映画はチームワークで作るものを考えさせられた「みをつくし料理帖」
日曜日のド早朝、なんばパークスシネマまで「みをつくし料理帖」を鑑賞。
70年代後半から90年代にかけて、停滞気味の日本映画界に刺激的な作品を放ち続けた角川春樹が、
2009年公開の「笑う警官」以来にメガホンをとった監督最新作にして、最後の監督作。
角川春樹監督が惚れ込んだ髙田郁の同名時代小説シリーズ(角川春樹事務所・時代小説文庫)を原作に、
松本穂香が、健気に生きる女料理人を演じ、脇を固めるキャストも豪華で、
角川春樹監督ゆかりの面々も多く揃えました。
この時代劇映画を見てね、日本映画の「粋」を感じさせてくれました。
享和二年、大坂。
8歳の澪と野江は仲のいい幼馴染だったが、大洪水に襲われ離れ離れとなり、
澪は両親を失い孤児になったが、偶然通りかかった天満一兆庵の女将・芳(若村麻由美)に拾われる。
10年後の江戸・神田。
澪(松本穂香)は、種市(石坂浩二)が営む蕎麦屋「つる家」で女料理人として働くが、
大坂出身の澪は、江戸の味という壁にぶち当たっていた。
そんな澪を見て、吉原にも顔を出している町医者の永田源斉(小関裕太)は、
吉原で行われる祭りに澪を連れだした。
吉原の祭りで食べた心太が酢醤油で違和感を感じた澪は、
酢醤油でいただく江戸流と、黒蜜でいただく上方流をかけ合わせた心太を売りだし評判を得る。
澪の姿勢を見た種市は、澪に「つる家」を継いでほしいと打ち明ける。
種市の気持ちに応えるべく、澪は今だ”御寮さん”と慕う芳の協力を得ながら、
理想の出汁を生みだし、その出汁を使った「トロトロ茶わん蒸し」を売りだしたところ、
その味は江戸じゅうを魅了し、店はいまだかつてない活気を見せる。
そんな中、澪のもとに遊郭・扇谷の料理番・又次(中村獅童)から、
あるお方のために、評判の茶わん蒸しを求めてきた。
そのお方こそが、幻の花魁・あさひ太夫として吉原に生きる、
生き別れの幼馴染・野江(奈緒)だった。
この映画を見て思ったが、角川春樹がメガホンをとった映画の共通項として、
映画はチームワークで作るものだと感じ取ったわ。
1982年公開の角川春樹の最初の監督作であるオートバイレース映画「汚れた英雄」は、
脚本は出来た、草刈正雄に主演が決まった、だが、誰も監督を引き受けてくれなかった中で、
角川春樹自らメガホンをとることとなり、どうやったら美しく撮るかに必死で、
撮影監督の仙元誠三と二人三脚で創意工夫を重ねていたし、
カースタントチームとの連携も事欠かさなかった。
1990年公開の「天と地と」は、カナダのインディアン居住区で撮った川中島の戦いが過剰過ぎたが、
海音寺潮五郎の代表作をよりわかりやすく、より美しくするために、
鎌田敏夫、吉原勲と共同で脚本を書き、前田米造のカメラワークと、鈴木晄の編集技術に助けられ、
そして、小室哲哉が手掛けた劇伴が盛り上げてくれたんだよね。
この監督キャリア初の人情物「みをつくし料理帖」も、江良至、松井香奈と共に脚本を手掛け、
キャストの魅力を引き出そうと、其々の裏方の部門との連携を密にし、
服部幸應の料理監修も作品を彩ってくれた。
こういったチームワークが、日本映画の「粋」を作りだしているんだよね。