姉は、私より6歳年上、なので、幼稚園も小学校もダブったことがない。勿論中学、高校、大学も、仮に私がちゃんと行っていたとしても、ダブル事はない。

姉は、私の知らない我が家のことを色々と知っている。全てを話してくれたわけではないと思うけれど、子供が知らなくていいようなことまで、知ってしまったことは、6年早く生まれてきたのだから、仕様がないというのはなんだか可哀相って、私は思った。

姉と、一度アルバムの整理をしているとき、姉が小学校に入る前のころの写真を、ようするに私が生まれる前の写真を見ながら、私は

『いいね、お姉ちゃんは、子供の頃の写真がいっぱいあって。赤ちゃんのときの写真も、お父さんとお母さんと一緒の写真がいっぱい。由佳の子供のろこの写真は、全然ないもの。お宮参りの写真も、お母さんがいなくて、お父さんとお婆ちゃんとお姉ちゃんだけ。お姉ちゃんの写真は、お母さんもすごく嬉しそうな顔で、お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、お父さんのお爺ちゃんもお婆ちゃんも一緒。幼稚園の入園式の写真も、お姉ちゃんの写真と、由佳の写真とでは、全然違う。由佳の写真は、誰も嬉しそうな顔をしていないし、お姉ちゃん見たいに、遊園地の写真も、動物園の写真も、プールも、海も、山も何もない。幼稚園の行事は、いつもお婆ちゃん、初めてお母さんが来てくれたのは、幼稚園の卒園式、小学校の入学式は、お母さん、途中で帰ったんだよ。ああ、そうだ、この時、お爺ちゃんとお婆ちゃんも来たの、お婆ちゃんはお母さんに付いて、先に家に帰って来て、由佳はお爺ちゃんと二人で帰ってきたの。それで、本当は、この日、みんなでお祝いをしようって言っていたのに、結局なにもなかった。お姉ちゃん、由佳って、本当にお姉ちゃんの妹なの、本当にここの家の子なの』って、聞くと、姉は、すごく優しく、悲しい顔で

『由佳は、間違いなく、私の妹だよ。写真は、由佳が次女だから、きっとそうよ。写真は、お姉ちゃんが大きくなったら、なんとかしてあげるから、もう少し待って』って言った。

私の知る限りの姉は、父の言うことにも、母の言うことにも、一切逆らわない素直な子、確かに逆らわずに、何でも『はい、はい』って、言うことを聞いていたんだけれど、姉は、いつも母のことを気にしていた、あっ、母の目を気にしていたんだと思う。そして、私が小さい時、姉はいつも生傷がたえなかったように記憶している。姉は、私と同じで目立たない子、そして決しておてんばな子ではなかったのに、生傷がたえなかった。一度だけ、記憶に残っているの、母が鬼のような形相で、姉のことを打っているのを見てしまった。初め、姉が涙を流して泣いているんだけれど、声をあげないで歯を食いしばっているように見えた。一生懸命に耐えている様で、私、その時、確か3歳か4歳くらいで、なんとか母を止めなくてはって思ったんだけれど、母の顔があまりにも怖くて、祖父母を呼びに行ったように記憶している。

多分、姉は母から、虐待を受けていたんだと思う。でも、姉は、そのことを誰にも、話そうとしていなかったと思う。姉は、私の知らないとこで、よく虐待されていたんだと思う、でも、姉は、母のことが大好きだったから、自分だけの秘密にしていたんだと思う。私が、祖父母を呼びに行こうとした時、私の背中に姉の声が

『由佳、行っちゃ駄目』って、姉は、私が祖父母を呼びに行くって分ったんだと思う。

そして、何故か分らないけれど、母の虐待は、姉にだけだった。


       つづく