「努」と「怒」という文字の共通文字は「奴」ということになります。
「奴」っていう文字。
奴隷っていう意味ですね。
「ぬ」と読みます。
日本の「奴」は実は奴隷ではなく、「罪人」をいいました。
最近は男の奴隷を「奴」といいますが、女性の奴隷は「婢」と表記するようになったのですが、昔は男女とも「奴」でした。
つまり罪人を「奴」と言ったわけですが、では時代劇に登場する「非人」っていうのも、おわかりのように罪人を意味しますね。
もう少しいいましょう。
大名行列に付き従う毛槍担いだやっこさん。これも「奴さん」と書きますし、冷奴も冷たい罪人ですか?って、ツッコミ入れたくなりますね。
冷奴の場合は、大名行列に付き従う奴さんは、各大名家が常駐させているわけではありませんから、行列に付き従う常識として、家紋着用が必要になるんですが、いちいち家紋をとっかえひっかえできないですし、また奴さんはいくつかの大名と契約している季節労働者ですので、家紋を付け替えるわけにはいかない。
で、抜き紋といって四角の白枠を家紋代わりにつけ、ここに各大名家の家紋が入るんですよ。という印にしたんですね。
冷奴はその四角くて白枠紋に似ているから付けられたのですが、では奴さんは罪人かとなります。
さてここからが、「奴」と「非人」の違いですが、非人というのは、人でないわけですから、罪人として受刑中の人をいい、奴は刑期明けの元受刑者ということになるわけです。
奴さんは自らを卑下したように書いている書物もありますが、季節労働者ですので、元受刑者を調達することが多かったわけです。
ということで、「奴」は元受刑者ということでおわかりいただけると思いますが、さてここから本当の本題、「努」と「怒」の「力」と「心」の違いです。
さて、カンのいいかたはおわかりでしょうが、「努」と「怒」は「奴」の立場で考えるとよくわかるわけです。
「元受刑者」が世間の風当たりにもめげず、「力」を入れて一生懸命世間に堪えることが「努」で、「元受刑者」の「心」が限界のときを表しているわけです。
死んだ気でがんばれ。というのは、元受刑者ではなく、生まれ変わったつもりでやりなさいであり、怒るというのは人間の尊厳を傷つけられたときのみ「怒り」があるわけで、いつも怒っている人は、真の怒りを知らない人ということでもあるわけですね。