小田玄紀です


 仕事の関係上、よくベンチャーキャピタルの方から相談を頂きます。


 以前は「どこかいい投資先を紹介して欲しい」という相談が最も多く、次に「どこか私の転職先を紹介してもらえないでしょうか?」というのが次に多い相談でした。


 最近は、そもそもベンチャーキャピタルを続けている方の絶対数が減り、相談数自体が少なくなったのですが、確実に相談内容も逆転するようになりました。


 IPO件数も少ないため、それはそれで仕方が無いことなのですが、この現状を指して「日本ではベンチャーキャピタルは生業として成り立たない」という方が多くいます。


 ただ、これは明らかな間違いだと思うし、実際に私自身が10年弱ベンチャーキャピタリストとして動いている中で今くらいに変化があり、エキサイティングな投資環境は無いと感じています。


 今、問われているのはVCの本来の存在価値であり、これまでVCの存在価値が不明瞭でも成立してきてしまったことが、むしろ不健全な状態だと思います。


 多くの経営者がVCに期待するのは「エクイティとしての資金調達」であり、それ以外の企業価値向上は正直な話期待していません。


 また、多くのVCが実際にやっていることは「優良企業の開拓」であり、最大の投資判断基準は“他のVCが投資をしたかどうか”になっています。彼らの多くは良い企業に投資をすれば、確率的に成長し、上場をして利益を得られるということを真剣に信じています。


 ただ、この考えはあまりにも不健全です。


 投資をすれば自然にリターンが返ってくる。こんな夢のようなことを期待していたのがこれまでの日本のVCでした。


 だからこそ、私に対しても「どこかいい投資先を紹介してくれませんか?」という質問になり、次第にその中で自らの仕事のやりがいを感じなくなり「どこか転職先を紹介してもらえないでしょうか?」という次の相談が生まれていたのだと思います。


 本質的なVCの価値はリスクを共にすることで『自分事として経営に参加するパートナー』です。投資をするのはリターンを期待してではなく、その企業の成長に寄与することを自らがコミットするための必要条件に過ぎません。


 投資をした上で如何に『自分事』としてその企業の価値向上に対して働くのか。ここが最も重要なことです。


 実際に私がベンチャー企業に投資をするに際して、重視する点は下記だけでした。


 ①経営者が共感できる人かどうか。仲間になれるかどうか。
 ②自分自身がその企業にとってValueを発揮できるかどうか
 ③その企業に社会性があるか。関わることにワクワク感を持てるかどうか


 あくまで投資ではなく経営参画することで、どれだけ自分自身の存在価値を発揮できるかどうか。そこに自分自身がやりがいを感じてきたし、VCとしての価値があると考えています。


 10年前は会社を設立しても銀行口座を開設することすら中々できず、起業環境はとても不便なものでした。今は様々な面で起業が容易であり、また以前に比べるとスタートダッシュをかけやすい環境にあります。


 企業投資の環境としても十分に整っており、VCに限らず誰しもが“自分自身の存在価値”を正しく発揮することが重要な時代になってきたのだと思います。


                               2011年9月14日
                                 小田玄紀