この記事のポイント:

·       進化の過程で「気前の良い」個体は有利に

·       他者の幸せが喜べない感情面における「ケチ」が「嫉妬」

·       ケチで嫉妬深い人はビジネスの場でも不利

 

嫉妬という感情が生存本能に起因し、生存の危機にさらされているわけではない現代社会で無駄なものであるということを前の記事でご紹介しました。ビジネスの場において、嫉妬がマイナスな感情であることは、誰もが納得するところだとは思うものの、改めて掘り下げてみましょう。

 

そもそもビジネス以前に、さらには人間以外の生き物の世界においても、闘争・逃走本能と連動した「がめつさ」や「嫉妬」といった感情の爆発を抑え、「気前よく他者に与える」個体は、実は進化の過程で非常に有利であることが、科学的にも証明されていることをご存じでしょうか。20年ほど前、「良い人」であることが生き物として有利であることを生物学、ゲーム理論、遺伝子学などの観点から総合的に証明した本が話題になりました:

 

 

「気前の良い人類 “良い人” だけが生きのびることをめぐる科学」

この本の要旨はこちら(アマゾンを参照しています);

 

利他的な振る舞いは結果として自分の利益になる、なぜなら:

  • 他者に惜しみなく与える行動は自分の力を顕示し、周囲(特に異性)から注目を集める手段となる。
  • 同様に、直接的に自分の利益にならない行為は、自分に余裕があることを異性にアピールする手段になる。
  • 利他的に振る舞う「良い」個体は、性的選択で有利なポジションを得られ、「生きのびる」ことができる。

「嫉妬深い」ことは「気前の良い」ことの反対にある性質です。嫉妬深い=ケチと言えるでしょう。それはつまり「他者の幸せを素直に喜べない」ということです。

 

「気前が良い」という事は、ビジネスの場において、非常に重要な「スキル」ないし「性質」の一つです。たとえば、もうすぐバレンタインですが、ある程度気を遣って選んだ今話題のチョコレートを二人の上司にプレゼントしたとしましょう。二人の職位は大体同じで、年収も同程度であると推察されます。ホワイトデーにそれぞれから返ってきたお返しは以下の通り:

 

A氏:リンツの詰め合わせ

B氏:ジャンポールエヴァンの詰め合わせ

 

別にリンツでも悪くないんですが、わざわざ高級百貨店やミッドタウンに行かないと手に入らないエヴァンを選んで返してくれたB氏の方が、絶対イメージ爆上がりです。こういう「気前の良さ」ってバレンタインのお返しに限ったことでは無いのです。私の経験では若手への「おごりっぷり」の気前が良い人は、大体決断力も包容力もあり、部下に信頼され、出世も早い。

 

一方、ケチな人が、おごらない場面で見せる「ケチ」は、業務上の様々な場所で、結構バレているもの。よくあるのが、複数部門が関わるプロジェクトの予算は「誰が持つのか」という議論になるところで、早々と他の部署に予算を押し付けてくるタイプ。大きな金額であれば、ある程度その部門全体の売上などに響いてくる可能性もあるので理解できますが、少額の経費をことあるごとに他部門に押し付けて、コストカットポイントを細かく稼ごうとする意図が見え透いて、周りは白けてしまいます。

 

会社のお金を無駄遣いしないように気を付けているというよりは、そういうことをする人は根っからの「ケチ」で、取る行動、下す判断が「利己的」であることが見え透くのです。そういうケチな人は、大局に立って思い切ったビジネス判断もあまり期待できないでしょう。なぜなら、ちまちまとしたお金にケチったら、長期的には自分の人望・評価にマイナスの影響を与えるという、「大局的」な見地から見れば明らかなことを見抜けず、目先の損得だけで行動しているから。つまり、大局的かつ長期的に物事を考えるキャパが低いのです。そんな人が、ビジネスの面で大局的な判断が突然できるようになるとも思えません。一事が万事なのです。

 

人を採用する立場になると、面接で数多くの人の「性質」を値踏みすることになりますが、常に外せない資質があります。それは:

 

「良い人」

 

であること。どんなに仕事ができても、チームとして気持ちよく仕事を一緒に進められない人は、やはり採用できない。人の幸せ、他部門の幸せを喜び、誰かの悲しみに対して心から悲しいと思えない人は、平常運転の時は上手くいっても、ここぞというところで何かしらの破綻が生じるものです。

 

とは言え、私だって、嫉妬したり、ケチでちっぽけな人間に成り下がることはよくあります。それは人間が動物だからであり、本能のままに放っておけばひたすらにケチで利己的な存在へと向かってしまう性質をもっているからです。ではどうやって「寛容で、気前の良い人」でいられるのでしょうか?必要なのは感情の筋トレです。こちらについては、また追って改めて掘り下げます。


次回は、どうやって安定的に嫉妬しない「良い人」になれるのか、そのために根本的に必要なことは何か、についてお伝えします。


(この記事は以下の記事につづきます)


この記事は以下の記事のつづきです;

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