~徒然趣向~-DACK's MARKET

『DACK's MARKET/Romancrew』

01. First Song
02. Dream
03. スープパスタ feat. KREVA
04. F.R.E.E.D.O.M
05. We Gamblin' feat. CHIEF ROKKA
06. Sha-Na Means...
07. ロマンティック is Dead
08. ロマンより愛をこめて feat. コヤマシュウ
09. Next Movement
10. Bush Running
11. エレベーターアクション feat. THE FLEX UNITE
12. Love Comes & Goes
13. 虹の交差点


こないだ偶然にも難波のタワレコで発見したRomancrewの作品。
廃盤になってもう手に入らない状況がずっと続いてて、「死ぬまで聴けないんだろうなぁ」なんて思ってただけに、見つけた瞬間に即買いでした。

難波店の在庫状況にメッチャ感謝したんですが、先月に再発売されていたようで。
何か拍子抜けした感じでしたが、それでもチャンスにめぐり合えたことに感謝です。今回はこの『DACK's MARKET』しか見つけられなかったのですが、調べると、1stの『The Beginning』も再発売されているようで。これは近々購入しなければ。

さて、作品内容。

やはり、さすがのひとことです。彼らは、売れる売れないは別にして、一切ブレない作品作りに好感が持てるグループでしたが、それは過去作品から一貫されていたようで、KREVAなどを客演に迎えた今作でも、彼らの美学が追求されているように感じます。

使い尽くされた感のあるJazzy HIPHOPという言葉ですが、やはり彼らの根底にあるのはその土壌な訳で、その分野に関しては、一歩先を歩んでいるように思います。それは、メインのトラックメイカーでありながらラップも担当するALI-KICKの知見・知識の深さや多さに起因するものでもあると思うのですが。

世間で取り沙汰されるJazzy HIPHOPのイメージってどのようなものなのでしょうか?ピアノの美しい旋律に流麗なラップが乗ったものをそれとするならば、そのイメージは非常に局部的な捉えられ方であり、全体を指すには曖昧すぎるイメージだと思います。

ドラムパターンであったり、サンプリングソースであったり、その他のヒップホップ同様、Jazzy HIPHOPにだってクリーンな部分もあれば、ダーティーな部分もあると思うのです。そこには流麗なラップのみならず、キャラの立った個性的なラップも存在していいはずだし、存在しなければなりません。

そのような意味において、Romancrewの追い続ける美学がJazzy HIPHOPであるとするならば、彼らはその分野において地位を確立しているし、確実なプロップスを得ていると言えるでしょう。
KREVAという一般的知名度を兼ね備えたラッパーを起用しても、CHIEF ROKKAやTHE FLEX UNITEといった異なるベクトルを持ったラッパーと共演しても、別ジャンルのコヤマシュウを迎えても、一貫したスタイルを感じさせてくれるような、そんな力強い作品です。

この作品も含め、Romancrewの作品を耳にしていて感じる強みは、「決まったトラックメイカーの存在」です。もちろん、他のプロデューサーを起用することもありますが、メインとなる1人(彼らの場合はALI-KICK)がいることで、アルバム全体の統制が整うと思うのです。
もちろん、様々なプロデューサーと共に彩り鮮やかに作り上げられた作品も良いですが、彼らの音楽性・スタイルを自分なりに咀嚼したときにベストだと感じたのは、「アルバム1枚を通して聴ける」ということでした。その点において、アルバムに一貫性を持たせる効果が発揮されていると思います。

そしてラップ陣。
『ロマンのテーマ』のときにも触れたかもしれませんが、三者三様でキャラが立っていて、1曲の中ですらせめぎ合う掛け合いが聴いていてスリリングです。
リリックの内容に関しては、詩的でオシャレさが持ち味の将絢のそれがまだ成熟していない様子もありますが、それはそれで味わい深かったりします。エムラスタに関しては、ファンキーなフロウも相まって、横文字が似合う印象だし、ALI-KICKはこの頃から安定感がものすごいです。

このように個性派揃いだから、客演は少なくてもアルバム1枚くらいは作り上げてしまうのでしょうけど、今作の客演がまた、最低限であるものの最大の効果をもたらせているように感じます。
KREVAとコヤマシュウ以外は、CHIEF ROKKA(韻踏合組合)、THE FLEX UNITEと、大阪を基盤に活動していた彼らならではの布陣ですが、最初にクレジットを見ている段階では、正直違和感もありました。それは、先述したとおり、ラップスタイルのベクトルが異なるから。
ただ、それがHIPHOPの面白いところで、実際に聴いてみると、どちらかが食われることなく、うまく共存しているんです。CHIEF ROKKAについてはベテラン故の安定感もありますが、THE FLEX UNITEについては、若手故の勢いが上手く反応を起こしています。

素晴らしい名盤ですね。
このように市場の狭さや小ささを理由に埋もれてしまった作品がまだまだあると思うと悲しいですね。
日の目を見る作品が1つでも増えればと願って止みません。

◆虹の交差点


◆ロマンより愛をこめて feat. コヤマシュウ(Scoobie Do)


◆ロマンクルーのテーマ(最新作『ロマンのテーマ』収録)