$~徒然趣向~-DIS IS IT

『DIS IS IT/キリコ』

01. DJ CO-MA VS KIRIKO
02. DIS IS IT
03. 90's FLAVOR
04. 極悪JAZZ feat. 鬼
05. 訣別FUNK
06. レトロなお家のレトロなパスタ feat. toto
07. ENTER MY DREAM
08. 恐れる事は無かれ
09. UNDERGROUND CONVERSATION
feat. ARI1010, KAIGEN, CANDLE, 華乱, MEISO, Hisomi-TNP, GEBO
10. QUARITY CONTROL
11. 哀愁GRIME
12. プチャヘンザ!
13. OFFICE WORKER
14. 絶滅B-BOY
15. SLOW JAZZ


時間があるって素晴らしいです。
毎日これほどの時間があればなぁ。。

さて、戯れ言はこの程度にしておいて、作品の紹介です。

先のDinary Delta Forceが両手放しでオススメできる作品ならば、今回のキリコは非常に聞き手を選んでしまう作品ということができます。

そもそも、初期の作品から歯に衣着せぬ辛らつな物言いで話題になったという印象が強く、作品を重ねるほどにその部分が尖ってきているような気がするのです。

ただ、同意・反対は別として、キングギドラの『公開処刑』が日本語ラップにおける黒歴史として扱われる昨今の状況を考えれば、実名を出したうえでのディスを作品として堂々とリリースしているのは、キリコくらいのものですし、「ディスもHIPHOP、とりわけラップ・ミュージックの一文化」と捉えれば、狭義におけるHIPHOPに対して、彼ほど真摯なアーティストはいない、とも言えてしまう気がするのです。

そのディスに関しては、2曲目のタイトル曲『DIS IS IT』から爆発しています。

「COMA-CHIはただの女ラッパーになっちまったぁ がっかりだ
 R&Bはミリヤに任せたらどうだ?
 外見でHIPHOPをするわけじゃないことはわかっているさ
 だけどギャル男みたいな髪型をしたラッパーは必ずワックだ
 童子-Tに呆れたのは俺だけじゃぁないだろう」

加藤ミリヤに関してはディスなのか皮肉なのか分かりづらい部分はありますが。。

これほどまでに素っ裸なリリックをさらしておき、その内容も常に物議をかもしてきながら、なかなか日の目を見ないのは、実際、「彼のフロウを受け入れられるかどうか」というところが非常に大きいと思います。

彼のラップからはHIPHOP特有のマッチョイズムは感じられませんし、どちらかといえばか細い声質で、歌詞カードが無ければ聞き逃してしまう箇所が相当あるように思います。
最後に動画も貼りますが、この1曲だけでも、賛否両論で溢れかえると思うのです。
ともすれば、「この人、何がいいの?こんなんでよく他の人のことディスれるね」なんて。。

確かに、僕自身、全ての曲が好きかというとそうではありませんし、クレジットだけを見れば本アルバムのハイライトになっていた可能性すら感じさせる、SUIKAからtotoを迎えた『レトロなお家のレトロなパスタ』なんかは、はっきり言って受け入れることが出来ません。

ただ一方で、不治の病に冒された患者との短い交流を言葉多めに綴る『ENTER MY GREAM』や、注目を浴びつつあるアーティストが一同に介した『UNDERGROUND CONVERSATION』、音楽と情景、当時の経験の重なり合いを描いた『SLOW JAZZ』なんかは、一聴の価値はあります。

彼のラップを支えるプロデューサー陣も完璧な布陣で、今をときめくMichitaやFragment、さらにはDJ Oldfashionなどが脇をガッチリ支えています。
彼らのJazzyな雰囲気を感じさせる優しいトラックは、キリコの攻撃的な側面にはそぐわない部分もあるかもしれません。ただ、上に挙げたような細かい描写を含んだ楽曲を包み込むという意味では、無くてはならない存在なのではないでしょうか。安易な表現ですが。


『DIS IS IT』ミュージック・ビデオ