1日入院予定が1週間になった。

母は、入院するのも手術するのも初めてだ。

 

それが、手術当日に手術室で急に見たこともない医者に悪性だと診断され、

そのまま心の準備もなく予定よりも大きく切除することになった。

 

母は、今とても元気だ。そして、手術から2年経過したが、

時々、涙をこらえて穏やかに言う。

 

「どうして手術前に悪性だとわからなかったのかなぁ。

手術前にわかっていたらメラノーマを専門にしている医者に診てもらい手術してもらいたかったなぁ。」と。

 

本当にそうだ。準備もなにもできなかった。

悔やんでも悔やみきれない。

 

当初の手術予定では、1センチ程度切除して切り口を縫い合わせるはずだった。

しかし、悪性と診断されたのだから、大きく切除する必要がある。

 

急に変更になった手術では、腫瘍から上下左右2センチ程度を切除。1週間入院。

その後、病理検査の結果を見て、1ヶ月後に、さらに1センチ程度外側を追加で切除する。

 
2回も手術をすることになる。
2回目の手術の前にPET検査、CT検査などを行う。
メラノーマは、ごく早期であっても、転移することがあるからだ。
 
胸が苦しい・・・。かわいそうだ。
手術前にもっと、私が注意深く調べていれば、こんな悔しく悲しい思いをさせずにすんだかもしれない。
今でも、後悔している。
 
母は、1回目の手術後、1週間で退院した。
切除した部分には、皮膚がないので、とにかく雑菌が入らないように注意しなければならない。
次の手術まで1か月。
医者に言われたとおり、病院の売店で、
ガーゼ、薬を塗るための使い捨ての木のヘラ、テーピング、かかとを包み込めるアミ状のサポーター、包帯を購入。
 
1週間ぶりに家に帰宅し、母は風呂に入り、手術した足を丁寧に洗う。
きっと、怖いだろうな。
 
私も乳がんの手術後、はじめて風呂に入ったとき、痛いしとても怖かった。
4年たった今では、ゴシゴシ洗っている。
 
さぁ、母の足に薬を塗るのは私の役目だ。
初めて切除された足の裏を見る。ガーゼをそっと取る。
 
直径は500円玉程度切られている。皮膚がない状態なので、とても痛々しい。
とにかく雑菌をいれないように、化膿したら大変だ。
すぐに薬を木べらにつけて、そっと塗る。
母に「痛い?」と聞くと、
「全然、大丈夫」という。
母は、つらいときにつらいと言ったためしがない。
 
薬をまんべんなく塗ったら、ガーゼをかぶせて、アミ状のサポーターでかかと全体をくるむ。
そして、最後に包帯でしっかりと取れないようにする。
母のメラノーマはかかとの端っこのほうにあった。
 
私にできることは、2回目の手術までの1か月、
絶対に化膿しないように、毎日薬を塗って、母の足の裏を守ることだ。