<刑場初公開>執行、脳裏から消えず 元検事 | 関八州浪人隊★公式ブログ

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死刑執行の場となる東京拘置所の刑場が27日公開されたが、更生を期待されない死刑囚への刑執行はこれまでごく限られた関係者だけで行われ、その最期もベールに包まれたままだ。狭く、無機質な刑場で、死刑囚はその時をどんな心境で迎え、取り巻く人たちはどう見送るのか。「別れの朝」に立ち会った経験を持つ当事者が重い口を開いた。【石川淳一、反田昌平】

 死刑囚が目隠しをされ、両手を縛られる。キリスト教の教誨師(きょうかいし)は声を出し祈り続けた。隣接の執行室へのカーテンが開かれ、死刑囚が導かれる。カーテンが閉じると何秒もたたないうちに「ダン!」という踏み板が開く音が室内を包み、再び静寂が戻った。


 家族も面会に来ない死刑囚は数多い。心情の安定のため面会を許されるのが教誨師だ。月1度、拘置所の一室で向かい合う。大半は息詰まる生活から、ほんの一時解放されたようにしゃべり続ける。


 「その日」の連絡は突然来る。「明日空いていますか」。拘置所の連絡で執行を知る。朝、執行室隣の部屋。扉が開き、死刑囚が青白い顔で入ってくる。「今から執行する」。拘置所長が死刑を宣告した後、テーブルを挟み、ごく短い儀式が行われる。


 「償ってきます」と柔らかな笑顔を向ける人。「一足お先に待ってます」と言う人。大半は静かに受け入れた。教誨師はこれまでの面会に対し「ありがとね」と声を掛け、体に触れて肌のぬくもりを伝える。最期の瞬間を目にすることはない。


 多くの死刑囚に拘置所で洗礼を施す一方、犯した罪から目を背け死を急ぐ死刑囚も多かった。「自分が生きる意味を考えてみてくれ」と諭し続けた。執行から1時間後、納棺された死刑囚と対面した。「終わったね」と声を掛けた。


    ◇


 「納得して立ち会わないといけないと思ったから、判決文は熟読したよ」。08年に執行に立ち会った元検事はそう振り返る。


 執行2日前、次席検事に呼ばれた。「立ち会ってもらいたい」と告げられ、死刑囚の判決文を渡された。


 検察庁では年度初めに検事が抽選で「立ち会い順」を決めていた。その順が回ってきたのだ。「自分が起訴したり、判決を見た犯人ではない。納得して立ち会わないと」。判決文を読み「これなら仕方がない」と感じた。


 午前8時過ぎ、検事、拘置所長、医務官ら数人が立ち会い室で見守った。10メートルほど先に白いカーテンが引かれ、カーテン越しに、教誨師と向き合う死刑囚の横顔のシルエットが見えた。目隠しをされ、検事らの方に向き直った時、カーテンが外され、正面を向いた死刑囚と向き合った。誰も声を上げず、静かに進んだ。


 死刑囚の首に縄が掛かると、その瞬間、床がはずれて体が下へ落ちた。医務官が時間を告げ「執行」と言ってそばに寄り、指で腕の脈を診て聴診器で鼓動を聞く。「何時何分、死亡」。カーテンが開いて1、2分、あっという間の事だった。


 検察庁へ戻ると清めの塩がまかれた。次席らから「お疲れさま」とねぎらいの声がかけられた。


 元検事は「仕事だから特に思うことはない。ただ、執行の場面は今でも、まぶたに映像のようによみがえる」と話した。