ラタ・ブランカ 『ラタ・ブランカ』(1988) | 夢のつづき

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昔ベーシストで現在サックス吹き
友だちはスズメとカエルさんだけ (・o・)

 
1月18日(木)雨くもり


たまにはガッツリとしたディスクレビューでも致しましょうか。
と言っても、別のブログに掲載したものをそのまま流用しております。




CDラタ・ブランカ 『ラタ・ブランカ』



1. ラ・ミスマ・ムヘール(セイム・ウーマン)  La misma mujer
2. ソロ・パラ・アマールテ(ただ愛のために)  Sólo para amarte
3. ヘンテ・デル・スール(南の人々)  Gente del sur
4. ロンペ・エル・エチソ(ブレイク・ザ・カース)  Rompe el hechizo
5. エル・スエーニョ・デ・ラ・ヒターナ(ジプシー女の夢)  El sueño de la gitana
6. チコ・カジェヘーロ(ストリート・キッズ)  Chico callejero
7. プレルディオ・オブセシーヴォ(強迫のプレリュード)  Preludio obsesivo
8. エル・ウルティモ・アターケ(ラスト・アタック)  El último ataque
9. オトーニョ・メディエヴァル(中世の秋)  Otoño medieval


Walter Giardino(g)
Sergio Berdichevsky(g)
Gustavo Rowek(ds)
Guillermo Sánchez(b)
Saúl Blanch(vo)



1988年リリースの、“アルゼンチンのレインボー”ことラタ・ブランカのファースト・アルバムです。日本デビュー盤となったのは1991年のサード・アルバム『虹の戦士(原題:Guerrero del Arco Iris)』で、約3年遅れの1994年7月に本邦リリース。翌8月にファーストである本作(原題:Rata Blanca)と、1990年のセカンド『魔術師と薔薇の伝説(原題:Magos, Espadas y Rosas)』がリリースされました。

国内盤リリースの1994年当時といえば、まだインターネットも普及していない時代。今と違い全く情報が入って来なくて、南米のメタル・バンドといえばブラジルのセパルトュラ、ヴァイパー、アングラぐらい。他の南米の国のメタル・シーンについては全く未知の世界でした。ことアルゼンチンの音楽となると思い浮かぶのはタンゴとフォルクローレぐらいで、メタル・バンドが存在することすら日本では知られていませんでした。だからこのラタ・ブランカの日本デビューは当時の職場(CD店)の同僚内でも非常に話題になったことを思い出します。

ラタ・ブランカの結成は1986年。中心人物となるのが、ギタリストでほとんどの作曲を手掛けるヴァルテル・ヒアルディーノ。彼ともう一人のギタリストに、ヴォーカル、ベース、ドラムの5人編成でデビュー盤である本作を1988年リリース。因みにWikipediaの本アルバムの頁ではキーボード奏者の名前も載ってますが、本CDのジャケット内のクレジットではキーボードの記載はなく5人編成になっています。

1曲目から「銀嶺の覇者」みたいなリフで始まり、まさにアルゼンチンのレインボー! でも2曲目以降を聴き進めていくと、ディオ期ではなくジョー・リン・ターナー期のレインボーに似ていることが分かります。J.L.ターナー期レインボーから再結成(第5期)ディープ・パープルにそっくりです。70年代ではなく80年代の香りを湛えたサウンドで、私ら世代にはとても和めます。イングヴェイ~ネオクラシカルの要素もありますが、レインボー色が濃くて私にはあまりネオクラには聴こえませんけどね。

彼らの歌を聴くと、すぐに違和感を覚えると思います。そう、彼らは母国語であるスペイン語で歌っています。ブラジルのメタル・バンドが北欧のバンドなどと同様にワールドワイドを視野に入れて英語で歌っている(因みにブラジルの公用語はポルトガル語)のとは対照的に、どうやら母国語での歌唱にこだわりを持っているようです。確かにスペイン語による巻き舌とコブシの効いた歌唱がメロディーに乗ると、英語歌唱にはない説得力、存在感があります。これぞ辺境メタル・ファンが大好物とするところです。

次作セカンドになるとヴォーカリストが代わり、更にキーボード奏者も加わって6人編成となってよりゴージャズな音になり、様式美メタル、というかレインボー風サウンドに磨きがかかります。本作ファーストはまだプロダクションも甘く音質も良くはありませんが(セカンドも音質はあまり良くないですが…)この時すでに彼ら、いや中心人物ヴァルテル・ヒアルディーノが目指す音楽性がはっきりと具現化されています。

ヒアルディーノのギター・プレイはリッチー・ブラックモアのスタイルを基にイングヴェイ以降の80年代のテクニックを取り入れた弾きまくりで、この手の音楽が好きな人は要チェックでしょう。ややチープながらも山頂にそびえる城のジャケットアートも含め、これぞ様式美メタル(死語?)と言うべき作品です。でもお薦めするなら、より洗練されたセカンドの方でしょうか。サードも悪くありませんが、セカンドの延長線上でインパクトに欠けるように感じます。セカンド、ファースト、サードの順で推薦します。

サード・アルバム以降ですが、1993年にミニ・アルバム(EP)『El Libro Oculto(神秘の大系)』、ヴォーカリストの交代を経て1994年には4枚目のフル・アルバム『Entre el Cielo y el Infierno』をリリース。音源を所有していないのでYouTubeで試聴してみましたが、どうやら次第に様式美メタルから離れていきアメリカナイズされたサウンドに変貌しているようです。

バンドは1997年に一旦解散、2000年に復活して現在も活動中とのこと。サウンドは様式美もしくはレインボー風スタイルを取り戻しつつあるようで、2009年にはドゥギー・ホワイト(ex.イングヴェイ・マルムスティーン、ex.レインボー)が参加した英語歌唱アルバムをリリースし、それに伴うアルゼンチン・ツアーにもドゥギーは参加。ラタ・ブランカ/ヒアルディーノの楽曲に加えレインボーの曲も披露し、ツアーは大盛況だったようです。

このバンド、まだまだチェックが必要そうですね。