まだまだ不動産投資熱は冷めそうにないですね✨今後金利の上昇はほぼ確実だとしても、家賃も不動産価格もまだ上昇するならば、一定程度不動産投資をする人は減らないかもしれないですね✨


月曜経済観測】司法書士から見た景気

不動産投資熱 冷めず

日本経済新聞 朝刊 総合・経済(3ページ)

 「市民の身近な法律家」である司法書士は不動産登記や商業登記だけでなく、債務整理や相続関連など幅広い業務を担う。司法書士の仕事に日本経済はどう映し出されているのか。大手司法書士法人コスモの山口里美代表社員に聞いた。

日本人はリノベ

 ――物価が上がり、金利にも動きが出てきました。司法書士が担う登記の仕事に影響はありますか。

 「マンション購入者らの住宅ローンは堅調です。年度末の3月は昨年までと同様に多くの依頼がありました。中国人がローンを組むケースが多く、東京、大阪に加え福岡も良い。現状はまだ物件の値上がり期待が強く、外国人の不動産投資熱は簡単には冷めません。ただ最近の依頼には『今後は金利が上がるかもしれないから、今のうちに』という心理もうかがえます」

 ――日本人の動きは。

 「新築物件の値段が上がっているのでなかなか手が届きにくい。一方、中古マンションのリノベーション物件はよく売れています」

 ――4月から相続登記の申請が義務化。不動産を登記せずに放置すると10万円の過料となります。

 「義務化をきっかけに相続登記の依頼は増えています。3年間の猶予期間がありますが、先代の相続登記が放置されていると戸籍を取るだけで時間がかかるので動き出しています」

 「相続税には10カ月の申告期限がありますが、登記は期限が決まっていなかったので先送りになり、誰のものかが確定していない所有者不明の土地が増える原因になりました。相続する人の9割には相続税がかからないし、あえて登記費用も出したくないと放置してしまったのでしょう」

身近になる遺言

 ――司法書士の仕事には遺言関連もあります。

 「新型コロナウイルス禍を経て遺言を書く人が非常に増えました。当事務所ではコロナ前の1.3倍くらいになっています。急に命を失う状況を目の当たりにして、遺言を残したい人が増えたのでしょう」

 「自分で書いた遺言を法務局で預かってくれる制度が20年に始まったことも影響しています。偽造や書き換えが起きないよう、遺言をデータ化して150年間保管してくれます」

 ――遺言を書くのはお金持ちが多いのですか。

 「ふつうの人が多いです。相続は財産があまりない人のほうがもめるケースが多い。財産が多い人は顧問の税理士をつけたりして、ちゃんと対策しているケースが多いからです」

 「終活はコロナをきっかけに浸透したと思います。エンディングノートという言葉も当たり前に使われています。日本人の死生観が少し変化してきた。遺言は海外のほうがきっちり書く人が多いが、日本でも身近になってきたと感じます」

 ――単身で生活する高齢者を支えるサービスへの需要が高まりそうです。

 「私たちも1人で暮らす『おひとりさま』向けに新しいサービスを出しています。例えば身元保証。高齢者施設などに入居するには身元引受人が必要なので、家族のかわりにサポートします。施設利用料の保証や死亡時のご遺体の引き取りなどを行う。近年の利用は倍々で増えています」

 「葬儀や賃貸住宅の解約といった死後の事務処理を委任する契約や、認知症に備えて元気なうちに信頼できる人を後見人として予約しておく任意後見制度を利用する人も増えました。自分がどう最期を迎えるか、お金を払って依頼する時代になったと感じます」

 ――高齢化で司法書士の仕事も変わりつつあるということでしょうか。

 「住宅ローンを組む若い世代は減り、高齢者は今後20年くらい増えます。住宅ローン、債務整理から高齢者向けの仕事へと、どんどん移っていくでしょう」

(聞き手は編集委員 柳瀬和央)