今日は午後2時半にフランスの銀行に予約を入れていました。口座を閉じるためです。フランスの銀行では、口座を開くにも閉じるにも、あるいは何か相談をするにも、まずは予約をしなければなりません。実は、口座を開くときも大変でしたが、口座を閉じるのも大変です。あ、「このブログ、前見たぞ」と思った方、あなたは正しいです。数か月前、スイスの銀行口座を閉じるのも大変だったことをブログに書きました。

もちろん、スイスだけではなく、フランスも大変です。フランスの銀行も、スイスと同様、銀行員によって言うことが違います。

 2016年の11月末にジュネーブの国連機関への派遣が終わり日本に引き上げましたが、それからもしばらくはジュネーブと日本を行ったり来たりでしたので口座を閉じないで使っていました。

 しかし2017年末にはもう残高も少なくなっていたのでフランスの銀行口座を閉めようとしました。それからが大変でした。

 まずは予約を取り(これだけで1-2週間先になってしまう)、「銀行口座を閉じたいのです」と伝えました。その時に言われたことは、「口座の残額をフラットな金額(〇〇ユーロ、という金額)にしないと閉じられません」と言われたのです。「はーっ?サンチーム(ドルで言うと、セント)があると、口座が閉じられない、というわけ?」

 銀行員「そうです。あるいは、全額を日本の銀行口座に振り込むか、ですね」。…それじゃあいったい他に口座が無い人はどうやって口座を閉じるんでしょう。

 フランスから海外の銀行口座に振り込む際には結構な手数料がかかり、日本で受け取る際もまた手数料がかかります。ばかばかしいけど、しょうがない。「じゃあ、日本の銀行口座情報を今度持ってきます」ということでこの時のアポイントはそれで終わってしまいました。その次に出張に来たのは2か月後くらいでした。

 もう手に負えないのでその時のアポイントの際はシルビアに付き合ってもらいました。銀行員さんは英語が苦手、私はフランス語ができません。以下、シルビアにフランス語と英語の通訳に入ってもらっての交渉です。

ウサギ:「口座を閉じて残額を日本の銀行に送金したいのですが」

銀行員(前とは別の人):「送金するのですか?残額をフラットな金額にすれば閉じられますよ。そうしたら高い手数料払わなくてもいいですよ」

ウサギ:「え?そうなんですか?前会った行員さんは、閉じられない、と言ってましたよ」

行員:「いえ、たとえば1533.28ユーロ残っていたら、6.72ユーロ入金して、1540ユーロというフラットな金額にしてしまえば閉じられます」

ウサギ:「はー、そうなんですか。じゃあ、そのようにしましょうか」

行員:「ただし、フラットな金額にしてから中4日空けないと閉じられないのです」

ウサギ:「は?なんですか、そりゃ」

行員:「そういう決まりなんです。いつ日本に帰るんですか?」

ウサギ:「明後日です」

行員:「じゃあ、閉じられませんね」

ウサギ:「…じゃあ、もう一度来ます。今度来るのは2か月後なんですが、アポイント取れますか?」

行員:「そうですか。じゃあ、6月26日の午後2時半に」

 

というわけで、それが今日だったわけです。シルビアには昨日から「明日大丈夫?」と連絡し、「大丈夫。仕事は休みの日だから」と返事をもらっていました。

 

14時半に銀行に行き、以下、シルビアの通訳が入っています。

ウサギ:「ムッシュ○○と2時半に約束があるのです」

行員:「ああ、彼は今日明日とお休みです」

(ウサギ、顎が外れる)

「はーっ???なんですとーっ?」

行員:「お休みなんですよ。約束があっても、来られる前に確認の電話をしていただいたほうがいいですね」

ウサギ:「…でも、どうしても口座を閉じたいのです。なんとかしてください」

行員:「残高をフラットな金額にしないとだめなんですよ」

ウサギ「わかります。いくら入れればいいですか?」

行員:「8ユーロ16サンチームですね」

ウサギ:(財布をひっくり返して)「細かいのが無いので、10ユーロでお願いします」

行員:「あー、ピッタリの金額じゃないとだめなんです」って、おいおいおいっ銀行だろー!?

ウサギ:「なんですとーっ?!そんな、8ユーロ16サンチームなんて、細かいお金、無いんです」

シルビア:「ちょっと待って。私いくらか細かいの持ってるかも」

とシルビアも財布をひっくり返してくれ、二人の小銭をかき集めたらぴったり8ユーロ16サンチームがあった!

私って、不幸なの?それともラッキーなのか?とにかく、奇跡的にも8.16ユーロのコインがそろったのでそれを渡すとたしかにフラットな金額になりました。やれやれ、これで閉じられる…かな?無理なんだろうな、と次の展開にも波乱の予感が…。

行員:「ちょっと待ってください」と、他の行員に相談。

行員2:「あなたのカードはゴールドカードだから、閉じる際に払ってもらわないといけない金額があるんです」……ほらね。

 

【説明しよう(タイムボカン風に)。フランスでは銀行のカードというと、クレジットカードと同じカードになる。それが私の場合ゴールドカードなので、ゴールドカードのコストがかかっている。それは口座を閉じる際に発生する、というのである!】

 

ウサギ:「いったいそれはいくらなんですか?」

行員:「140ユーロです」

ウサギ:「ひゃ、ひゃ、140ユーロ!?!?!?(1万8000円くらい)な、なんですか、そりゃ?」

行員:「そういう決まりなんですから」

ウサギ:「でも、今の今までそんな話、一度も聞いたことないです。これまで何度も来たのに誰もそんなこと言わなかったんですよ!」

シルビア:「ウサギはもう何か月も前から何度もここに来て口座を閉じたい、と言ってきたのに、みんなが全然違うことを言っていて、今度は閉じてから140ユーロのコストが発生する、と言われている。こんなことはありえないんじゃないですか?」

行員:「今日はとにかくフラットな金額にしたので口座を空にすることはできます」

シルビア:「じゃあ、とりあえず口座は空にするとして、今日アポを取っていたのに休んでいた男性行員の予約を取ってもらえますか。だって彼は前回会ったときにそんなこと言わなかったのだから、彼にこの140ユーロのコストのことを聞いてみたいのです」

行員:「そうですか、じゃあ、来週の火曜日の朝10時に来てください」

 

まあだいたい上記のような会話があり(実際はもっとごちゃごちゃしていた)、また今日も口座は閉じられませんでした。いやはや、いやはや、もういくらなんでも、いやはや過ぎるフランスの銀行。20143月に来た時から、不思議なシステムの国だなあ、とは思いましたが、閉じるにもこんなに複雑なんて。じゃあ、フランスに住んでいる人はいったいどうやって口座を閉じるのでしょうか。こんな風に何度も約束を取っては毎度違うことを言われたり、約束を破られたりするのでしょうか。

口座を開くときも、ある行員には「日本で負債が無いことを証明する公的文書を出して来てもらってください」と言われ、さらに「アパートなどの住所が無いと口座は開けませんよ」と言われ、「いや、でもアパートを借りるには銀行口座が必要、と不動産屋に言われて来たんです」という、「ニワトリと卵」みたいな会話があったりしたのですが、次に約束をして行った時の別の行員は「ああ、そんなのいらないですよ。本当はあった方がいいけど、無くてもいいです」と言ったのです。同じ銀行の行員なのに、なぜみんな自信たっぷりに違うことを言うのか。謎が謎を呼び、ほとんど迷宮入り。これが先進国の銀行か?

 それにしても、シルビアに助けてもらってよかった。というか、シルビアに通訳してもらわなかったら、いったい何がなんだかわかりませんでした。今でもよくわからないけど。毎回毎回、「今度こそ口座を閉じて身軽になれる」と思って銀行に行くのに毎回「わけわからん」という「?」マークを一杯頭の上に載せて出てきます。シルビアにも貴重なお休みをつぶさせて申し訳ない。

 本当に来週火曜日に口座は閉じられるのでしょうか。頼むよ、フランスの銀行!

 ま、空は青いし鳥は鳴いてる。あまり悩まないようにしよう、ウサギ!