北斗ある殺人者の回心 
石田衣良

被虐待児が里子に引き取られた先ではじめて普通の幸せな生活を知るも、わずか3年で里親が末期癌。高額な医療詐欺にすがって財産つぎこむも里親は亡くなり、復讐のため殺人を犯してしまう20歳の少年の話。


前半の実父母からの虐待パートはちょっとメンタル削られる…😰
そのあとの里親さんとの幸せな生活から一気に地獄へ叩き落とされるくだりも悲しすぎて読んでいられない。
やっと見つけた優しい里親ががんで衰弱していってしまうあたりの北斗くんの不安感や絶望感は読んでいて重すぎて、本閉じて数ヶ月放置してしまいました。
幼少期に親を失くしたことのある人や、身近な家族がゆっくり死んでいく辛さを知っている人は辛くて読めないかも。そのくらいリアルに書かれていました。

そこで「がんが治る!」と宣伝している胡散臭い高額な健康食品に将来のための預金を注ぎ込んでしまい、里親さんを悲しませてしまうのですが…

普通の心理なら「うさんくさ!」「そんなの飲んで治るなら世の中から癌患者いなくなるわ!」と思うインチキ商品も、大事な家族が死ぬかもしれないと思うとすがってしまうんですよね。
しかもまだ無知で社会経験も無い未成年に近い若者だし、保護者を失う恐怖で正常な判断なんてできない。お金の価値もまだよくわかっていないし、簡単に騙されるんですよね。恥ずかしながら同じような経験あるので(里親ではなく実親ですが)、後悔が甦り胸に刺さりすぎて読むの辛かった。。
その辺の北斗くんの追い詰められ方や焦った心理状態がとてもリアルに書かれています。

前半の虐待パートから中盤の里親さん看取りまでが重すぎて、後半パートの裁判中の北斗くんの気持ちの変化とか全く頭に入らず。

殺された詐欺会社職員の遺族夫が声高々に死刑を求めるのは「詐欺会社で働いて人を不幸に落としていたことは棚に上げて?」とイラっとしたことは印象に残っている。

結末は少し救いのある結果が出ていたけど、個人的には刑重すぎ北斗くん不幸すぎでバッドエンド。

里親制度や育児放棄や虐待のことがよくわかるので、読んでよかったです。

人の不幸に漬け込んで騙す悪徳業者は本当に絶滅してほしいですね。


ママ活小説「禁猟区」からのこれだったので、石田衣良さんの振り幅広すぎ!