと言って、彼れらがラリー・ホームズに勝てたかとか、フォアマンに勝てたかどうかは分からない。まぁアリは一度フォアマンに勝ってるけどね。

Q:
アリが全盛期だったとして、誰が最もタフな対戦相手として思い浮かびますか?

E.S.:
アリは殆ど全てのスタイルのファイターと戦ってきたと思うからなかなか特定するのは難しいけど…思い浮かぶのはジョー・フレイジャーなんだ。もしジョー・フレイジャーが10cm位背が高くて10ポンド位重かったら、アリにとって悪夢になったかも知れないよ。フレイジャーのスタイルもそうだけど、彼のメンタル的な強さも凄いものがあった。アリがいつもの様に試合前の挑発をしていたけどフレイジャーには全く効果がなかった様だし。フレイジャーがそこまで大きくなかったことはアリにとって救いだったかも知れないね。アリは得意のジャブと右ストレートだけではフレイジャーに勝つことは出来なかったんだ。思い出すのは最後の戦いとなった第3戦が印象深いよ。アリは途中で自分のボクシングスタイルではフレイジャーに勝てないと思ったんだろう。途中から2発打たれたら4発返すファイター型になったからね。それで勝利したんだからアリの凄さも物語ることにもなるんだけど。アリは自分本来のボクシングが通用しないと分かったら試合中に完全にそれを捨て去ることが出来た。ノートン戦なんかもそうだった。ノートンはスタイル的にアリは苦手だったはずだけど打ち合いをものにしたんだからね。ノートンは大きかったけど、メンタル的にフレイジャー程タフではなかった様だね。

Q:
ロッキー・マルシアノはヘビー級王者の中で唯一無敗で引退してます。彼はサイズ的にも小さかったこともありあまり評価はされていない様です。マルシアノはどの様にご覧になりますか?

E.S.:
マルシアノのスタイルでは現在のヘビー級には通用しないだろう。サイズで劣る時はスピードで上回る必要があるけど、彼には特筆すべきスピードもなかったからね。対戦相手の質も疑問は残る。エザード・チャールズやアーチー・ムーアとは戦って勝利しているけどね。彼は過大評価されていると私は思う。クロンクジムに行った時に彼の特大ポスターが飾ってあったんだが、我々全員何故なんだと思ったもんだよ。まぁ彼は彼の時代でベストだったことは間違いない。小さくて動きもそれ程良くなく、リーチも短かったのに、凄いトレーニングをしてコンディションを保って勝ち続けたことは尊敬に値するよ。彼の時代に速いファイターがいなかったことが幸いしていると思うけどね。マルシアノは人々が思っているより頭の良いファイターだったとも思うんだ。彼のフィルムで勉強したけど、クリンチにいくと見せかけて左フックを打ち込んだり、ボディへ目線を送って上を打ったりしてたよ。彼も自分のサイズのハンディを理解して戦っていたんだろうね。マルシアノのパンチ力とコンディション作りは凄いものがあっただろう。ジャージー・ウォルコット戦のワンパンチ…13Rだったかな。ダウンもして劣勢からの逆転パンチ、アーチー・ムーア戦のKO、エザード・チャールズ戦、凄いパンチだったよ。全ての試合で止められてもおかしくない程の劣勢からの逆転だったしね。彼は"ロッキー"という言葉を生み出したんだ。イタリア人には勿論、多くの白人のキッズ達にとってももの凄いヒーローなんだ。試合の面白さ、ワンパンチの強さ、そしてコンディション作りという意味で彼はインパクトを与えたんだ。

Q:
アリ VS マルシアノがコンピューターによって予測され、13RKOでマルシアノ勝利と出ておりましたがそう思いますか?彼らがピークで激突していたらどの様になったと思いますか?

E.S.:
アリとマルシアノが戦っていたら、アリが勝っていたと思う。アリは大きいし速い、そして顎も強かったんだ。コンピューターをプログラムしたのは人間だろ(笑)全く参考にならないと思うね。マルシアノには分が悪い戦いになったはずだよ。彼の時代のヘビー級は188ポンド~190ポンド位だったはずだ。200ポンドあったら当時は巨人だったと言われてた位だよ。現在で200ポンドなんて言ったら…クルーザー級の試合ウェイトだろ?アリにはどう転んでも勝てなかったと思うよ。

Q:
ジャック・ジョンソンは長いヘビー級の歴史の中でも非常に興味深い男だと思います。評価が分かれるファイターだと思いますが貴方はどう見ますか?

E.S.:
ジャック・ジョンソンはファイターというだけでなく信じられない男だよ。勿論凄いファイターでもあった。彼はボクシングの試合においてコントロールすることを最初に始めた人だろうね。それまでの試合はそんな余裕なんてなかったはずだから。彼のリング上で成し遂げたことも凄いけど、それよりもやっぱり彼のキャラクターが強烈だっただろう。当時の白人至上主義の中でそれに立ち向かっていったんだから…。だから私から見るとボクシング云々ではなく、彼のキャラクターが印象深いよ。彼は良いファイターだったはずだよ。でも掘り下げてみると、戦った相手は170cm程度ばかりだ。トミー・バーンズ、スタンリー・ケッチェル、ジミー・ジェフリーズ…。だから彼はファイターというよりビジネスマンの印象が強い。世界中を旅して一日に何度も着替えて、各国の大統領と会ってね。確かに凄い男だよ。

Q:
ジョー・フレイジャーはモハメド・アリを初めて倒したファイターです。それでもジョージ・フォアマンに喫した2度のKO負けの印象が強いのかオールタイムグレートとしてはそれ程語られていない様に思います。フレイジャーはヘビー級トップ10に入ると思いますか?

E.S.:
そうだね…。彼がアリを倒した最初の男だっていうことは間違いない。彼が成し遂げた中で最大の勝利だろう。フォアマンにとってはフレイジャーを倒した試合、アリにとってはフォアマンを倒した試合という風にね。フレイジャーにとっては、オスカー・ボナベナ戦やジミー・エリス戦がかすんでしまっていることは不幸だよね。私は彼がアマチュアの時から見ているが良いファイターであることに間違いはないよ。彼がプロに転向した時の激しさはマイク・タイソンと同じ位のレベルにあったと思う。タイソンより優れていた点もあった位だ。タイソンの方が一発のパンチはあったかも知れないけどね。フレイジャーにとって最も大きな試合だったフォアマン戦でKO負けしたことが彼の評価を著しく下げていることは間違いないね。フォアマン戦のKO負けで彼の功績はアリ戦の勝利だけになってしまったから。まるでルイスとシュメリングみたいな印象だよ。フレイジャーといったアリだもんね。

Q:
リディック・ボウの全盛期はイベンダー・ホリフィールドとの第一戦位だったと思います。もしボウがもっと身体のケアをしっかりしていて真剣なトレーニングを行っていたとしたら、彼は何処までいけたと思いますか?

E.S.:
ボウは素晴らしいファイターになり得たよ。彼はオールタイムグレート、トップ10にはなれただろうね。偉大なトレーナー、エディ・ファッチの手腕も大きかったと思う。ボウがジェシー・ファーグソンを倒した夜を思い出すね。観戦していたんだ。私はホリフィールドと契約を結んだ直後だったしリマッチが決定していたからね。ボウは本当に強かったし、ホリフィールドをどう鍛えたらボウに勝てるか全く思いつかなかった位だ。ジャブ、アッパー、コンビ…本当に凄かった。私の記憶が確かなら、あの試合以降、エディ・ファッチはボウが自分をコントロール出来なくなったと言っていたよ。あの試合の後から、チームもマネージメント側もボウが次代のアリになると煽りまくってね。リマッチでは、私がトレーニングしたイベンダーがボウに勝ったんだ。ボウの評価はガタ落ちだったね。その後もゴロタ戦とか、悪い試合が多かったし。ボウは偉大な王者になれる資質はあったよ。そしてその方向に向かっていたんだが、ジェシー・ファーグソン戦を最後に道を違ったんだろう。

Q:
ボウとルイスがプロで戦わなかったことは残念でしたか?

E.S.:
本当に残念だったね。ボクシング界にとって大きな試合になったはずだし良い試合になったと思ったから。アリ VS フレイジャーの様になる可能性があったと思うんだ。両者の持つバックグラウンドも良かったしね。88年の五輪からのライバルだったあし、サイズもでかいしスキルもあった。本当に実現したらと興奮していたよ。ボウがプロになって間違いなく実力を磨いていたから、アマチュア時代からの成長があったから、本当に楽しみだった。

Q:
どちらが勝ったと思いますか?

E.S.:
レノックスが勝ったと思う。メンタル的にもフィジカル的にも強かったからね。スキルの面ではもしかしたらボウが若干上回っていたかも知れないね。エディ・ファッチによって正しい方向に向かっていた時のボウは本当に素晴らしかったよ。それでも12Rの長丁場を考えるとレノックスが上回ったんじゃないかな。ファッチも同意してくれたけど、ボウのメンタルには子供の部分が消えなかったんだ。レノックスはある意味冷静に勝負に徹することが出来たからね。その辺りが勝敗を分けたんじゃないかな。

以上

ふぅ~…疲れた^^まだパートIIIに続きます。

度々引き合いに出されるルイス×ボウの五輪決戦。


スチュワートさん絶賛のジェシー・ファーグソン戦!
1R終盤の左フックは凄いっす。打ち抜いてますよねぇ…。


後一つ…頑張ります^^

チャオチャオ♪♪