今回ひッさびさに送る時代劇列伝は

藤田まこと最期の必殺出演作にて10数年ぶりの奇跡の復活となった

「必殺仕事人2009」

前作となる「必殺仕事人2007」が好評の視聴率を記録して

まさしく満を持しての必殺シリーズ復活ではあったのだが。


このシリーズ、確かに女性にはウケがいい。

なにせ主演の仕事師達を演じるのが

ジャニーズアイドルたちだからである。


南町奉行所定町廻り同心、といえばわれ等が中村主水の肩書きではあるが

このたび北町奉行所より転属してきたのがヒガシこと東山紀之演じる渡辺小五郎。

主水に輪をかけてのボンクラ同心で暇さえあれば仕事を休んで芝居見物という

ダメ同心。

しかしその裏の顔は庶民の晴らせぬ恨みを晴らし、法で裁けぬ悪を斬る

闇の刺客「仕事人」


そんな彼と仕事を組むのは

仕事の斡旋と下調べ、見届け役も時としてやる三味線の」師匠「花御殿のお菊」

演じるのは90年代後半のトレンディドラマで清純なヒロイン役を多く演じた和久井映見。


そして口は悪いが根は優しい享楽派で美食家。元抜け忍の経師屋の涼次。

演じるのはTOKIOのドラマーにして「ケンジとヤスコ」「サイコメトラーEIji」等日テレ土曜9時のジャニーズドラマを支えてる一人松岡昌宏。


そして心の優しい性格ゆえに仕事人稼業のなかで苦悩する

「からくり屋の源太」

演じるのはジャニーズで異彩を放つアイドルグループ関ジャニ∞の

大蔵忠義。


そしてしんがりはもちろん

定年間近となった書庫係。奥山真陰流の使い手といえばそう、

われらがミスター必殺「中村主水」

演じるのは説明要らずのこの方。藤田まこと。


殺し業も

前作2007では筆に仕込んだ猛毒(口に入れただけで顔が変色し時には燃えてしまうほどの超猛毒)

だった涼次の業も笛にしこんだ長針でゆっくりと肩口から突き刺して心臓を狙う業に変わり

その際のレントゲン映像もなかなかであった。

源太も竹筒に仕込んだひも付きのからくり人形の蛇をのど元に投げて突き刺す業が

蛇を巻きつけて絞殺する業に変更になった。


内容もかなりコメディの部分は抑えられ

現代社会への皮肉をこめたハードなドラマ展開だった。

取り上げた題材もホストクラブに始まり

いじめ、高齢化、ゴミ屋敷、汚染米、ストーカー、無差別殺人、

モンスターペアレンツと今も残る問題を数々取り上げていた。

特にこれはと取り上げるなら

ホストクラブを取り上げた1話「一刀両断」では

ゲスト悪役の中村俊介演じる直助が冒頭で娘を殺してその死体が流れついた川べりに

最後己が小五郎に斬られて死骸となって流れ着くという因縁めいた結末の演出がなかなか素晴らしかった。

冒頭で殺される娘役に過激な演出で有名な劇団「毛皮族」の看板女優町田マリーを、

ヒーロー番組で知名度の高かった荒木弘文を悪役に起用したりと

キャスティングもなかなか面白かった。

6話の「夫殺し」は仲睦まじい夫婦がお互いを愛すあまりに道を踏み外し破滅していくという

仕掛人「地獄花」以降必殺のお家芸的エピソートの変則パターンで

夫が病弱の妻の薬の為に悪事に加担する。

見るに見かねた妻が依頼人となって夫殺しを小五郎に頼むという

あまりに悲しい物語だ。いつもはいきがってる小五郎もこのときばかりは

文字通り泣いて馬蜀を斬ったやりきれない結末が印象的だ

オイルマネーによる原油の高騰を必殺流に皮肉った7話の「金が仇」

モンスターペアレンツにより死に追いやられる学問所の若き教育者の悲劇を描いた

9話の「怪物親」

そして前半のヤマ場となる10話の無差別殺人犯の旗本殺し「鬼の末路」

独得のぬぼーっとした風貌で笑いを誘う個性派俳優荒川良々の怪演が実にすばらしい。

いつもはコミカルな役の多い彼がここで演じるのは

無役ながら名家の出自、そして母の過剰な愛情などの重圧に堪えきれず

街中で黒頭巾をかぶり罪無き人を凶刃の餌食にしてしまう儀助。

そのころ源太は殺しの稼業を続ける事に激しい罪悪感を持つようになり

悩み苦しんでいた。そんな彼を冷たく突き放す小五郎。


そんな中、儀平にとって

唯一の心のよりどころであった純真無垢な使用人・喜平。

皮肉なことに事情を知った母や側用人の偽装工作の犠牲となり殺されてしまう。

鬱屈していた感情が爆発して再び強行に走ってしまう

仕事人たちは体裁を考えた母親の依頼を受けるが

結局殺しの現場を目撃した母親も始末せねばならない結果になる。

目撃者を消すという

それまでお題目として唱えられていた建前を仕事師が実行したのはこの回が初めてで

(過去にもあるにはあったが関係者が自ら死を選び仕事師達にわざと手向かいするなどで

あくまでも変則的な例だったが

全く殺し屋の正体を知らなかった人間が殺されたのはこの回が始めて)

かなりショッキングな結末だった。


そして白眉ともいえる10話「仕事人、死す」

この回では前回、迷いの中で仕事を遂行した結果

標的を完全に殺せずに窮地に立たされるラストから始まる。

なんとか窮地を脱したが

その後、足を洗わせようとするお菊に主水が言うセリフが胸を刺す。

「人は鬼になれる。でも鬼は人には戻れねえんだ・・・・」

そんな苦悩する源太の前に現れたお富は自らを母と名乗り世話を焼くが

どこか危険な香りのする女だった。

その正体は近江の女狐と異名を持つ詐欺師で

源太を利用してかつて己が不始末で追い出された油問屋をのっとろうと

源太を利用しようとしていたのだ。

源太を利用できないとお富は他の仲間と油問屋に押し込みを仕掛け皆殺しにしてしまう。


お富一味は仕事の的になるが源太はお富への情を捨てきれずに

自首を勧めるが隙を突かれて刺されてしまう。

これからもお人よしをだまし、殺し続けて悪事を重ねると毒づくお富を前に

ついに源太は鬼となり桜の木にからくり蛇で吊るし上げ仕置きするが

同時に源太も息絶えた。


お富を演じたのは浅野ゆう子。近年「大奥」などで演じた中老・滝山よろしく

存在感たっぷりの悪女を怪演した。


若き仕事人の壮絶な最後は

かつて「新・仕事人」で

死ぬ予定だった名キャラクター・飾り職人の秀を

三田村邦彦ファンの嘆願書に負けてポリシーを曲げてしまった

製作スタッフのリベンジではないかと思ってしまうほど悲壮感漂う秀作だった。


前半だけでも実はよくよく考えれば

かなり秀逸なエピソードに恵まれているのだ。

にもかかわらず

なぜにこの作品は評価が低いのだろうか?


その原因は渡辺小五郎をはじめとするキャラクターの甘さにある。

だいたい

婿養子でありながら

上げ膳据え膳の過保護で

嫁にも姑にもいじめられず

毎日お重の弁当をもつ

そんな中年同心に誰が共感を持つものか。

上司にどやされ家族にいびられ

手下にも愛想をつかされ

そんなもし自分なら生きてていいのか?と

考えてしまうほど辛い境遇の男が

闇の世界で一目おかれる殺し屋だからこそ

世のサラリーマンたちに夢を与えられるのだ。

東山が二枚目を捨てきれずにどこかしがみついてる感じが

イヤミでたまらない。

そんな男が次世代の八丁堀になれるわけがない。

ましてや他の仲間に異常なほど冷酷で

クールでありながらどこか情を感じられる主水と比べると

「融通の利かないガキがいきがってる」ようにしか見えないのだ。

姑のこう役の野際陽子は芸達者だし嫁のふく役の中越典子も

決して悪い女優ではない。

今からでもせんりつのように変わることはできるはずだ。

むしろ若い中越のほうがより婿の見方はしたいけど姑に逆らえないもどかしさを細かく演技

できるのではないだろうか?

もうひとつ言うなら涼次の家に居候するスペシャルで命を落とした玉櫛の妹・如月の存在が

まったくもって中途半端。

いっそ仲間に加えてかつてのジュディオングのようにしたほうがずっとよかった。

谷村美月という実力派を起用しながらまったく残念なキャラになって

あげくはもてあまして前々回の2010で旅出させるというこれまた半端な退場になってしまった。


最近放映された2012ではやっと裏のメンバーの中途半端ないがみ合いもなくなり

多少ではあるが人間関係がかつての「仕置人」とまではいかないが近くなった気がするのが

救いだったりする。


この作品は10話で終わるはずが

ジャニヲタの働きで視聴率が上がり

1クール延長になるのだ。(つづく)