起業マインドの変遷

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 小田玄紀です


 先日、某経済誌の取材でここ最近の起業家の傾向について聞かれました。

この手の質問は以前からよくある内容で、起業家の起業マインドは確かにその時代が反映されます。


 自分が起業した10年前は一時のベンチャーブームはやや落ち着き、むしろ若者のマインドがNPOに流れました。当時はまだ社会起業家という概念は薄く、「お金儲けよりも社会貢献」という考えが浸透していました。


 より正確にいうと、「やりたいことをやることが正しい」という概念が広まり、その若者の“やりたいこと”が社会貢献であることが多かったのかもしれません。


 こうした時代背景の中で当時の起業家に多かったのは営業系や店舗系など、今から思えばアナログな事業展開をする起業家が多く増えていました。他方でNPOを設立する人に関しても実際に現地に行くことを重んじる、現場重視型のNPO(表現としては適切ではない気はしますが・・・)が多く設立されていました。


 起業家もNPO代表もどちらかというと労働集約型なアントレプレナーがこの当時は非常に多かったような印象を抱いています。



 この傾向は5年程前あたりから少しづつ変わり始めます。


 5年程前からの流れは完全に社会貢献マインドが起業家のウェイトを多く占めてきました。ソーシャル・アントレプレナーという言葉も浸透をしてきており、起業する人の多くが社会貢献を意図するようになり、またNPOを立ち上げる人達も従来型の活動内容ではなく、オリジナリティある活動を謳うようになってきました。


 起業家に対して起業する理由を聞くと、多くの人が「社会の役に立ちたいから」ということを本心で語る方が多くなったのはこの頃からだと感じます。


 

 ここ最近の傾向はというと「ソーシャル&ソーシャル」です。


 まず、起業家のマインドは5年前と同じかそれ以上に社会貢献という方が増えました。さらに、この傾向は起業家だけでなく既存企業の経営者にも浸透してきていると感じます。


 特に最近会うオーナー経営者の方の多くは“メセナ病”としてではなく、企業の成長・発展のために不可欠な要素として社会貢献を考えています(面白いことにサラリーマン型経営者の方はこの割合がガクッと減ります)。


 競争環境も厳しくなっている中で、自社の存在価値を見直して今後の事業展開を考える上で、社会から必要とされるサービスか否かという本質的な問いに対して答えていく姿勢は重要であり、それがオーナー経営者であればあるほど自らの事業の社会性は経営上最優先される課題となりました。


 つまり、ベンチャーだけでなくこれまでは普通の会社と思われていた企業自体もソーシャル性が高まってきた時代と言えます。


 他方で最近感じるのはベンチャーのもう1つのソーシャル性です。こちらのソーシャルはソーシャル・ネットワークやソーシャル・ゲームなどのソーシャルです。


 DeNAしかりグリーしかり現在、最も収益力が高い事業は間違いなくソーシャル・サービスです。ある程度の技術と知識があれば、ソーシャル事業を立ち上げることはできます(成功するかどうかは全くの別問題ですが)。


 最近、起業の相談に来る方の中でこうしたソーシャル事業の方は確実に増えています。そして、面白いことにこうした方の多くが社会貢献に対する関心が低く、むしろ自らの成功によりウェイトがおかれています。


 個人的には、事業利益の追求と社会貢献の追求は両方同時に実現することは非常に困難なので、特に事業利益の追求のみをすることを非難することはしません。むしろ、事業に成功してその利益で社会貢献をして頂くことの意義も強くあると思っています。


 ましてや、今の社会問題において最重要課題の1つは経済問題だと考えているので、この解決に貢献し得る最近のソーシャル型事業の起業家の方の存在価値は極めて大きいと思います。


 ただ、ここ最近の2つのソーシャルの傾向はまさしく両極であり、これが今後どちらかの方向に傾くのか、あるいは両者を共存させる起業家が台頭してくるのか。興味があるところです。


2011年11月28日

    小田玄紀