~徒然趣向~-Diggin' Anarchy

『Diggin' Anarchy/ANARCHY』

01. Intro
02. Side B
03. K.I.N.G.
04. Broken Memory feat. RUDEBWOY FACE
05. Capture The Flag feat. RYUZO, CHOZEN LEE
06. Grand Theft Auto
07. Devilman feat. Rino Latina Ⅱ, DABO
08. Magic Hour feat. PUSHIM
09. Go Johnny Go! feat. Naughty
10. 6 Feet Deep feat. OZROSAURUS
11. Playing In The Ghetto

連投連投!笑

言わずと知れた京都/向島のANARCHYによる3rdアルバム。
かなり新作が待たれたアーティストではないでしょうか?

上の意見にはかなり個人的な趣向が含まれていますが、それを差し引いても、昨今のANARCHYへの期待は同業者/リスナー問わず、非常に大きいと思います。
数年前には、その壮絶な半生を描いた自伝『痛みの作文』も話題になりましたが、1st『ROB THE WORLD』、2nd『Dream and Drama』とも、ハードコアな内容でありながら、いずれも高い評価を得た作品のリリースが続いていただけに、今作への周囲の期待も相当だったと予想できます。

加えて、今作品はタイトルからも想像できるように、あの"King Of Diggin'"ことMUROが全曲プロデュースという、それだけでもセンセーショナルなアルバムです。

MUROの話を出してしまったので、まずはサウンド面から。
やっぱりイィ仕事しますよね。ベテラン故の安定感というか、ラップを置き去りにしない印象を受けました。そのラップスタイルの特性上、ANARCHYのラップは、ともすれば前のめりで、トラックをかき消してしまうほどの勢いがありますが、MUROの用意したトラックは、音の1つ1つに無駄がなく、かといって、決して主張しすぎない謙虚さがありました。

にしても、ANARCHYって、派手なサウンドとの相性もいいですが、ピアノなんかを利用したJAZZ風味なトラックとも相性がいいなという印象が大きかったです。

今回の楽曲の歌詞も、基本的に通ったANARCHYの筋から大きなブレはありません。
客演が今までより豪華な気がしますが、『24 HOUR KARATE SCHOOL』などの影響もちらほら。

『Intro』に続く『Side B』からいきなりぶっ飛ばされます。多くのアーティストが使ってきた「ラジオであの曲かけてくれ」というフレーズすら新鮮さを感じさせてくれますし、続く『K.I.N.G.』では日本ヒップホップにおけるレジェンド(ブッダブランド、ZEEBRAなど)の名前の羅列とともに、ANARCHYのラップ人生が語られます。

個人的に気に入ったのは『Broken Memory』、『Capture The Flag』。
前者はレゲエ界からRUDEBWOY FACEを迎えた切ない幼少期の歌です。今までもテーマとしては取り上げられた内容ではありますが、ピアノ基調のトラック上で吼えられると、また違った風味が出ていますし、もともとROMERO SPなどでの活動でヒップホップとも繋がりの深かったRUDEBWOY FACEも自身の活動に裏打ちされた、確かな存在感を残しています。

後者『Capture The Flag』に関しては、やはりCHOZEN LEE(FIRE BALL)の働きがピカイチです。もうここまで来ると、ただのCHOZEN LEE信者かもしれませんが、彼の才能は底知れないものがあるように思います。非常に柔軟。良い言い方ではないですが、彼をHOOKで起用すれば、たいていの曲は・・・なんて思わせてしまうから凄まじい。
「I cry, cry for the fallen soldiers」というフレーズが耳から離れません。夢半ばで途絶えた者達の分まで這い上がる。RYUZOのハードコア感も相まってとっても男臭い楽曲に。

『Devilman』ではベテラン2人を迎えての楽曲ですが、RINOの淡々と言葉をつなぐラップは相変わらずですが、その言葉選びにはインテリジェンスを感じますし、DABOもそのフロウ巧者ぶりを発揮し手居ます。

続く『Magic Hour』ではPUSHIMを迎えてのチル曲。一気に雰囲気が変わります。最近で言えばSIMONもそうですが、PUSHIMのヒップホップ楽曲への客演は、本当に鮮やかな色を与えてくれます。彼女のキャリアに裏打ちされたものであることは間違いありませんが、ハードなラッパーであるほどその相性が良いのも不思議です。
前作で客演していたTinaも然りですが、ANARCHYとの相性の良さに驚くばかりです。

Naughtyとの小節をつないでいく『Go Johnny Go!』も構成上、新境地と感じられますし、MACCHOではなく、DJ SN-Zも含めたOZROSAURUSとして客演を迎えた『6 FEET DEEP』も太刀打ち出来ぬ勢いで圧倒してくれます。

ほぼ全曲レビューになってしまいましたが、MUROとの相性、適材適所な客演などを含め、全体的な指揮取りが確実に成されていると感じる作品で、長く楽しめるアルバムだと思います。
決してハードコアな描写だけに終始せず、パーソナルな部分でも内面をえぐり出すのは、ANARCHYの持ち味の1つですが、その点においても輪をかけたスキルアップが感じられる作品です。

MUROインタビュー(KINGらしからぬ腰の低さ!笑)


懐かしの1曲『Growth』(2006)


『Magic Hour feat. PUSHIM]』