この記事のテーマとポイント:

・自分に合う仕事はを見定めるには、業種や職種などの「大きなカテゴリー」よりも「スキル」や「好きなこと」という小さなレベルで、自分軸で考えることから始める

・日本の社会システムでは、「スキル」をベースに「職業」を考える機会が限られ、「昭和型」の流動性の低い雇用形態のため、「適性」の無い職場に予備知識なく多くの人が飛び込んでしまうことが「ミスマッチ」につながり、「うつ」による休職者が他国に比べて多い企業文化に繋がっている
 

「本当に自分に合った仕事ってなんだろう?」

「私の能力を活かせる仕事ってなんだろう?」

 

と悩んだことの無い方などいないでしょう。

 

実は、この問いの答えって意外に簡単です。

最初に種明かしをすると


「自分に聞く」


ことなのです。

でも、それを難しくしている厄介なものがある。

それは、<仕事>にまつわる


「既存の社会制度における固定観念」です。

 

私たちは、物心ついた時から、

 

「大きくなったら何の職業につきたい?」

「大きくなったら、何になりたい?」

 

と「職業・仕事」ベースで、聞かれましたよね。

 

私が幼稚園生の時の答えは

 

「バレリーナ」か「女スパイ」でした。

とりあえず笑っておいてください。

 

問題は、この「職業の名前」なのです。名前があると言うことは、その職業に全てがカテゴリー化されているということ。

決して「大きくなったらあなたが活かせる得意なこと(スキル)は何?」とは聞かれないのです。これが、自分の得意な事を活かした「スキル」を中心に考えることを難しくしている固定観念なのです。


本当に大事なのは「仕事の名前」ではなく、あなたの適性に合った「スキル」なのに。

 

考えてみてください。

 「女スパイ」を例にとってみましょう。

 

「女スパイ」というと、何を思い浮かべますか?分かりやすいのは、「ミッション・インポッシブル」に出てくるキャラクターの(こないだ降板しちゃいましたけど)イルサでしょうか。

 

イルサはいわゆる「女スパイ」で元々英国の諜報機関に所属していました。

 彼女が「イルサ」となるには、色々なスキルが必要です。以下のような「能力」が挙げられます:

  • 戦略的思考能力

  • 言語力

  • 武術

  • プログラミング

  • 演技力

  • コミュニケーション能力

上記に挙げた「スキル」は同じスパイであっても、異なるポジションにいれば、変わります。例えば、ハントの場合、これに「リーダーシップ」が加わるでしょう。興味深いのは「スパイ」というごく特殊な職業に必要なスキルは、「武術」をのぞいて、もっと一般的な「職業」においても必要とされるものであること。あなたにも当てはまる「スキル」もあるのではないでしょうか。

 

幼稚園児に限らず、私たちの内の多くが、こういった「スキル」で「職業」を考えずに、「職場」に飛び込んでゆきます。「職場」よりも、「企業名」や「業種」、あるいは「規模」と言う上位カテゴリーの優劣で職場を決めがちです。特に、日本では社会構造上、その傾向が強い。その理由に下記の点が挙げられます:

  • 長期インターン制度が一般化していない

  • 欧米で浸透しているジョブ型雇用が一般化していない

  • 雇用の流動性が低く、一旦働いてから大学院に戻ることや、フリーランスとサラリーマンなどの異なる雇用形態間の移動も少ない

欧米企業の「インターン」は、少なくとも夏休みの間3ヶ月くらいは続くのが一般的ですが、日本における「インターン」は、採用課程にくっつけられる「おまけ」のようなもので、長くて一ヶ月くらい。短いものだと一週間程度。


私は大学時代に半年間ほどインターンを、とある特殊な米企業の日本拠点でやらせてもらいましたが、インターンと言うよりは「アシスタント」と言う感じで、実際の職業体験ができました。これは、その後の私のキャリアで羅針盤のような役割を果たしてくれる貴重な経験となりました。

 

さらに、多くの日本企業の採用方式は「総合職」と「一般職」という、実にざっくりとした2カテゴリーで新卒を採用するもので、欧米で一般的な「ジョブ型」ではありません。日本で一般的な「総合職」って一体何なんでしょう?その呼称が示す通り「何でも」含まれ、カテゴリーがあってないようなもの。あえて言うなら、「営業」だけは別枠のある企業が多いかもしレません。でも、本当は「マーケティング」「調査」「総務(中でも広報なのか、人事なのか、色々ありますね)」によって求められるスキルと適性は全く異なるのに、日本企業の多くは、ざっくり「総合職」で採用するスタイルで、「ジョブ型」ではありません。

 

更に、日本の大学生の多くは欧米の学生に比べて勉強をしない(と言うより大学と社会が勉強を求めない、と言うべきか)。人生における勉強のハイライトが高校生の時に経験する「受験」にあるから。学業の場で「マーケティング」などの、より細分化された企業人としての「スキル」を磨く機会も少なく、インターン制度も限られているので、実際の職場を体験し、自分が目指す「職業」において求められる「スキル」が何かも知らないままに、ある意味丸腰で就職してゆく。しかも、大概「企業名」のブランド力や「ランキング」などの漠然としたイメージが決定打になることが多いでしょう。

 

そのようにして「社会人」を大量生産してゆくことは、ある大きなリスクを生みます。それは

 

ミスマッチ

 

のリスク。就職したものの、現場で求められる「スキル」が自分の適性になく、バーンアウトし、多くの人が休職を余儀なくされます。実は、日本の会社員が病気で休職する際に受けとる「傷病手当」の病名で、開示されているもので一番多いのは「精神・行動の障害」によるものなのです。サラリーマンが加盟する健康保険である、全国健康保険協会の「傷病手当」の支給調査が示していますが、更に深刻なのは、長期にわたって休職が続いたり、退職することによって「受給資格」が消滅する理由のトップが「精神・行動の障害」であること(傷病手当支給調査)。


 

つまり、「うつ」が日本のサラリーマンを一番苦しめ、社会のセーフティネットからこぼれ落ちさせてしまう最大の原因。日本の会社員が「うつ」になる割合は、ある調査によればアメリカの3倍だそうです。

 

小さい時の無邪気な「なりたい職業」について思い出してみてください。その「職業」に必要な「スキル」を改めて考えてみてください。そこには、あなたの「適性」と「本当にやりたいこと」のヒントになるようなものがあるのではないでしょうか?

 

私に関して言えば、「女スパイ」の戦略的思考、言語力、コミュニケーション能力は間違いなく今の仕事で必要不可欠なスキルですし、これまでの人生でも多様な職場で私を助けてくれました。そして、振り返ると、私が「生きがい」を感じるのは、その時の「職種」ではなく「スキル」を活かせていると感じられている時でした。

このことから、幼心にも「自分の好きなこと」が何なのか、子どもって直感的にわかっているのではないかな、と思います。

幼稚園の時の「なりたい仕事」を職業ベースで考えると、女スパイにはなれませんでした。そもそも日本には非合法諜報機関は存在しないので、無理なんですが。しかし、「スキルベース」で見ると、自分で活かしたかったスキルは「女スパイ」と共通のスキルをかなり活用できてはいるので、夢が叶った部分も多いのではないかwとは思います。


自分が今いる場所に適していないのではないかと悩みながらもそこに居続けざるを得ない「居場所の無い」状況って、とても辛い。私もかつて、パニック障害の症状を抑えるために、数種類の抗うつ剤を服用しながら無理をして仕事をしていた時期もありました。それって、サステナブルではないですよね。その状況から私を救い出したのが「スキルベース」の考え方でした。

 

「スキルベース」が何か、「スキルベース」で自分に本当に向いている仕事の見つけ方については、次の投稿でお話しします。


(この記事は下記の投稿に続きます)