ちょっとお店のグラスはお粗末でありますがワインはモンラッシェ、それも1990年ですからこれ以上良いヴィンテージを望むことは恐らく無理でありましょう。
さて生産者ルイ・ラトゥール社ですが、ドメーヌ物はお隣シュヴァリエ・モンラッシェだけであり、このモンラッシェは契約葡萄生産者からの買い葡萄を使ってワイン造りをする所謂ネゴシアン物に属するワインであります。
メゾン・ルイ・ラトゥールはモンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェ・レ・ドゥモワゼル以外にバタモンとビアンヴニュ・バタモンも造っていますが1980年代私の知っている限り、この2つの葡萄はピュリニー・モンラッシェに住むジャン・ピエール・モノというその畑を所有する葡萄栽培者のそれであります。
で、肝心の「Montrachet」はと云うと・・・ 当時メゾンに行ったとき尋ねたのですが、確か「ポワリエ」から葡萄を買っているとお答えを頂いたはずです。
ポワリエと云えば1990年というヴィンテージから考えると Claude-Maxence Poirier もしくは Jacqueline Vaudiaux-Poirier が候補としてあがりますが、私の持っている資料に照らし合わせてみると前者はピエール・モレとロジェ・カイヨ・モレに、後者はロジェ・カイヨ・モレに葡萄を売っている様子でルイ・ラトゥールの字句は見掛けません。
ところで特級畑モンラッシェはピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェの2つのコミューンに跨っているのですが、ラベルに冠詞の付くモンラッシェ「Le Montrachet」は普通シャサーニュ・モンラッシェのコミューンに属することが知られています。
INAOのサイト
を拝見すると地図が載っているのですがクリックするとこちら
が現れます。
ですけどこれは2つのコミューンの地図であり、モンラッシェの範囲を示す地図ではありません。INAOもいい加減なところですね。
生産者のサイトからこのモンラッシェを探すとこちら
が登場します。ですが誰の所有する畑かは書いてありません。生産者に直接問い合わせてみようと思います。返事が来るかどうかは分かりませんけどね。
そうそうこんなサイト
を見付けました。シャサーニュ・モンラッシェについてかなり詳しい畑の説明があります。最近出来たサイトで、生産者の顔が見えるのが楽しいですよ。
ボトルは分厚いガラスの重量級、キャップシールもずっしり重い錫箔、コルクはご覧の通り漏れ寸前で止まっており危うくセーフといった状態。しかし先日申し上げたようにコルクの劣化が始まっており角が落ちてしまいました。
ですがグラスに注がれた液体はまさしく「甘露」そのものであります。
まず注ごうとする液体の流れ方からして普通のワインとは異なります。「トロッ」ではなく「トロン」と形容したらよいのでしょうか、これに似た体験は1983年の「DRC Montrachet」だったでしょうか。とにかく密度の高い液体であります。
色はご覧の通り健全です。
香りはDRC1983と違って貴腐香は全く感じません。
「ハシバミのような・・・」と云ったところで日本人には馴染みの薄い香りですからこういう形容詞は使いたくありません。まあワインをよくご存知の方ならお分かりの典型的なシャルドネのフレーバーで樽そのものの影響はあまり感じません(もちろん新樽100%でしょうけど)。
口に含むとその凄いパワーに圧倒されてしまいます。まだまだ飲むには早いのか、いえいえそういう訳ではないのですがとにかくフルパワーの間違いなく本物モンラッシェに脱帽であります。
