みんなに見送られての、初めての一人旅の開始です。
おばさんたちが、汽車の中で食べなさいって言って、お弁当やお菓子やお茶を買って持たせてくれた。ガンちゃんとたっちゃんが、暇つぶしにって、3、4冊本を渡された、で、その本を渡される時に、二人から
『中に、手紙がはさんであるから、落すなよ』って、
『うん、ありがとう』って、そのあとに小さな声で
『孝ちゃんのこと・・・』って言うと、二人とも
『分かっている。頑張れよ。帰ってくる時は、東京土産頼むぞ』って、
おばさんたちからは
『体に気をつけるのよ。お爺ちゃんのことは、心配しなくていいから。時々、電話ちょうだいね』って、
そうこうしていると、発車時刻になって、別れを惜しんでいるこちらの感情とは関係なく、汽車は動き出した。
汽車の窓を開けて、身を乗り出しながら手を振っていたけれど、もう、周りの景色以外に何も見えなくなってしまった。おばさんたちも、ガンちゃんもたっちゃんも、もう、見えない。でも、しばらくの間、さつきちゃんは身を乗り出したまま、今、汽車が通ってきた線路の先を、じっと見ていた。
そうしたら、突然、ちょこちょこって、小さな女の子ガ、さつきちゃんの座席に来て
『おねえちゃん、あのね、窓開いていると、寒いんだよ』って、言われた。
その子に言われて、やっと我に返った、
『あっ、ごめんね。気が付かなくて、すぐに閉めるね』って言って、窓を閉めた。
『おねえちゃん、みんなとお別れしたの』って、その子が聞いてきた
『そう、しばらくの間、みんなとお別れなの』って言うと
『これ、あげるから、泣かないで』って、その子は、さつきちゃんに、ミルキーを一つくれた。
『ありがとう、おねえちゃん、泣いているように見えちゃった。恥ずかしいな』
『大丈夫、お母さんには、言わないから』って、その子が言い終わる直後に
『なにしているの、早く来なさい』って、その子の母親の声が聞こえた。その子はさつきちゃんに『バイバイ』と、さつきちゃんもその子に『バイバイ』と。
これで、完璧に一人になってしまって、さつきちゃんは思った、長い人生の内のたった半年間なのに、そして、その半年間の研修が終ったら、ここに帰ってくるのに、なんだかもうここには、さつきちゃんのいる場所が、なくなってしまったような気がその時した。泣かないでって言われて、もらったミルキーの味が、頬をつたって口の中に入ってきた涙で、しょっぱく感じた。
つづく