星に手を伸ばす。 | 空と星が終わるまで。

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私の生まれた故郷は、一つの町に小学・中学・高校とそれぞれ一つずつしかない小さな町だった。
小学校で出会った同級生はほぼ全員同じ中学校へ行き、大体の人が同じ高校へ行く。

私にとって、そんな閉ざされた場所が私の世界の全てで、その中で孤立した私は、12年間まさに絶望的で地獄の様な日々だった。

そんな周りは敵しかいない世界で、私の心はすっかり荒んでしまい、自分から人と関わろうとか、仲良くなりたい等という感情は死んでしまっていた。

死んだと思っていた。あの時までは。


短大で私の手を引いてくれた友人Kと同じサークルに入り、2年目の祭りでの模擬店で得た収入で、皆で打ち上げをして、二次会でカラオケに行こうという事になり、免許を持っているサークルメンバーの車に、私と友人Kは乗せてもらう事になった。

後部座席にはメンバーでは無い運転者の友人が1人乗っていて、私はその彼女の隣に座った。

彼女はイヤホンをして音楽を聴いていた。車の動く音や周りの話し声の雑音の中、私は耳を疑った。
彼女のイヤホンから漏れる音楽が、どうしても聞き慣れた音の様な気がしてならなかった。

周りの雑音をシャットアウトして、私は身動き一つ取れずその音に集中した。

このメロディーは…。

この声は……。


キリトさん…?

間違いない!この愛しい声はキリトさんだ!!
この歌、『青い空の下…』だ!!

―彼女と話がしたい!―

初めて自分から本気で話しかけたいと思った。

心臓の音が外に聞こえるんじゃないかって位バクバクいってるのが聞こえて、緊張で手に変な汗をかいてるのに、指先が冷たくなっていた。

それでもいきなり「PIERROTが好きなの?」と話しかける勇気なんてなくて、私は「早くPIERROT歌いたい!キリトさん歌いたい!」と彼女に聞こえる様に不自然に大きい声で私の隣にいた友達に言ったのだ。

普通に考えれば馬鹿だし、卑怯だと自分でもそう思う。でも、それがあの頃の自分に出せる精一杯の勇気だった。

そして私の言葉が届いたのか、彼女は目を見開いてイヤホンを外し、「PIERROTが好きなん?」と話しかけてきてくれたのだった。

そうして仲良くなったもの、中々話す機会が無かったのだが、12月のツアー札幌に一緒に行き、バスの中で色々な事を語り合った。今までPIERROTの話ができる人がいなかったから、本当に楽しくて幸せな時間だった。