寄港地-マルティノンのイベール | geezenstacの森

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寄港地-マルティノンのイベール

 

曲目/ジャック・イベール

1.祝典序曲 15:32

2.交響組曲「寄港地」 

第1曲 : ローマ―パレルモ    6:51

第2曲 : チュニス―ネフタ  2:45

Oboe – P. Taillefer*

第3曲 : ヴァレンシア    5:40

3.架空の愛へのトロピスム 24:29

第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ    

第2楽章 メノ・レント    

第3楽章 アンダンテ    

第4楽章 アレグロ    

第5楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ    

第6楽章 ラルゲット―アンダンテ・トランクィーロ    

第7楽章 アニマートー―アンダンテ・トランクィーロ    

第8楽章 ステッソ・テンポ    

第9楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ

 

指揮/ジャン・マルティノン

演奏/フランス国立放送管弦楽団

 

録音:1974/10/28-30、11/07 サル・ワグラム パリ

P:ルネ・シャラン

E:ポール・ヴァヴシュア

 

東芝EMI  EAC-80204

 

 

  皇紀2600年記念式典のための「祝典序曲」ですが、このマルティノン盤が世界初録音となったものです。良くも悪くも捉えどころのないイベールらしい音楽が初っ端から展開され、最後は一応盛り上がったりもしますが、全体として祝典的な雰囲気はどこへ行ってしまったのだろうという気持ちにさせられる曲です。ということで、曲は1940年12月に東京歌舞伎座における演奏会で、山田耕筰の指揮により初演されています。現在の改訂版は、1942年にコンセルヴァトワールの演奏会で、シャルル・ミュンシュの指揮により初演されています。 

 

 

 まあ、イベールといえば組曲「寄港地」でこのアルバムでもアルバムの帯にデカデカと書かれています。レコード会社もイベールで一枚作るなら是非にも組み込みたい選曲なのでしょうなぁ。でもマルティノンが取り上げたかったのは他の二曲でした。収録順にもそれが表れています。「寄港地」がイベール32歳の作品で 彼が世に知られる契機となったものなのに対して ”祝典序曲”を書いた時イベールは50歳であり、その円熟は曲の端々に現れています。そして、何よりもどの曲でも洗練の極みで、第1曲のフルートのアラン・マリオンや第2曲でのポール・タイレファーのオーボエをはじめとする管楽器の名技を楽しむ境地は、フランスの名指揮者とフランスの名門オケとの組合せでしか 味わえない至福の演奏と言えるでしょう。この録音からときを経ずしてマルティノンは亡くなっています。このコンビでの録音をもっと残して欲しかったものです。

 

 

  珍曲「架空の愛へのトロピズム」でしょう。もちろん世界初録音です。何しろ全曲の楽譜が出版されたのも1974年ということで、公開初演される前にこの録音が収録されています。つまりは、マルティのんはこの曲を世に出したいがためにこのレコードを製作したとも言えます。曲は9楽章からなるディヴェルメントのような楽曲で、いろいろな音楽の要素を取り込んでいます。正直色々な要素が25分程度の曲に詰め込まれすぎていて、ごった煮のようになってしまっていて曲に統一感がないようにも感じられます。この曲の第1曲だけは1964年に出版され、「ボストン市民」というタイトルがついていたそうな。これはイベール67歳の作品で最晩年の一曲で、統一感がないのがイベールの特徴の一つともいえるので、仕方ないと言えば仕方ないのでしょうなぁ。でも、この作品オネゲルはべた褒めだったそうです。という事で、下記のような写真が残されています。このような楽曲ですが、自身も作曲家に名を連ねていましたから、マルティノンは50年以上も前に初演を前にして果敢に録音してフランス音楽には多大な貢献をしていたんですなぁ。今ではこの曲の録音も増えてきましたから、録音したマルティノンには先見の明があったといえるでしょう。

 

 そうそう、このアルバムはもともと4チャンネル録音されています。ただ、日本では普通のステレオ録音としてしか発売されていません。

 

ジャケットに掲載されている写真

 

 

 

 

イベールを初めて知った録音

 
 

 

 下はイベールのフルート協奏曲なども含めた2枚組になっています。