昨日(18日)午後、江東区のスカパー!東京メディアセンターで、

サムライTVの人気番組『Versus』の収録が行なわれた。


今回の対戦は豪華にして、かなりデンジャラス!?

天龍源一郎vs鈴木みのる。


2004年当時、新日本マットにおいて

高山善廣、佐々木健介とともに”外敵四天王”を結成し、

新日本のリングを蹂躙した両雄である。


今回の再会対談は、来たる11月10日、後楽園ホールで開催される

『天龍源一郎35周年興行』のメインイベントを睨んでの前哨戦(!?)となる。


周知の通り、当日のメインカードは豪華極まりない。

天龍源一郎&鈴木みのる&諏訪魔vs佐々木健介&小島聡&太陽ケア。

なんと歴代の三冠ヘビー級王者たちが6人、一堂に会するわけだ。


この危険な対談の構成と進行を務めたのが私。

もう、とにかく対談前の打ち合わせの段階から、本当におもしろかった。


『Versus』の場合、本番収録での緊張感を出すために、

事前の打ち合わせは別個に行なう。


最初に、天龍サイドの控室で台本をもとに打ち合わせに入った。

もう、楽屋から天龍節は全開で絶好調。


「鈴木みのるって男は、あんな態度をとってるけど、いい男なんだよ!

人間って、いいやつなのか、腹黒いのか、顔に出るんだよね。

彼は新宿FACEで、チャリティー興行とかやって、売り上げを寄附したでしょ?

ああいうのはね、自分の子供に親として、そして人間としての

手本を見せたいっていう気持ちがあるからだと思うよ」


「天龍さん、性格の悪い男を褒めますねえ!

この際、どうですか?

今日は鈴木みのるを褒め殺しっていう作戦でいくのは?

そのときの鈴木の反応が楽しみですよ!」


「いやあ、あいつは本当に気持ちがいいんだ。

今回のオファーに関しても、彼だけが何一つ条件を付けない。

普通はこのメンツだから、なんらかの条件が付いて当たり前でしょ?

でも、彼は『出させてもらいます、ギャラもお任せします』って、それだけ」


「天龍さん、やっぱり褒め殺しでいきましょう(笑)」


「まあ、彼のキャラクターを壊さない程度にね(笑)」


実は、私自身、迷っているテーマがあった。

2004年の年末、『週刊ゴング』の企画で

天龍、健介、鈴木の外敵座談会を行なっている。


当時、高山は復帰へ向けてリハビリ中(※同年8月、脳梗塞で倒れた)だったので、

メンバーには入らなかった。

このとき、泥酔した鈴木と天龍が口論となり、大喧嘩をしたのだ。

場所は、世田谷区桜新町にあった天龍のお店『鮨處 しま田』。


この秘話は、もちろん当時のゴングスタッフと一部の関係者しか知らない。

さすがに、この話題はNGかなあと思いつつも、思いきって天龍に振ってみた。


「あ、そんなこともあったよねえ(笑)。

別に鈴木選手がいいなら、オレは話してもいいよ!」


反対に、そのときのシーンを思い出したのか爆笑する天龍。

それにしても、時間というのは魔術師のごとく人の感情まで変えてしまう。

酒の席とはいえ本気で喧嘩したはずなのに、今となっては笑い話なのだから。


天龍との打ち合わせは、本番さながらに盛り上がってしまった。

30分も話しこんで、別の控室で待機している鈴木を随分と待たせてしまった。


今度は、鈴木の控室へ。

すでに鈴木は、私の作成したアバウトな台本に目を通し終えていた。

こちらは、5分で終了。


「天龍さん、褒め殺しで来るかもしれないよ!」と一応告げておくと、

「いいよ、オレはなんでも対処するからさ」とニヤリ。


さあ、いよいよ本番の収録へ。


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先にスタジオ入りしていた鈴木を見て、

「しかし、これほど金網の似合う男もいないな」と

先制打を浴びせる天龍。


バックのセットとして、大きなケージが用意されていたのだ。


次に、ピンマイクを装着してマイクテストを行なう。

天龍の声から拾ってみる。


「えー、本日は11月18日、道路が混んでいてマイッタねえ」


すかさずマイクテストで鈴木が突っ込む。


「本日は10月18日です! 天龍さん、11月18日だったら、

これは記念興行の反省会になっちゃいますよ(笑)」


「そうか! 終わってるのか(笑)。

最近、昨日のことも忘れちゃうんだよなあ」


なぜかマイクテストの段階で、デンジャラスどころか、少しばかり漫才の様相を呈してきた。

私も、周囲のスタッフも、取材に来たマスコミ陣も大爆笑。


対談は2人の出会い、初遭遇からスタートして、

SWSと藤原組が提携していた時代(1991年)の話題へ。


もちろん、この当時からSWSの大将であった天龍と

血気盛んな鈴木は対立していた。


両団体の親睦会の席で、天龍が勧める酒を

「練習がありますから」と拒絶した鈴木。


「オレの勧める酒と練習とどっちが大事なんだ?」


「練習です!」


こんなエピソードを振り返りながら、両選手は当時の心境を正直に告白する。


「オレも提携には納得できなかったけど、せっかくだから酒でも一緒に飲んで、

少しでもコミュニケ―ションをとれたらなあと思っていた」


「意地張ってたんですね。一言でいえば、オレがまだガキだったんです」


そして、ジョン・テンタ戦で北尾光司(光覇)が問題発言をした、

あの4・1神戸ワールド記念ホール大会の話題にも触れた。


周知の通り、同日もう一つの事件が起こっている。

鈴木みのるvsアポロ菅原はまったく噛み合うことのない

不可思議な試合となった。


「オレがやりたいのは、こんなプロレスじゃない!

なんだ、こんなとこ(SWS)」


この発言に激怒したのが天龍。


「オレが気に入らないなら天龍が気に入らないと言え!

だけどSWSって言うんじゃねえ。

こんなオレたちのためにも寝ずにチケットを売ってくれる人がいるんだから」


後日、天龍から呼び出された鈴木は、そう言われた。

このエピソードを鈴木が自ら話し始めると、天龍はニヤリ。


「そんなこと言ったっけ? いいこと言うねえ、オレって」


「あのときの天龍さんの言葉と気持ちは、

パンクラスを旗揚げしてから初めて理解できました」


反目し合いながらも、一回り以上の年齢差がありながらも、

両者はぶつかり合うことで、それぞれのプロレス観、生き様を見せてきたのだ。


それから13年という歳月を経て、2人は新日本マットで再会する。

2004年3月、両国国技館でのIWGPタッグ選手権(高山&鈴木vs天龍&中西)を経て、

同年8月の『G1クライマックス』開幕戦(8・7相模原)で初のシングル対決。


鈴木のサブミッション地獄に苦悶しながらも、

チョップ、グ―パンチの連打から必殺の”53歳”で天龍が勝利を収めている。


「やりにくかったね」


そのときの印象を、天龍は正直に認めている。

           

ただし、外敵同士ということで、直接対決がない限り、

天龍、鈴木、高山、健介の4選手は一緒の控室に入ることが多かった。

そこで、天龍からいろいろな話を聞いたことによって、

鈴木独自のプロレス観、スタイルができあがっていったという。


「自分が何をしたいかではなくて、お客が何を見たいかが大切だろ」


この一言を参考に、鈴木は技を減らす方向に自分のスタイルをシフトチェンジした。


そして、例の座談会における大喧嘩の話へ。

ただし、実はこの席で聞いた天龍の一言こそ、

今の鈴木みのるの生き方を示しているのだ。


「生き残る、生き延びるじゃないんだ。オレたちは生き抜いていかなきゃいけない!」


また、泥酔した鈴木が唯一覚えていた自分の言葉がある。


「オレは猪木さんともシングルでやらせてもらった、天龍さんとも試合ができた。

だからこそ、ジャンボ鶴田さんとも試合がしたかった」


当時、この発言を聞いた瞬間、天龍の目には涙が浮かんだ。

ところが、どこでどう間違えたのか、突然両者が口論となったのだ。

鈴木はまったく覚えていないというが、天龍は覚えていた。


「いや、いま話していて、あれはゴングの企画だったのかって、

そこには初めて気付いたんだよね。

なんで自分の店に、健介がいて鈴木がいて一緒に飲んでいたのか、

そこが分からなくて…そうか、ゴングの取材だったんだって(笑)」


「自分が覚えているのは最初のほうだけなんですよ。

だから、それが昔の酒を断った話へとつながっていくんで…。

『あのとき天龍さんの酒を断ったけど、今日はとことんお付き合いします』ってね。

暴れたのはもうぜんぜん覚えてないです、スイマセン(苦笑)」


「なんか口論になってさ、鈴木選手が殴ってきたんだよ。

それで彼が指輪をしてたから、オレのこの辺から血が出てね。

それが分かったから、この野郎!って。

でも、そのとき健介は何をしてたと思う?

北斗(晶)に電話してたんだよ(笑)。

『ああ、チャコちゃん。いま天龍さんと鈴木が喧嘩になって凄いんだよ。

あっ、水ぶっかけた!』って、実況中継してるの。

オレはあっちにバカ負けしたよ(笑)」


「まったく覚えておりません…」


「結局さあ、ウチの女房がやってきて、『店を壊す気なの!? みんな出て行って!』って。

もう、あの一喝でオレも店から追い出されたんだよね」


私からすれば、永遠にお蔵入りと思われていた”事件”を

楽しそうに語る天龍には脱帽!

ミスター・プロレスの度量の広さには感服するしかない。


最後に、肝心の11・10メインの話題へ。


「35周年だから、天龍さんには35分闘ってもらう」


鈴木がそう振ると、天龍も呼応する。


「オレが思うに、パートナーだし味方なんだけど、

鈴木みのるは絶対オレに何か仕掛けてくると思うんだよ」


約75分の対談終了後、取材陣に囲まれた天龍は、こう言った。


「オレの中では、このメンバーを集めただけでも成功だと思ってるよ。

だけどね、オレ以外の5人のメンバーの必殺技を食ってみたい気もするんだよ。

諏訪魔のラストライド、小島のハンセン直伝のラリアット、鈴木選手の逆落とし、

ケアのTKO、健介のノ―ザンライト(ボム)……

これを全部食って、それでも立ち上がれたらオレは自分で感動するだろうね」


この一言に、天龍源一郎の生き抜く姿勢を見る思い。

11・10後楽園ホール大会は、天龍という稀代の名レスラーにとっての

集大成でもあり、大きな節目となることだろう。



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            ◎サムライTV『Versus♯54 天龍源一郎vs鈴木みのる』

            11月9日(水)、23:00~24:00放送、リピートあり。