出会って1年ほどが過ぎたころ。

ダンガンシュートは、深夜のネタ番組にときどき出演するようになった。

そして、正太郎ちゃんは、私の部屋に来なくなった。

 

出演番組はすべて録画した。ひどいときは数秒の出演時間ということもあったけど、仕事から帰ってから眠るまで、同じシーンを何度も何度も巻き戻し再生した。

 

目を閉じれば、ピンクの小さなクッションに座っている正太郎ちゃんの姿が浮かんだ。

缶ビールを何缶も何缶も飲む姿。酔っぱらって、パンツだけになって眠る華奢な体。

 

「佳代ちゃんおいで」「佳代ちゃん、俺、頑張るからね」「佳代ちゃん、お金貸して」。

 

正太郎ちゃんの声は、いつだって頭の中に響いた。

眠りに落ちる瞬間まで、正太郎ちゃんのことばかりが頭にこびりついて離れない。

目を覚ました瞬間に正太郎ちゃんの姿がよみがえる。

正太郎ちゃんの気配を感じながら、会社へ行く支度をする。

駅に向かう道、人が行き交う駅のホームで電車を待っている時間、仕事中だって正太郎ちゃんは私の中に現れる。

だんだんとその存在感が強くなって、私は、ぼんやりすることが多くなった。

 

仕事では、単純で少ない作業しか任されていないのに、その日の業務が終わらず、残業をすることもあった。

上司のスーツにお茶をこぼしたり、何枚も同じ資料を印刷したり、失敗もたくさんするようになった。

周囲が「たいした仕事もしてない豚が」「ブスのくせに仕事もできないのかよ」と私に聞こえるように噂している。

 

でも、そんなことどうでもよかった。

 

四六時中、あなたのことを考えている