楽器を始めたばかりだと、ジャズの曲を演奏することはまだできない。そこで、まずは練習曲を演奏する。「練習曲」とは他人に聞かせるためではなく、技術を身につけることを目的として作られた曲のことだ。「エチュード」と呼ばれることもある。

 

 Lennie Niehaus(レニー・ニーハウス)の「Jazz Conception for Saxophone」という本をお勧めする。ジャズ用に書かれた練習曲集は少なく、ほぼこれ一択と言っていいだろう。CDが付いているので、練習する曲の模範演奏を聞いてから演奏する。メトロノームをつけて、楽に吹けるテンポで吹く。毎日、少しずつテンポを上げながら吹き、できれば模範演奏と同じスピードで吹けるようにする。もしそれが難しければ、間違いなく吹ける最速のテンポまででよい。すべての練習について言えることだが、完璧にやろうとしすぎて次に進まないでいると、進捗が遅くなりすぎて飽きてしまう。1つの曲を一週間から一ヶ月くらい練習したら、次に進むといいだろう。

 

 練習曲を演奏するのにはいくつか理由がある。まずは運指と読譜力のトレーニングだ。もちろん発音の練習にもなる。曲を吹くことで音程を意識できるようにもなる。しかし、何よりも重要なのがフレージングである。「フレージング」とは音の連なりをどう表現するかということだ。音楽は一つ一つの音から構成されているが、それらの音が連なり、抑揚がつくことでそこに意味が加わる。言語を話すときに、音が連なり言葉になり、言葉が連なり文になるのと同じだ。

 

 ジャズにおいて「フレージング」といえば、スイングを身につけることである。ジャズでは8分音符を演奏する際に、リズムが揺れるように演奏し、それをスイングと呼ぶ。ブランコをイメージしてほしい。ブランコは同じスピードで動くのではなく、高いところにあるときは動きが遅く、下に移動するにつれて速くなる。このようにリズムを揺らすことを「スイング」という。スイングを3連符と教えられ、「タッタタッタ」というリズムだと考えている人もいると思うが、これは少し違う。曲のテンポにもよるが、3連符と8分音符の間くらいで、かつ跳ねることはない。「タータタータ」という方が少し近い。

 

 管楽器でスイングを演奏する際には、タンギングを裏拍(8分音符の偶数の拍)で行う。わかりやすくするために、下の楽譜ではタンギングする位置にアクセント・マークを付けた。一音目(ド)は常にタンギングすべきなので、例外である。

 

 

「Jazz Conception for Saxophone」はスイングのフレージングを身につけられるように作曲されているので、模範演奏をしっかり聞きながら練習してほしい。