研修を通して感じた研修の意義と見えたものとは | ≪バレンシアのサッカーを追え!≫

≪バレンシアのサッカーを追え!≫

シーズン終盤、残り2試合。
レアル・ソシエダとついに同勝ち点に!
ホーム最終戦の勝利を目指せ!Amunt Valencia!


“Valencia C.F.”の情報、試合考察、
選手のコメントを現地より記事としてお伝えします。(残り8日。)

NPO法人スポーツ指導者支援協会が主催している海外研修プロジェクトに縁あって参加をさせて頂きました。
講習会開催、指導者派遣、映像配信の3つのサービスを提供し、指導者や、選手、保護者をサポートしている団体で、今回の研修もその一環。
以下のHPを見てもらえればさらに詳しくわかるかと思われます。
http://sportif-support.net/

主に、W杯優勝国(前回と今回はスペイン)へと足を運び、見て、聞いて、感じることで、指導者の能力を向上し、その後の指導に還元していくことを目的としています。

今回はバルセロナに6日、ビルバオに3日間滞在。
バルセロナでは主に試合観戦、練習観戦、Say footという団体での指導実践を。
ビルバオではアスレチック・ビルバオの練習見学とクラブ関係者の方との対談、そして地域クラブの練習見学などをしました。

まずは、コーディネーターを務める
伊藤  慧さんの紹介をさせて頂きたいと思います。
先程、紹介したNPO法人で主に活動をされています。食生活サポートという名目で、選手や保護者の方向けに出張講習を行ったり、今回のような海外研修のコーディネートをしたりしています。
提供をしている側なだけに、参加者が自主的に動くことを促すことに長け、気付きに敏感な方だという印象を受けました。

そして、紹介が遅れましたが
私は、バレンシアでスポーツライターを目指して活動している21歳。
名前は 山﨑 祐輔と申します。
ブログを読んで頂いている方はご存じでしょうが、
2010年10月からバレンシアに在住。
日本では、お金を稼ぐためのアルバイトの傍ら、地元のクラブで父とともに小学校低学年の子供たちの指導をしていました。
現在は、一時帰国を経て、トータルで1年と1ヵ月となります。
振りかえると昨年は、語学の向上と友達作りをすることができ、非常に充実した1年を過ごせました。
そして今年は、夢であるライターを目指し、現在は地域リーグの下部組織で第二監督を務めています。
以後よろしくお願いします。

では、本題の研修について参りましょう。

指導者支援協会ということもあって、参加者は指導者や指導者を目指す人がほとんどで、私の様なライター志望での参加は初めてとのこと。
「私からも何か刺激が与えられていればよいのだが。」と少し苦笑い。

さて、参加者の方の簡単な紹介をさせていただきます。

学生3名、指導者1名の4名。
学生は、現役のプレイヤーでもあります。

一人目は、東京学芸大学2年生 河村 聡史くん。
選手としてはGK。FC東京のサッカースクールで育成年代の指導をしています。
将来、地元の山口県でサッカークラブを創設してサッカー界を盛り上げたいとのこと。指導者の道を志したきっかけは、恩師への感謝の気持ちから。
積極的で、影響を受けやすいが、相手の気持ちに立って考えることができる青年。

続いて、東京学芸大学2年生 吉村 俊希くん。
ポジションはMF。同じくFC東京のスクールで指導をしています。
物静かな雰囲気ながら、夢には熱い思いを持っている青年で、地元の新潟県上越市のサッカーへの関心を高め、上越市から日本のサッカーを盛り上げたいとのこと。
相手の話しを落ち着いて聞くことができ、真剣に取り組む姿はまじめそのもの。

唯一の紅一点である、聖和学園高等学校3年生 吉村 碧さん。
今回の研修参加者の中で最年少ながら、自身のプレーの質の向上と現役後に指導者としてサッカーに関わっていくことも考え、参加した様子。
先に紹介した俊希くんとは実の兄妹。名門女子サッカー部の主将も務めています。
意欲的で、自分の求めるものに対して非常に貪欲な女の子。

最後に、もう一方。
名前等は控えさせていただきますが指導者の方がいらっしゃいました。

以上の計6名での研修となります。


研修の内容に入る前に一つ。
スペインにみなさんはどのようなイメージを持っていますか?
少し想像してみてください。

・フラメンコや闘牛に見る情熱さ。
・ガウディやピカソの作品。
・スペインの名物料理 パエリア!
・2010年サッカーW杯での優勝。

などなど、いくつか頭に思い浮かんだでしょうか。
それは、ほとんど正解だと思います。
ただ、実際に場所を訪れて、食事をして、人と触れ合うことで印象となる。
知っているのと知らないのでは大きな差が生まれる。
このことを忘れないでいただきたい。

彼らの場合も同じで、初めに想像していたスペインとは違うイメージを持ち帰ったことでしょう。何が。とは言えないがそれこそがリアルなのです。

最初に合流した時の表情は(移動の都合上、私は3日目から合流)、堅かったように思える。
しかし、研修を進めるにつれ、街が、人が、文化が、知識や感性を与え、表情が豊かになって行くのを感じた。

この研修だからこそ味わえるリアルさを、私は伝えたい。
出会う人、見るもの、生活する場所。
全てが、普通の生活で体験できないこと。

参加者の方への初めの第一印象は、
真剣で、何かを求めてきている。
と言ったものではなく、至って普通でした。

バレンシアでお世話になっている方も、初日は一緒に行動していたのだが、
彼が実際に挑戦している姿を見ている分、なんだか物足りなかった。
のちに私が感じた彼らの印象が変わるのだが、それは後のお話。

最初に私たちが、訪れたのがバルセロナの練習場。
Ciutat Esportiva de Joan Gamper(シウタット・エスポルティーバ・デ・ジョアン・ガスパール)。
電車で市街に出るのだが、約30分で最寄り駅に到着。そこからさらに歩いて10~15分ほど。

練習場ではバルセロナ女子VSレバンテ女子の試合が行われていた。
私たちが待っていたのは、後半開始だった模様。

ここで一番雰囲気が変わったのは、吉村さん。
やはり、女子ということ、プレーの向上をしたいという意欲からか少しテンションが上がってわくわくしていたのだろう。
席の関係で、試合中の表情は見ることが出来なかったのだが、終わった後の興奮していた姿はよく覚えている。

試合自体はバルセロナが、0-2の状況から後半だけで3点をぶち込んで逆転勝ち。
要所、要所でFCバルセロナ男子のトップチームと同じようなプレースタイルを見ることが出来た。また、レバンテの守備組織も非常に男子と似通った所があり、興味をそそられた。

一人、河村くんだけはGKに注目していて、彼ならではの分析や「僕ならこうするのに。」というような葛藤もあったようだ。 レバンテのGKを物凄くほめていたなぁ。

場所は変わって、FCバルセロナのホームスタジアム(カンプ・ノウ)へ。
同じように電車で揺られ30分ほど。そして、歩いて20分。
全然リッチじゃないです。みんながみんな歩いて、電車に乗って移動する。
年の差や仕事の実績など関係なく、皆で同じことをする。
これもこの研修の魅力の一つかなと思います。行動を共有するって言うのですかね?

少しズレましたが、カンプ・ノウに到着。
何度見ても大きいですね。私は3回目ですけど、驚きます。
参加者もみな一様に感動をあらわにしていました。

ですが、まずは隣のグラウンドで行われるユースチームの試合を見ることに。
ユースチームとは言え、バルセロナの試合をただで見ることが出来たのは幸運だと思います。学生たちのお財布にも優しいですし。
ユース年代の子たちはスペインでは、
U-18をフベニール、U-15をカデーテ、U-13をインファンティール、U-11をアレビン、U-9をベンハミン、それ以下をプレベンハミンと呼びます。
参考までに知っておいてください。

私たちが観戦したのはフベニールの試合。U-18ですね。

対戦相手はサラゴサのフベニール。
レベルとしてはさほど苦労する相手ではありません。
実際に先制したのも、バルセロナでした。
早いパス回しと、振り子の動きで相手を引きつけるサッカーはやはりこのユース年代でも同じのようです。

しかし、徐々にサラゴサがプレスの位置を高くし、展開の早い攻めを見せていくとバルセロナにも焦りの色が目立ち始めました。
サラゴサはスピードのある10番を中心にサイドを大きく使って行き、前半終了間際に右サイドで選手が倒されPKを獲得。もちろん、きっちりと決めました。
前半は1-1で終了。

試合が途切れた所で回りを見渡してみると多くの日本人が。
2日後に指導実践を手伝って頂くSay footという団体のメンバーの方々と日本からスペインサッカーを学びに来た指導者の方が2名。

これだけ日本人が多いことからも今のバルサ、スペインのサッカーの注目度が実感できます。同時に、バレンシアにもこんな時代が来ればとも思います。

では、後半の様子を見ていきましょう。
後半に入るとバルサの監督はすぐに動きます。
終始崩されていた左SBの選手を下げて他の選手を投入。
テコ入れをすぐに行う辺りはゲームの展開をよく見ているなぁと感心。
しかし、すぐにセットプレーから失点。さらにはキャプテンのDFの選手が負傷交代と相次いでトラブルが発生。

冷静な判断が問われる所でしたが、バルサの監督は奇策に打って出ました。
スピードがあり、攻撃の際に何度もいい仕掛けを見せていた左利きのWG(ウイング)の選手を右SBに、中盤を担当していた選手が左SBに移動、新たに前線の選手を一枚増やしたのです。
私は、単純に攻撃にアクセントをつける意味での交代だと思っていたのですが、どうやら違ったようです。

客観的に観た上で、チームの状況を探り、ウィークポイントを修正する。
非常に感銘を受けた点だったので、この部分はあえて切り取って書いてみたのだが、みなさんはどのように考えるだろうか?

面白いとみるか、おかしいとみるか。
答えはわからないが、興味を持つところである。

試合は結果的に5-2でバルサが勝利。
奇しくもまた逆転勝ちという試合展開で十分に楽しめた。
FWの9番に関する議論が次の日のミーティングで行われるのだが、それはまたあとで。

夜も更けてきて、いよいよバルサのトップチームの試合。
対戦相手はバレンシア。
強豪との戦いだからか観客の人数もこの上なく多く感じられた。
裏付け出来るデータがないのが悔やまれる所だが、目で見た限りでも満席なのではないかというほど。

ここでちょっとしたマメ知識。バルセロナファンのことを現地の人たちはクレと呼ぶ。
そんなクレの興奮ぶりも最高潮となった夜21時半、キックオフ。
ここまで、カテゴリーは違ったがFCバルセロナのサッカーを実際に見てきたためか、トップチームのサッカーには洗練されたものを感じた。
速いパスをテンポよく複数回まわし、相手を錯乱させるサッカー。
見ているだけで鳥肌が立ってしまった。

しかし、どういうことだろうかこの試合も、また先制されてしまう。
サイドから上がったクロスを上手く流し込まれて失点。
あからさまに盛り下がるカンプ・ノウ。
先程までの盛り上がりがうそのように静まり返っていました。

この時の参加者の顔が見られなかったのが残念です(バルセロナの観戦チケットは高額な上に席がバラバラになってしまった)。

ですが、流石バルサ。
ここから反撃を見せて前半だけで2点を返し、逆転。
後半にはメッシのハットトリック+1点とシャビのだめ押しで5-1の快勝。

3度目の逆転勝利。これは今回の研修参加者のためにバルセロナが用意した、演出ではないのかと疑ってしまうほど見事なものでした。

素晴らしい試合を見たからか、参加者の顔には笑みが。
会場の雰囲気に酔っているかのような称賛の声。
「研修に来た甲斐があった!」と思わせる一番の要素なのではないでしょうか?

中々出来ない体験だからこそ、来る価値がある。
家でインターネットやテレビで試合を見るのとでは段違いです!
間違いないです!それだけは断言しましょう。

しかし、浮かない顔をしているものも一人いました。
私です。実は大のバレンシアファンの私にとってはきわめて残念であったのです。
一人落ち込んだ私の姿は参加者にどのように映ったのだろうか。
興味深い所だ。とほほ。

さて、これが1日の研修の流れ。
だいたい、ご理解いただけただろうか。
あとは朝のミーティングやインタビューなどがあるのだが、それ以外にもスペイン料理を楽しんだり、観光をしたりと旅行気分で楽しめるイベントも用意されている。

私はこの研修に来てみて、本当に素晴らしいと思ったことがいくつもある。
これは上辺だけで言っているわけではなく、実際に体験して納得したから言える。

海外研修といえば聞こえはいいが、僕らが泊まった所は一泊20€(2000円)のユースホステル。8人部屋で他人も一緒という空間で何日も過ごしたのだ。
ホテルの値段の良し悪しを言いたいのではない。
研修参加者それぞれが、寝食を共にし、行動を共にし、意見をぶつけて議論をすることで全員が物事を共有していることに注目してほしい。

実際に、参加者の話を聞いて、生活をしていくうちにその人の人間性やくせ、特徴なども目に付いてくるし、知りたくない部分も見えてしまう。
でも、そういう機会って今の日本にどれだけあるでしょうか?
私が知らないだけかもしれないけれど、今まで出会ったことはなかった。
いや、あることにはある。が、年齢を超えて、国境を越えて、人種を超えて共有出来る研修はないだろう。

その点でも差別化され生き残っているこの研修を私は非常に評価している。
この様な上からの物言いになってしまっていることは申し訳ない限りだが、満足したということは事実として残っている。

コーディネーターの腕の良さも客観的にみても主観的に見ても感じられた。
例えば、自発的な行動を促す際の言葉づかいであったり、理由を突き詰めて聞いてくることであったり。

私自身が変わったと感じる部分があったし、参加者たちもそれぞれで何かを掴んでいるだろうと推察します。その辺りの話はまた次の回でお話させて頂きますのでお楽しみに。


さて、いかがでしょうか?
この研修を理解していただくために3トピックスで記事を書かせていただきます。今回は研修の内容を大まかに説明した上で自分の感じたことを入れてみました。
私の文章で一人でも多くの人がこの研修に興味を持っていただければと思います。

それではまた後日お会いしましょう。