3週間弱の予定でヨーロッパに出張に来ています。

 日本からの飛行機の中で見た映画を2本ざっくりと紹介します。

 まずはミュージカル映画、「ザ・グレーテスト・ショウマン」。アメリカで19世紀後半に興行師として活躍したフィニアス・バーナムの物語です。貧しい仕立て屋の息子として生まれた彼は成長後幼馴染で大金持ちの令嬢と結婚し、なんとか奥さんに何不自由ない暮らしをさせたいと、「誰もやらないことをやって儲けよう」と考えます。

そして、今なら福祉目的以外では絶対できないのではないかと思われる、さまざまな身体障害や先天異常や特異な容貌を持っている人を集めてサーカスをし、ちょっと成功します。今でも、ヨーロッパのサーカスでは小人症の人達が前座として面白おかしく演技をして笑いをとっていますが、日本人から見ると、ちょっと「ここ、笑っていいのかな」と固まってしまいますよね。しかし、まだ人権意識が低かった当時のこと、彼は「どうせ笑われるなら金をとりましょうよ」と大々的にサーカスの団員として募集します。

サーカスで成功した後は、なんとイギリスに行きヴィクトリア女王にも謁見し、ついでにヨーロッパのオペラ歌手ジェニー・リンドをアメリカに招いて大儲けしたとか。といっても、どこまでこの映画が彼の実話に基づいているのかはわかりません。

 とにかくミュージカル映画としてとても楽しく、迫力があって音楽がいずれも心に響く曲ばかりです。主人公が初めの方で歌う「ア・ミリオン・ドリームズ」は歌詞も「夜寝ようとすると次々と楽しい夢が浮かんできて眠れない」というような明るい歌で感動で涙がにじみそうになりました。

 ミュージカル映画の中には、舞台で見た方が楽しいものと、映画の方がいろいろ演出がしやすくて面白いものがありますが、たぶんこの映画は前者ではないかと思います。サーカスのシーンはカナダの「シルク・ドゥ・ソレイユ」の出し物に似ていました。いつか、日本にも来てくれるといいのですが。

ただ、話の舞台はヴィクトリア女王の時代のはずなのに、ダンスはまるっきりマイケル・ジャクソン風で、その時代の優美さはみじんも感じられません。また、オペラ歌手のジェニー・リンドが公演をする、という場面で「椿姫」でも歌うのかと思っていたら、全然違う今風の歌(「ネヴァー・イナッフ」)だったのでちょっと肩透かしでした。もちろん、歌としてとてもきれいで主なメロディがいつまでも心の中で響きましたし、ジェニーを演じたレベッカ・ファーガソンの歌唱力にびっくりでした。検索してみたら、映画の中の歌を聴けるサイトがありました。ご興味があれば覗いてみてください。

https://cheko-blog.com/TheGreatestShowman

 

もう一本はフランス映画で「セ・ラ・ヴィー」。フランスでケータリングサービスの会社を経営している男性が、お城を借り切ったウェディングパーティーを請け負い、それはそれは苦労する話です。何が面白いと言って、フランス人スタッフを使うことの苦労がこれでもかこれでもかと出てくるのです。上司の指示に絶対「はい」と言わない。なんだかわからないけど自分の主義主張にこだわる。だから言い合いばかり。頭でっかち。「もういいから」と言いたいくらい面白くないジョークを言うのが好き。美味しいものが大好きすぎる。男女がすぐに恋に落ちる。こんなスタッフを使っていたら気が狂うだろうなあ、でも、そうそう、フランス人ってこうなんだよなーと頷きながら見ていました。ジュネーブだって同じです。国連組織の職場では、何度秘書に「とにかく『はい』って言って働いて!」と言いたかったかわかりません。

また、面白い中にも、フランスの雇用の問題なども出てきて、フランスで何か事業をするのは大変だろう、と思いました。フェルネーで私がよくお願いするおかまちゃんのタクシードライバーは、自分でタクシー会社を作っているのですが、フランスで人を雇うと、社会保障で守られすぎているせいか、少し仕事しては「病気になった」と言って病欠してしまうのでもう会社は辞めて東欧のどこかの国でタクシー事業をやってみる、と言っていました。

フランスでは、正社員の職に一度就くと、病欠が半年だか1年だか取れて(?この辺ちょっと記憶があいまい)、病欠手当が正社員の時の給料の80%出るのだそうです。病欠が長引けば少しずつその額は減りますが、とにかく一度正社員になればしばらくは働かなくても食べていける。そういう制度を利用する人もたくさんいる、ということでした。そのためとても税金が高いので、税金逃れをしようとする人も当然ですが多くいます。ま、これはどの国も同じですが。

とにかく、映画は「なんだかんだ言いながら、スタッフと雇用主はまた一緒になりました」というハッピーエンドで面白おかしく終わるので映画としてもお勧めですが、フランスの暮らしの一端を知りたい人には興味深いと思います。もちろん映画なので、大きな誇張も随所に見られます。まさかフランス人がみんなこう、とは思わないでください。

映画を見ながら、自分が暮らしたフランスの生活をいろいろ思い出しました。あんなに苦労した2年9か月だったのに、フランスにもう一度住んだら面白いだろうなあ、と思ってしまうのが不思議です。フランスには不思議な魅力があります。フランスに興味のある人にはお勧めの映画の紹介でした。

2か月日本にいたらすっかりフランス語を忘れてしまったウサギ