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足らない人材、その75~戦略家⑳~


「(ワタシはアルフィリース、こいつをどうしたいのだろうか。戦いたいのか、それとも味方にしたいのか。恐れているのか、はたまた認めているのか。自分の感情に戸惑うなど、いつ以来だろうな。
だが一つわかっているのは、ここで死なすには惜しいということだけ。ならばやることははっきりしている。)」
「いいだろう、ワタシも手を貸そう。レクサス、ファイファーの身柄の確保に手を貸してやれ」
「了解っす」

 ルイの一声の元、レクサスの行動は早い。先ほどこの場を離れて行ったルナティカの後を、飛ぶような速さで追っていった。
 ルイはレクサスの行った方向を目で追おうともせず、アルフィリ
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「アルフィリース、こういう敵の前では将の演説が重要となろう。ましてこれはお前にとって負けられない戦いの様だ。皆に知らしめる必要があるだろうな」
「私、に?」
「そうだ、これ以上語らせるな。お前も人の上に立たんとするならば、ワタシの言うことを本能で感じるべきだ」

 ルイは説明を省いた。だがこれはルイの優しさでプラダ バッグ 新作もあった。人の上に立つ者は、その資質を生まれながらに備えている。ルイが諸国を放浪しながら見た、人の上に立つ資質を持つ者の例は、例えばヴァルサス。彼は圧倒的な強さで、そしてその危うさで古今東西のつわものどもを従えていた。だが同時にヴァルサスの強さは、戦士としての強さであって、彼に従う者もまた戦士であろう。彼に従う者はある意味では求道者であり、道に迷う者を導くような男ではなく、まして弱き者を助けたりするような男ではないことをルイは知っていた。
 他にもいる。かつてルイが仕えた王、ローマンズランド国王スウェンドル。彼は確かに王の器であり、野心に燃える王であった。彼の言うことはなんでも実現できる気がしたし、またその力になりたくもあった。だが彼の言うことは、常に甘美に狂っていた。動乱の世に生まれていれば彼は凄まじく強大な王として君臨したであろうが、泰平の世の中ではただの狂王になりかねない。その彼が世に出ることなく大国の主として君臨しているのは、ひとえに彼の周囲に集まった老練かつ冷静な臣下達の手腕によるものだろう。
 だが若き将兵たちは王の言葉にともすればのせられる傾向にあった。かくいうルイもその一人であり、王に傾倒する父親との確執がなければ、果たして自分もどうだったであろうかと時に考える。スウェンドルはそういう意味では確かに王だったが、彼は人を自分の野心という船に乗せるが、彼は自ら乗ってこない者にはまるで興味を示さなかった。彼は将兵の王であるが、国民全員の事を慮っているわけではない。
 そういう点で、アルフィリースはルイにとって未知数である。アルフィリースには確かに人を惹きつける何かがある。ルイはまだアルフィリースと直接会うのは二度目だが、間違いなく彼女には人の上に立つ資質があると感じていた。そうでなければ、戦いの最中にロゼッタにとどめを刺すことをためらうはずがない。だがその資質が何かは、まだルイにもわからないのである。
 未知数。ルイはその先を見てみたいと思う。

「(だが、ここでワタシに演説の意味ややり方を問えば、その資質もたかが知れる。本物は自ら何をすべきかを悟る。今からアルフィリースがやろうとしてるのは、部下に死ねというようなものだ。それほどの死地に部下を連れて行くことができるとすれば、それはもはや指導者と言うより狂信者の所業だ。さて、どうするか)」

 ルイは期待感を込めてアルフィリースを見ていたが、アルフィリースはルイの考え付かないほど実に楽しそうに、笑顔で部下の一人、しかもあまり強くなさそうな大人しい男に語りかけた。

「ねぇ、あなた。名前は?」
「は? エルゴ、ですが」
「エルゴ、あの敵が怖いかしら?」
「そりゃそうでしょう。あんな化け物と戦おうなんざ、まともな人間の考える事じゃない。団長にこんなこと言うのもなんですが、あんた頭がイカれてるんじゃないですかね?」

 傭兵は騎士と違い、自分の感情に素直である。彼らの多くには守るべきものが自分の命以外に存在しない。余計な誇りや見栄など持ち合わせない彼らは、上官であろうが遠慮なく物を言い、自分の命のためなら裏切りもする。忠誠などとは無縁の連中だ。
 だがアルフィリースも彼らの扱いは慣れたものである。

「イカれていたらどうするのかしら? 女一人突撃するのを、男が黙って見ているのかしら?」
「死ににいく奴を止める義理はないでしょう」
「本当に? あなた、それでも×××はついてるのかしら?」

 アルフィリースが思いがけず下品な言葉を口にしたので、エルゴやアルフィリースの仲間だけでなく、ルイまでもが思わず口をあんぐりと開けた。

「・・・は? 団長、俺の耳がおかしいんですかね。もう一回言っていただけると――」
「だから、お前はそれでもその××に、×××と××××がついてんのかって聞いてんのよ」

 あんぐりと口を開けたエルゴに、アルフィリースはさらにまくしたてる。

「エルゴ、私と賭けをしましょう。私が今からあの化け物を一体、一人で仕留めるわ。そうしたらあなたは命をかけて私についてくること。いいわね?」
「はあ? なんでそんな約束しなきゃなら――」

 エルゴが反論しかけた時、アルフィリースの剣がエルゴの目の前に突き付けられた。エルゴも愚鈍ではない。だがアルフィリースの抜刀は、エルゴが想像するよりもはるかに速かったのだ。

「私はね、遊びでこの稼業をやってるんじゃあないのよ。私は私なりに真剣な理由があって傭兵をやっている。あなたはどうか知らないわ。でも、傭兵ってのは金次第でなんでもする汚い仕事だと思われているし、実際そうだとも思う。
 だけど、一つだけ言えるのは私達は生きた人間だってことよ。もちろん人間でないのもうちには多少いるけど、生きている者の最低限の矜持すら忘れたら、私達はただのクズよ。そのこと、貴方はどれほどわかっているのかしら? それとも、あなたは女の後についてすら突貫できない弱い心の持ち主なの?」
「・・・それはない」
「なら根性見せなさい。どのみちあいつらから逃げれるかどうかは、非常に際どいところよ。私の言うことを聞いた方が、余程生き延びられると思うわ。
 そのまま、全員聞けぇ!」

 アルフィリースは逃走を始めているサラモ砦の兵士達にも聞こえるように、わざと怒鳴るような大声を出した。

「これから私達、天翔傭兵団(イェーガー)があの化け物どもに突っ込む! 我こそはと思う者は続け、命が惜しい者は去れ! だがここで負傷者を置いて逃げ出す者は、我ら傭兵団の嘲笑を免れぬものと知れ! 我らは功名や富を惜しむのではない、ただ仲間の命を惜しむ!」

 その一言で兵士達の行動がぴたりと止まる。そして一斉にアルフィリースの方を見ると同時に、アルフィリースは彼らの視線を一身に受けて走り出した。その間際、確かにアルフィリースの一番近くにいたラーナとルイは見たのだ。アルフィリースが笑っていたのを。
 ラーナはその笑みの本質を以前からわかっていた。アルフィリースは今の状況を、心のどこかで楽しんでいると。ラーナはアルフィリースの危うさをわかっていて、ここについてきたのだ。
だがルイはその本質を初めて見て、アルフィリースを恐れた。

「(この女、逃げ出そうとする者を一言で勝ち目の薄い戦争に駆り立てた。しかもおそらくは、彼らに何の戦果も期待してはいないだろう。仲間になれという懇篤ではなく、盾になれという残酷さでもなく。おそらくはただその場の思いつきで、戦いに加われと駆り立てた。そして自分は冷静に奴らに勝つ方法を考えているのだ。
なんという女だ、狂乱と鎮静が同居している。アルフィリース・・・稀代の天才か、はたまた魔王か)」

 ルイの思惑をよそに、アルフィリースは剣に魔術をかけながら突撃した。狙いは一体。先ほどバランスウィ崩して地面に転がった一体だ。そのアルフィリースの気合の入った声に気が付いたか、地面に転がった巨人が、アルフィリースの方をぐるりと見た。そのどこか呆けた赤い目が、アルフィリースの視線と交錯する。

「喰らえ、化け物!」

 アルフィリースは掛け声とともに、化け物の頭めがけて剣を叩き下ろしたのだった。


続く

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次回投稿は6/6(木)10:00~です。