三都物語もついに三都目、3月8日京都編である。

黒沢君とソワンソング君とは、阪急電車の河原町駅で14時30分の待ち合わせだったが、阪急京都線十三駅から河原町駅までの所要時間を読み誤ってしまって、河原町に着いたのは30分も遅刻した15時。
二人が先にチェックインしていたホテルでなんとか合流して、スマンの涙で許してもらい、いっしょにタクシーで北大路のsole cafeへ向かった。

最終的に今回の京都では、合計3回タクシーを使うことになったが、どのタクシーの運転手さんも気さくなかたばかりで、気軽に話しかけてこられた。観光都市京都という使命感でもあるのだろうか、こちらの言葉で言う「はんなり」とした語り口で話されると、京都にウエルカムされている気分になっていい気分だった。実際は、3人ギターをしょっての乗車だったので、ただ珍しがられただけかも知れないが ...。

河原町から北北西に上がったところにあるSOLE CAFE。今回の僕たちの関西遠征隊の仕切り隊長のソワン君の紹介だ。ママレイドラグの田中拡邦君もここで演ったことがあるらしい。


SOLE CAFE前景
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お店に入ったとたん、ハーブを使ったパスタ料理の香りが。ロンドンのリヴィングストン・スタジオの食堂のにおいを思い出した。とっても家庭的な雰囲気のお店だ。そしておだやかなご夫婦の温かい歓迎の言葉。ここにも京都のもてなしの心を感じた。

お店の入り口を入って左側がステージ、右手が客席。お店の奥に厨房があり、さらにその奥に二階への上がり口がある。そこで靴を脱いで昔ながらの木の階段をとんとんとんと上がったところが僕らの楽屋。なんと畳のお部屋である。なんだか友達の家に遊びにきたような気分になった。


      ☆ 『uki-uki☆music cafe』in 京都 ☆

第1部 : sowan song & クロソワン

01) 虫の音
02) 春のダンス
03) 夜の水面
04) intersect(クロソワン)
05) マーブル(クロソワン)
06) 大きな恋のメロディ(クロソワン)
07) 100本目のたばこ
08) 言えなかっただけさ
09) 抱きしめたい


幕開きに、まずはソワンくんが3曲歌った。続けて黒沢君が紹介されて、二人のユニット「クロソワン」で3曲、そしてもう一度ソワン君ひとりで3曲を披露して第1部がいい感じで終了。
そのあいだ僕は、2階の畳のお部屋でひとりでくつろいだ気分で、出番を待っていたのだ。
下の方からソワン君の気持ちのいい声が聞こえてくる。

今までソワン君には何度か会っていたが、こんなにしっかり彼の歌を聴くのは初めてのことだ。
リハのとき、ソワン君がPAの低域がたまっていないか心配していたので、それを客席でチェックしてあげていたら、自然としっかり彼の歌を聞くことになった。
思ったよりなんていうと失礼かもしれないが、ギターもしっかりしているんだね。
のびのある色気のある声が、とにかく人の心を掴んでくる。もっとこの声を生かせる詩や楽曲があったらすごいんだろな、今でもこんなにいいのだから...なんて、いつのまにか頼まれもしないのに、「彼をプロデュースするなら」気取りで聴いてしまっていた。これはもう一種の病気だね、もう。どんなアーティストを聴くときもこのモードがたちあがってしまうのだから ... 。

さすがにこの2日間の睡眠不足からか、階下からちょっと遠い感じに聞こえてくる歌声が心地よくて、ついついソファでうとうと。クロソワンの二人のハモもばっちり、なんて思っていたら、大事なことを思い出した。

いつもならリハーサルが終わると軽くおにぎりを2個ばかし食べることにしている。
しっかり食べ過ぎると横隔膜が圧迫されて声が思うように出なかったり、ゲップが出たりするからね。
かと言って何も食べないと、ライヴの最後まで持たない。
客入れが始まる、ライヴの1時間前のおにぎり2個がちょうどいい量なのである。

ところが今日はうっかりして、それを忘れていた。もうライブが始まっているわけだから、いまさら客席を通ってコンビニにへおにぎりを買いにいくなんてわけにはいかない。
その時点ではまだお腹はへってなかったが、本番中だいじょうぶかなと、ちょっぴりいやな予感が脳裏をかすめた。
朝ご飯はしっかり食べてきたからたぶん大丈夫だろうと思ってやりすごしていたら、思いのほか早々と予感が実現してしまった。1部と2部の休憩時間の途中から、いきなりガクンとお腹が減ってきたのだ。
普通、お腹はだんだん減るものだと思いがちだが、僕の場合はいきなり来るのである。

いよいよuncle-jamの出番寸前になって、お腹がきゅるきゅる言っている。猛烈にお腹が減ってきた。

どうしようか?心は千路に乱れる。黒沢君の「行きましょうか。」の声に覚悟を決め、階段を降り始めるやいなや、さらにお腹がきゅるきゅるなり始め止まらないではないか。
ついに我慢できず降りるなりマスターに、「何かおにぎりとかすぐに食べられる物はありませんかね?」といきなりのおねだりをしてしまった。
なんて人だと思われたのではないか。もうライブが始まるというまさにそのときなのに。
それでもやさしいマスターは、「パンならありますけど」。
空腹で藁をもパンをも掴みたかった僕は「パンでばっちりです」と小声で叫んでいた。

厨房でモグモグとお腹に入れてステージへと目論んでいたら、「今からすぐ焼きますので」.... 。
ぎょえっ、それではまにあわない。気が動転する僕に黒沢くんとソワン君が
「しょうがないから、銀次さん、ステージで食べましょう。」
えらいことになった。
かくして僕は世界で初めて(だと思う)、ライヴのオープニングでパンを食べることとなったのである。


uncle-jam in SOLE CAFE
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あー、なんてかっこわるいことになっちまったんだと反省しながらも、マスターが運んでくださった焼きたてのパンをお客さんの前で頬張ると、これがうまいのなんの。よけいな添加物の入っていない手作りならではの歯ごたえのあるパン。しっかりとしていて噛めば噛むほど味が出て、それでいて中は餅のような食感。思わずステージで我を忘れて「うまい」と言ってしまった。

あまりの空腹感で忘れていたが、よく考えてみると、あそこは京都だった。
「お茶漬けでもあがっていかはったら?」と言われて「それじゃ、いただきます」なんてことを言ったら、なんて不調法なひとだと思われるお国柄だと聞いている。なのに、ライヴ直前にパンが食べたいなどと言ってしまった。後で考えるととんでもない不調法ことを言ってしまったものだ。マスターに嫌われていなければいいのだが ... と頭の片隅で思いながらも、きれいにパンを平らげてしまった銀次であった。

パンのおかげでとりあえずエネルギー充填。待たせたね。uncle-jamの京都公演のはじまりはじまり... 。