さあ、やっと自分のライヴのレポが書けるぞ。
いつもならサクサク書き出すはずなのに、予想以上に「 Young Forever」に反響があったもんだから、浪花のビート芸能人の悲しい性(さが)と言うか、それ以上の記事を書こうとして、勝手に自分にプレッシャーをかけてリキんでいる自分がいたりする。

いかんいかん、いつもの銀次でいこう。いつもの。
平常心を取り戻して、「平常銀」で書いて行くよ。
だからいつものように気軽に読んでくださいね。さぁはじまりはじまり...。


6月18日は、ほんとにひさしぶりのワンマン・ライヴだった。
一番近い最後のワンマンは、昨年9月16日の横浜「サムズアップ」だったから、約9ヶ月ぶりになる。
そのあいだ黒沢君とのuncle-jamの活動があったから、ライヴ慣れはしていたものの、やはりブランクがあくと、理由もなく不安になるものだ。
それがなぜか今回は不思議と、早くライヴがしたいなというワクワク感が勝っていて、こんな気持ちは、こんなに長くやっていても初めてのことだった。

プロデュースに専念していた10年以上の間、まったくライヴをやらなかった僕が、ソロ・デビュー30周年にあたる2007年に、またひさびさにライヴをやろうと思い立ってから4年。ようやく自分で納得のいくライヴができるようになってきた。

おもえば見切り発車だった2007年のツアーは、今思えば恥ずかしくなるくらいボロボだったのではないかと思う。それでもゆったりカッコをつけていたくなかった。たとえ何十年のキャリアや知識があっても、ライヴの現場では何の役にも立たない。ライヴ・モードの再生が急務。ほんとにゼロからの出発のつもりで、腹をくくって始めた。誰にもよりかからず自力で行きたかった。

それでも、今までずっと支えてくださったたファンの方達の温かい応援があったから、やっとここまでこれたのだと思う。おかげで、やっと思い通りに、いやまだまだだが、少しでも理想に近い形で、みなさんに僕の音楽をお届けできるようになってきた。そのささやかな自信が、早くライヴがしたいなというワクワク感をあおっているのだと思う。

そんなことを感じながら、リハーサルも終わり、今日のスペシャル・ドリンクの打ち合わせをお店のスタッフとしているとさらにムードが盛り上がってきた。そのカクテルの名前は「Flowers In The Rain」。雨の季節だからね。
そしていよいよライヴの時間になった。

佐野君のライヴと日時が重なったので集客が心配だったが、ありがたいことに満杯に。ステージまで歩いて行くと、会場いっぱいに集まってくださったお客さんから拍手が起きる。うれしいじゃないか。

スタンドからギターをとってチューニングを始め、客席に目をやると、な、なんと、「銀次親衛隊」の精鋭、漫画家/イラストレーターの本秀康さんと、編集者の治朗丸さんのお二人が、僕のど真ん前に陣取っておられるではないか。一瞬互いに「はにかみ」の空気が流れたが、こんなありがたいことはない。メールでいっぱいリクエトをくれたお二人のために、はりきっていきますよ。

それではもうセットリストを発表してしまおう。まず第1部のセットリストだ。


第1部

00) Take It Easy (イーグルス・カバー、1番のみ)
01) ハートブレイク片手にJust A Little Love (メドレー)
02) トワイライト・シンフォニー
03) 風になれるなら
04) SUGAR BOY BLUES
05) 風のプール
06) Flowers In The Rain
07) Without You ( with 石田ショーキチ : バッドフィンガーのカバー)
08) Mizuiro β(ミズイロベータ) (石田ショーキチ)
09) 木綿のハンカチーフ (石田ショーキチ)


1曲目は「ハートブレイク片手にダンスに夢中」と「Just A Little Love」の2曲のメドレーから始めるはずだった。ところがギターを抱えチューニングしているうち、急に、もちゃえもんさんからのリクエスト、イーグルスの「Take It Easy」を一節歌うよと約束したことを思い出した。
一節太郎さんまでネタにしといて歌わないわけにはいかない。
どこで歌おうか? なんて思ってたら、すぐにでも歌いたくなり、いきなり何の前置きも曲紹介もなしに、オープニングで歌い出してしまった。





自分でも予想してなかった展開。しかもこれが、この日の「気まぐれシェフにおまかせメニュー」のほんの氷山の一角だったとは、God's Soy Soup、神のみぞしる だった。

自分の歌の詞はおぼろげなくせに、「Take It Easy」の歌詞はよく覚えている。
この曲は1973年、ごまのはえがココナツ・バンクになったとき、僕がリード・ヴォーカルをとることになり、プロデューサーの大瀧さんから何か1曲課題曲を作って練習しなよと言われて選んだ曲。すっかり体に焼き付いている曲なのだ。

バンドはいないがまた昔のようなポップンロール・ショーのような気分をスタートから出したかった。
それで、「ハートブレイク片手にJust A Little Love」という嗜好になったのだ。
そのまま「トワイライト・シンフォニー」へと突入。往年の銀次ワールドに近づけたかな。

これまでのアコギ・ツアーにはなかったアクティヴな流れだ。
バンドはいなくても、お客さんのクラッピングが僕のドラムス。アコギ+クラップでも、82年のデビュー当時のノリノリの雰囲気が少しでも彷彿とすれば... 。今回はビートの再生がテーマなのだ。





2009年、I Stand Aloneツアーを始めたときは、アコギをいかにピアノのような伴奏楽器として演奏できるかがテーマだった。そこから2年、何となくシンガーソングライターとしての演奏形態は見えてきた。
その後uncel-jamを始めたことで、僕の中に戻ってきたビート感を、今回はあらたに、それに加えたかった。
しっとり聞かせるものから、体温の高いビートナンバーまでをアコギ 1本で表現して、もっと心の振れ幅が大きいライブにしたかったのだ。

やっぱり黒沢君とuncle-jamをやり始めてよかった。自分の中にあるウキウキ性を再発見できたからね。

以前ならば「風になれるなら」のあとは「こぬか雨」と決まっていたが、あえて「SUGAR BOY BLUES」で、ウキウキ度を高めようと思った。

ここまでで一息の感じ。ここで少しアコギツアーをきっかけに、その魅力を再発見した曲があるという話しをして、「風のプール」を演奏した。つくづくこの曲を歌うたびに、僕もやっぱりナイアガラなんだなと思う。





今までだと「Flowers In the Rain」はだいたいアンコールで、しっとりとしたヴァージョンで演ることが多いのだが、TERRAのほうで同名のスペシャル・ドリンクをこの日のために創作してくださるというので、この日はこの位置に。
雨の季節でもあるからそう名付けたカクテルは、梅酒ベースの赤いカクテル。割と早いうちにステージ上に持ってきてもらって、僕が試飲してみなさんにお薦めしたかった。

試飲? 銀ちゃん、お酒止めたんじゃないの? と全国から、みなさんの声が轟々とわき起こるのが届いてくるよ。
もちろん禁酒は続いている。だからちょっと舐める程度のもの。
とはいえ、とても香りと口当たりがよくて、もっと飲みたくなるカクテルだったけれど。

僕は普通の人の人生3、4回分は飲んでいるのでもう満足しています。後の人生は音楽だけに酔っていくから... なんちって。

第2部にはこの赤いお酒と一対になる青いカクテルも供された。こちらはちょっぴり辛い大人の味。
会場のみなさんの投票で「Baby Blue」に名前が決まったような気がする。ゴメン、よく覚えてないんだ。味見のせいかな?
どちらのカクテルも人気だったようでよかった。

アンコールで演るときよりも、軽やかな「Flowers In the Rain」、これもなかなかだったね。
それでもお客さんのシャララの大合唱とぼくの歌との、コール&レスポンスはいつもどおり。
おかげで会場はさらになごんできた。同じ曲でも位置が変るとその役割が変っておもしろい。

さあ会場もあったまったところで、いよいよゲストの石田ショーキチ君の登場である。

       つづく