【近未来ショートショート】第8話 2030年の少子化対策
冥王星水瓶座時代真っ只中の2030年。
我が日本政府はついに、究極の少子化対策に乗り出した。
2030年の究極の少子化対策が「コンバスト制度」である。
コンバスト制度とは、政府が用意した北日本(北海道・青森県・秋田県・山形県の4道県)の施設において、子どもたちを無料で引き受け、国が子どもたちを育てていくという制度のことだ。
日本の少子化の原因は経済苦にあるので、子どもを産み育てることがリスクになっていた。
そのリスクを国そのものが引き受けようというのがコンバスト制度なのだ。
コンバスト制度では、妊娠すれば、結婚していようと未婚であろうと、国とコンバスト契約を結ぶことによって、出産の費用も国が負担し、コンバスト契約によって、その後その子どもは国が育てていくことになるので、出産者は経済的負担を一切負わなくてすむのだ。
国に自分の子どもを完全に預けることになるコンバスト制度だが、子どもが預けられた施設であるジョイには親はいつでも会いにいくことができ、育ては国がやるけれど、実の親として子どもの成長を見守れるのだ。
このコンバスト制度にはもちろん批判も多かった。
「子どもの人権侵害だ」という批判で、国の施設ジョイで共同生活を強いられる子どもに人権はあるのか、という批判だ。
その批判はもっともで、政府もその批判を否定することはできず、批判は批判で受け入れるという姿勢は見せている。
どれだけ批判されようと、深刻な少子化をなんとかするために国もなりふり構っていられないのだ。
コンバスト制度を実施する施設を北海道、青森県、秋田県、山形県の4道県にしたのは、これらの地域の人口減がすごい状況なので、北の人口減をなんとかするという狙いもあるのだ。
コンバスト制度を実施する施設ジョイをこれら4道県にどんどん作っていって、子どもを増産させていき、まず北からの人口増加を実現させようとする日本政府。
このコンバスト制度が導入されてからは、20代・30代の女性たちがガンガン出産し始めだした。
その中には結婚してない女性もいるし、16歳の女性もいるし、今まで経済苦から出産できない女性たちがガンガン出産し始めていったのだ。
施設ジョイには、60代以上の現役リタイヤして余裕ある人たちがボランティアスタッフで働いており、その数もかなり多く、このボランティアスタッフのおかげでコンバスト制度も成り立ってるとも言える。
世間からうざがられる老人たちが、施設ジョイではありがたがられる存在として、第二の人生を歩んでいたのだ。
コンバスト制度の一番の不安は子どもたちの成長なのだが、その心配は一切なく、子どもたちは順調に育っていった。
コンバスト制度は成功していき、日本の少子化も止まり、出生率も増加していった。
コンバスト制度によって日本は活力を取り戻していった。
また、コンバスト制度によって国が第二の親となった子どもたちは、愛国精神が育っていき、みんな愛国者になっていくという副作用もあった。
そしてコンバスト制度によって育っていった子どもたちが社会で活躍しだした2070年に、日本はついに憲法を改正し、正式な軍隊も持ち、戦争ができる国になったのだ。
敗戦した1945年から125年後についに日本は憲法を改正し、普通の国になったのだ。
それもこれもコンバスト制度によって育った多くの子どもたちが愛国心に目覚め、この子たちが世の中を変えていったのだ。
2070年に戦争ができる国になった日本。
それもこれもコンバスト制度のおかげだった。
戦争ができる国になった日本がその後どうなっていったのか?
その先のことは読者の想像にまかせよう。