60歳代,女性.手拳大の大きな肺がん.
手術をしたのは約3年前.
切除時は,腫瘍径は11-12センチに及び,胸水も出現してきて
いた.組織型は扁平上皮がん.
血痰,39-40℃の発熱,全身衰弱といったギリギリの厳しい
臨床状況での切除へのふみきり.某がんセンター呼吸器外科医
の英断であったと思う.
当方も攻めるなら“手術”と思っていた.
肺の扁平上皮がんの場合,腫瘍が巨大でも,がんは臓側胸膜を
越えず,さらに胸水はがん性胸水ではなく,反応性胸水である
ことも少なくない.
だから,こういう症例は,手術で“攻める”価値がある.
バカの1つ覚えの免疫専門クリニック,あるいは,まともに
治療戦略を練れない怪しげな統合医療や代替医療のクリニック
に行っていれば,間違いなくこの患者さんは,既にこの世には
いない.
手術は無事に成功し,患者さんは元気に退院した.
手術という1つの山は越えた.
次は,術後の経過観察というもう一つの山が待っている.
そうした中,根治術後の再発予防を目的として
免疫療法の1つである
『自家がんワクチン療法』を導入した.
先日,消息調査の為,娘さん(医療関係者)に電話をいれた.
内心,『再発して,すでにお亡くなりになっているかな・・・』
と思っていたところ,嬉しい予想外.
『再発もなく,とても元気です』とのこと.
そして,『自家がんワクチンが効いていると思います』とも.
肺がんが根治術後に再発する場合,75%が3年以内に出て来る.
手術時の病態を考えると,本症例の3年無再発生存という
状況は,5年の予後観察を経てはいないが,完治と見なして
いいのではないかと思っている.
もちろん,この一症例で自家がんワクチンの治療効果として
ことさらに述べることは難しいが,
個人的に嬉しい症例だったので,症例提示としたい.
★φ(-_- 。)・・・
※当院での低用量抗がん剤治療症例を
少しずつ紹介していきたいと思います.
※低容量抗がん剤治療・・・
細かいことをいうと微妙な定義の違いはあるようですが,
当院ではがん休眠療法,
メトロノミック療法と呼ばれているものと
コンセプトは同じと捉えています.
本ブログでは低用量抗がん剤治療の呼称を使用します.
※当院の治療は,同一がん種においても使用する抗がん剤の
内容・投与量は個々の患者さんの病態・治療歴・その他の
諸条件により様々です.
そのため,提示した患者さんに行っている薬剤使用法が,
ブログをご覧頂いている患者様にそのまま適用できる
というものではありません.
読者の皆様に,そういった誤解を与えないために
本文中では使用薬剤についての記載を殆どの場合,
省いてありますことをご了承ください.
銀座並木通りクリニック(文責:三好 立)