三重テレビの男性アナ逮捕=住居侵入容疑―三重県警
アパートの敷地内に侵入したとして、三重県警鈴鹿署は8日、住居侵入容疑で三重テレビ放送のアナウンサ.......... ≪続きを読む≫

住居侵入罪は、刑法第130条前段に規定されている犯罪で、法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。なお、後段は不退去罪と住居侵入罪とは別の犯罪類型ですので、司法試験等では必ず「前段」「後段」まで指摘するようにしましょう。

 

さて、この住居侵入罪は、個人の私的空間の平穏・プライバシーを守るための規定です(古典的な住居権説ではなく、平穏説との折衷的な考えが有力でしょう)。住居侵入罪それ自体はプライバシーという言葉が生まれる以前から存在していたようですが、プライバシーの重要性が意識される中、法定刑は上記のままです。

 

自分の家に知らない人間が入り込むというのは、想像以上の恐怖です。少なくとも立法当初や昭和時代と同じ法定刑というのは、違和感はあります。

 

また、住居侵入罪は他の犯罪と牽連関係にあります。たとえば、空き巣は住居侵入罪と窃盗罪の牽連犯であり、より重い窃盗罪の刑罰で処罰されます(刑法第54条第1項後段)。窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですので、その範囲内で処罰されることになります。併合罪のように、13年の懲役が科されることはありません。

 

その上で、他人の住居に侵入して家人を殴るなど、住居侵入罪と暴行罪の事例が問題となります。両者は牽連犯ですが、「重い刑」ってどちらでしょうか。暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です(刑法第208条)が、懲役と罰金では、懲役のほうが重いので、懲役を比較すると住居侵入罪が重くなります。そうなると、住居侵入罪の罪で刑罰を科すと、10万円しか罰金を科すことができません。住居侵入・暴行で罰金刑を罰金した場合(特に略式にする場合)、30万円まで罰金を科すことができなくなるわけです。

 

なお、簡裁レベルで30万円の罰金を認めた裁判例もあるようですが、法解釈として問題があります。

 

そうなると、プライバシーの重要性との関係や、上記の不都合性の観点から、懲役はともかく住居侵入罪の罰金は大幅に引き上げるべきかと考えます。