なぜON2なのか? RIO先生の熱い思い | サルサのある日常 WeStep編

サルサのある日常 WeStep編

サルサは簡単に始められる、とても楽しく奥深いペアダンスです。
このブログがサルサ(ペアダンス)に関心を持たれたあなたの少しでも参考になれば嬉しいです。

RIO先生から熱いメッセージをいただきましたので、皆様にそのままご紹介させていただきます。

以下RIO先生からのメッセージです。

私がなぜOn2を教えているのか、ポエたまの皆さまに本気でお伝えしてみようと思います。


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ポエたまの皆さまへ:On2クラスへのお誘い

 こんにちは!RIOです。いつもレッスンにご参加くださりありがとうございます。今日は12時から開催しているOn2基礎のクラスへのお誘いをさせていただきたいと思います。

 私はキューバンスタイルからサルサの道に入り、その後On1、次にOn2の順で各スタイルをマスターしてきました。私の原点はクラブで、相手によってリズムの感じ方や表現の仕方が全く異なることに非常に戸惑い、驚いたことにあります。私はキューバンスタイルのクラスでリズムの取り方を徹底的に指導されました。そのときの私はいささかの疑問を感じることもありませんでした。

 しかし、クラブでペルー系の素晴らしい踊り手がそれとはまったく異なる感性で踊っているのを見て、かつその人と私はまったくリズム取りを合わせることができなかったのを知って、衝撃と興味が沸き上がってきました。こんなに統制がとれている踊り方なのにまったくわからない。それがサルサのスタイル名としては認められていないOn3の踊り方だと知るまでにそれから何年もの月日が必要でした。クラシック音楽はじめ日本で「普通に」うける音楽教育の範疇にOn3という概念はありません。これはラティーノだけが有している独特の「スタート」の感覚だろうと思います。

 On1のスタイルは理屈上はキューバンスタイルと同じカウント1がスタート地点です。しかし、キューバンスタイルとLA On1スタイルは相性はいいといえども根底に流れる文化がまったく異なります。具体的にはLA On1というものはロサンゼルスに大量に暮らしているメキシコ人の感性、なかでもジョニー・バスケスさんを筆頭とするバスケス兄弟の美学がもっとも反映された踊り方です。特徴は1と5のタイミングを最大限に輝かせる大胆なスタイリングとスピード感、キレにあります。そしてメキシコ系の人々も先に述べたペルー系の人と同様、On3の感性を多分に有しています。追記として、コロンビア人も明らかに強いOn3の感覚を有しています。LA スタイルはテクニックが高度に完成されていて、決して勢いだけで踊っているわけではないことを私は現地で学びました。それは私のLAスタイルに対する見る目を大きく変えました。

 次に私が戸惑ったのがNY On2スタイルです。実は私のかつてのダンスパートナーはこのスタイルをマスターしていました。しかし自らがニューヨークでダンスを学んでいたことをその人はずっと隠して(!!)いました。その理由は、おそらくプライドの問題だろうと思うのですがあえてそこには踏み込みません。その人は私がOn1でのスタイルを貫いていましたので、基本的には私のタイミングにあわせてくれていました。ところがときどき摩訶不思議なスタートをすることがあって、それが例の「はじめに後ろに下がる」ステップだったのです。これは当初私にはまったく謎でした。リーダーがスタートで後ろに下がるというのは、リードといえないのではないかと感じたものです。とはいえ当時はそのもやもやした感じを言語化することができませんでした。On3に続く、サルサ第二の壁でした。

 当時はyoutubeが発達していませんでしたので、この謎を解き明かすための視覚的ツールが圧倒的に不足していました。自分で体験したことだけを頼りにするのが私の長所であり欠点ですしたがって私は結局ニューヨークにも二度足を運ぶことになりました。そしてOn2とはなんであるかを見て、これはまったく新しい遊びだ!と思ったものです。カウント2を強調する踊り方は実はキューバにもあります。コントラティエンポといって、ソンという伝統的なペアダンスを踊るときに使われるリズム取りです。これはトゥンバオと呼ばれるベースのリズムを非常によく生かす踊り方で、1をためて(空中で姿勢をキープします)、2でバックステップを踏むエレガントなスタイルです。一方でニューヨークのOn2がもっとも重視するのはコンガのリズムです。コンガは1からたたきますがこれは手の付け根をつかった低い目立たない音です。その後もっとも高いスラップ音が2に入ります。ニューヨークOn2はまさにこのたたき方通り、1で踏み始めるもののそれは目立たず、2ではっきりと動きます。「サルサのベーシックステップとは、ある楽器にフィーチャーしてそのリズムを可視化したものなのです」。その考え方でいくと、私が思うにLA On1スタイルが可視化しているのはカンタンテ(ボーカリスト)の息遣いとトランペットなど金管楽器の華やかな音です。

 このように、サルサを踊れるようになるということは音楽がわかるようになるということと同義です。サルサダンスの各スタイルの特徴を理解すると音楽に対する理解が深まるため、サルサ音楽の魅力を再発見することができるのです。そのことがひいては、各民族の音楽性、すなわち人間性を尊重する姿勢につながり、「○○でなくてはならない」という自らの無意識下の精神的縛りを突破する糸口になります。かつての私が1で男が前にでることがリードであるという固定観念に縛られていたこと、On3は気持ち悪くておかしなダンスだと感じていたことは完全に間違いでした。彼らはそう感じている。そのことに正解も間違いもないのです。私はただそれを受け入れればいいだけなのでした。そしてこのような心の在り方が、たとえば親、たとえば兄弟姉妹、たとえば子、たとえば同僚、ときに電車やレストランで隣に腰かけた人に対する「その人はそう感じている。だったらしょうがない」という「生きる構え」によい影響を及ぼしていると実感しています。

 ただ受け入れ楽しむ、ということは言うほど簡単なことではありません。「理解してはじめて楽しめる」というのが私の痛みを伴った実感です。何かよくわからないことを言ったりやったりする人に対して私たちははじめ「排除」の感覚を持ちます。わからないということは端的にいえば「敵」にあたるからです。しかしその不可解な言動の裏にどのようなバックボーンがあるかがわかれば、当初の違和感は一気に共感へと転じます。挨拶もそこそこに毎日定時に帰る同僚に対して、我々は当初穏やかでない気持ちを持つかもしれません。しかし彼・彼女が二人か三人の親族の介護を同時にしているということを知れば、その感情は消し飛ぶことでしょう。私にとって、サルサの各スタイルを学ぶことは「よくわからないものに対して恐れを抱くな」という自らへの教訓に直結しており、そのことが確実に私の人生を豊かに、かつてよりずっと思慮深いものにしています。

 以上が私がサルサのどのスタイルでも皆さまに果敢にチャレンジしていただきたいと願う背景です。

そのベースにたって、私は各スタイルの「そういうことになっている」を紐解き、実際に試してもらって実感してもらうことを大切にしています。皆さんは私と同じかそれ以上に海外に行かれる機会が多いことと思います。いつか見知らぬ人と踊ったあるときに「あのとき先生が言っていたのはこのことだったのか!」と感じてくださることがきっとあると思います。

よくわからないもやもやを言葉に置き換えてお伝えするのが私は得意です。On2のクラスはサルサをこれまでと別の次元で楽しんでいただくのに本当に適したクラスです。当初のメンバーさんの多くは現在パフォーマンスの練習に手一杯ですので、現在新たなチャレンジャーをお待ちしています。Ginさんのリードも素晴らしいものですから、女性はどうぞ楽しんでいかれますように!