~徒然趣向~-B.M.W.

『B.M.W. -Baby Mario World- vol.1/DABO』

01. My Word feat. SIMON
02. 2 Funky C.E.O.(前人未到) feat. BIG-O, Kayzabro
03. 自由帳 feat. 晋平太
04. World Is Yours feat. ZEEBRA
05. Over The 修羅場 feat. B.D, BES, KGE
06. 君の名は…(だってしょうがないじゃない) feat. DELI, MUMMY-D
07. Dirty 30's feat. KASHI DA HANDSOME, MACKA-CHIN
08. Juicy (Life/Live pt.2) feat. PUSHIM
09. 自由帳 feat. RYUZO
10. Fire!!!!(阿鼻叫喚) feat. ANARCHY
11. Shall We Rock? feat. EQUAL, TARO SOUL, 竹内朋康
12. Ta-Ka-Yo-U-Ji(侍バウンス) feat. KREVA
13. こっちきてみな~flow on~ feat. COMA-CHI
14. 自由帳 feat. MURO
15. 反則(I'm So Kool) feat. JAY'ED, TWIGY
16. Murder Weapon feat. GOCCI, PAPA B, SEEDA
17. Don't Stop キボンヌ(Come Again) feat. DJ HAZIME, DJ KEN-BO, DJ WATARAI
18. Blight Lights, Big City feat. HUNGER, MISTA O.K.I, Mr. OZ


『vol.1』と銘打ちながら、なかなか『vol.2』が出ない2007年リリースのDABOの企画盤。
いきなり毒づきましたが、これがなかなかの良作で、リリース当時はよく聴いていました。たまたまi-Tunesをずらっと見ていたら懐かしくなり、聴きながらレビュー書いております。

本作の魅力は何と言っても、企画の根本であろう多彩&豪華なゲスト勢でしょう。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの一員として確固たる地盤を築き、ソロも快調にヒットさせていたDABOだからこそ集められたメンツで、それだけでも価値ある1枚と言えるでしょう。
若手からベテランまで、HIPHOPからそれ以外のジャンルまで。聴き終わる頃には満腹感でいっぱいになりそうなほど、様々なスタイルのアーティストが入り乱れています。

それでも感じるのは、2007年の空気感。
当時は何とも思っていなかったけど、今振り返ると、シーン自体が相当盛り上がっていたような印象を受けるメンツですね。

いわゆるベテランと呼ばれるZEEBRAやMUMMY-D、TWIGYにMUROなどからBESにSSEDA、ANARCHY、晋平太までが共存するアルバムなんて、やっぱりDABOにしか作れないと感じます。

色んなゲストが集結しただけあって、曲のテーマも多岐に渡っています。
見事に練られた内容で、DABOの統制能力、発想力には驚かされるばかりです。
シリアスあり、ユーモアあり、チルに最適な曲もあれば、ロック調の曲もあるといったラインナップ。

「2 Funky C.E.O.」ではそのタイトル通り、Phenomenonの社長であるBIG-O、アヴァランチを仕切るKayzabroとマイクを交わしています。「ここまで上ってきてみな」と言わんばかりの歌詞内容で、ものすごくHIPHOP的。

「World Is Yours」は、ZEEBRAと共に次世代を担うラッパー達に喝を入れるかのような楽曲に。形は違えど、ある点まで上りつめた彼らだからこその言葉に震えます。トラックは一時のKanye Westを彷彿とさせる声ネタが心地良いです。

ユーモアに溢れる「君の名は・・・」も捨てがたいです。というか、むしろ好きです。
3人のD君物語("D"ABO, "D"ELI, MUMMY-"D")とも言うべきマイクリレーものですが、歌詞の内容はお下劣ながら、ここまで聴かせてしまう芸当に脱帽です。特にMUMMY-D、やっぱり素晴らしい仕事ぶり。

また、他ジャンルからは、MUMMY-Dとのマボロシとしての活動も記憶に新しい竹内朋康、レゲエ界からPUSHIM、言わずと知れたレペゼンMighty Crown FamilyのPAPA Bなどが、ラップ一辺倒になりそうなアルバムに彩りを添えています。
特にPAPA Bは、起用のされ方もあり、ものすごく新鮮な印象で、その器用さを見せ付けています。

その他のゲストもDABOに負けず劣らず、その個性を発揮していて好印象です。
ぜひぜひ『vol.2』のリリースに期待したいですが、今作の面々も未だに最前線で活躍中ですから、リリースされるにしても、もう少し先が最適な時期なのかも知れないですね。


◆Shall We Rock? feat. EQUAL, TARO SOUL, 竹内朋康


◆World Is Yours feat. ZEEBRA(not PV)
~徒然趣向~-湊

『湊/鬼』

01. 自由への疾走
02. しのぎ feat. BLOM, K.E.I, D-EARTH, 輸入道
03. ひとつ
04. 感想文~阿片戦争~ feat. CRAZY-T
05. SKIT~性教育~
06. なんとなく
07. 酔いどれ横町 feat. 般若, SHINGO☆西成
08. つばめ
09. 言葉に出来ない
10. またね

福島県出身、自身の『小名浜』がクラシックと呼び名高い鬼の2011年発表作品。
衝撃とともに世間に放たれた『赤落』をきっかけに、壮絶な半生を描いた『獄窓』、ピンゾロa.k.a.鬼二家として音楽性が研ぎ澄まされた『P.P.P』を経てリリースされた2ndアルバムです。

非常に多作な印象があり、HIPHOP的だなぁなんて思うのですが、10月には3rdアルバム『嗚咽』がリリース予定なようで。常にセンセーショナルな彼なので、次作でも何かしらやらかしてくれるでしょう。

鬼が支持を集める理由って恐らく歌詞だと思うのです。
トラウマになりかねない幼少時代を過ごしたからこそ描ける、生々しすぎるまでのリアルな描写は、そんじょそこらのアーティストの作品で窺えるものではありません。その歯に衣着せぬ物言いが、良くも悪くも聞き手に衝撃を与えたことは言うまでもないでしょう。

ただ、そのような物言いの中に、多くの情が感じられることが、僕が鬼が好きな理由のひとつです。

また、そのラップスタイルですが、ともすればSwanky SwipeのBESにも似たようなフロウだったと記憶していたのですが、先述の『P.P.P』で、JAZZをベースにした流麗なトラックに乗る彼のラップは、非常に歌心溢れるものでした。
壮絶な内容の歌詞を、どちらかと言えば淡々と紡いでいくため、我々聞き手は、えも言われぬ緊迫感とともにその歌詞を受け止めざるを得ないような、そんなスリルをひしひしと感じられます。

この『湊』での鬼は、歌詞の芯はそのままに、ピンゾロで得たラップスタイルの感触を昇華させたような、そんな進化を感じさせてくれました。

中でも秀逸なのが『つばめ』。
叙情的、という言葉が一番しっくり来るような気がします。僕自身、歌詞は、その曲の世界観を映し出すものでなければならないと考えていますが、その点において、かなり高いレベルでそれが実践されているように感じます。誇張でも何でもなく、まるで一編の小説を読むように描かれている情景をイメージすることが出来ますし、見事としか言いようがありません。
そんな『つばめ』から一節を。

分からなくなる 積み重なる春 また儚く桜は咲く
愛を欲し憎しみが生まれる どれも幸せを求めてる

そのほかにも、ちょっと印象の異なる、般若とSHINGO☆西成を迎えた『酔いどれ横町』は、昭和感漂う情緒ある仕上がりとなっています。さすが昭和レコードからの2人の召還と言えばセンスの悪いジョークに聞こえますが。
それでも、トラックの雰囲気も相まって感じられるのは、場末の寂れたバーの情景。当人達がそのようなイメージで作詞したかは定かではありませんが、それほど強烈な詞世界は、素晴らしいという言葉では言い表せないほど。

文学作品と見まがうほどの哀愁と現実味、緊張感を伴う歌詞世界。
アルバムをまたいで似たような題材が多いのもまた事実ですが、聴き応え充分の作品です。


◆小名浜


◆自由への疾走


◆ばくち(from 『P.P.P』
~徒然趣向~-GO

『GO/KREVA』

01. 基準
02. 挑め
03. KILA KILA
04. 蜃気楼 feat. 三浦大知
05. 呪文
06. runnin' runnin'
07. HOT SUMMER DAYS
08. 微炭酸シンドローム feat. 阿部真央
09. パーティーはIZUKO?
10. C'mon, Let's go
11. EGAO
12. 探究心


ランキングが上がるのが楽しくて割と頻繁に更新してましたが、やっぱり息切れっす。
そしてカルミン様から指摘を受けました。「止まったな」と。

ブランク明けのテーマが「KREVA」。ようさんヒットしそうという理由での選択ではありません。
CD屋さんで、買うか買うまいか迷いに迷って最終的に購入しました。

KREVA名義の曲ってリリースを追いかけてたのはいつ頃だったろうか。KICK THE CAN CREWが活動休止になって、そんなにスパンを置かずに出た(・・・と記憶してる)、2004年の『新人クレバ』と、続く『愛・自分博』くらいまでだったような。

大衆に迎合しすぎている印象が強かったんですよね。
多分、「今、自分がやりたいこと」にものすごく忠実な方なんだろうな、と想像できるんだけど、彼にぶら下がってる経歴(B-BOY PARK MCバトルの件)に対する期待が大きかったのかなぁ、って。
「ソロで何かやってくれるはず」って気持ちも強かったし、彼の歌として「頑張れ」みたいな応援歌よりは、攻撃的な詞が聴きたかったのかも。
それほど影響力を持ったアーティストであることは間違いなかったから。

そんなこんなで遠ざかっていたKREVAのソロ5枚目のアルバム『GO』。遠ざかっていたにも関わらず、購入したのは、たまたま観たテレビで歌っていた「基準」がかっこよすぎたからです。

某掲示板で見たのですが、「頑張れ、みたいなこと言ってて、急に前触れなく毒を吐く」ってのが、とても的を射た意見だと思うのです。何でこのタイミングなのかはKREVAのみぞ知るところですが、ポップアイコンとしての地位も確立した彼の言葉だからこそ、その毒性は増すような気がします。

様々なインタビューで語られている通り、今作は非常にラップに気を遣っているそうで、一通り聴けばそれも納得の内容です。客演している三浦大知、阿部真央の担当部分を除けば、確かにKREVAが歌う場面が極端に減っている印象があります。

ラップも、早口でまくし立てるような部分もあれば、噛み締めるような部分があったりと、緩急ついたスタイルでラップの面白さを感じさせてくれます。

トラック面に関しても、基本的にはシンセを多用した従来のKREVA作品の流れを踏襲していますが、「基準」ではロック調のトラックとなっており、攻撃的なその歌詞との相性が抜群です。
また興味深いのが、外部プロデューサーの採用。2曲だけと数は少ないですが、そのうちの1曲は「蜃気楼 feat. 三浦大知」で、"Major Music"とのクレジットがあります。
このMajor Musicとして"HirOshima"の名前があるのですが、HirOshimaって、SEEDAの次作でタッグ組んでる人ですよね?徐々に注目が集まってきているのが感じられますね。

今作、攻撃的な部分を称えたレビューみたいになってしまいましたが、そのほかの曲も粒ぞろい。

夏の情景や恋愛模様を描いた「蜃気楼」や「HOT SUMMER DAAYS」、「微炭酸シンドローム」などがその例で、客演の三浦大知や阿部真央も華を添えています。

6枚目のアルバムをリリースする頃には、きっと新しくやりたいことが出来ていて、今作とはまた違う力を持ったものが出来上がるんだろうけど、KREVA、また気になるアーティストになってしまいそうです。

安定感があるのに実験的。まさに彼の立ち位置だからこそ出来る芸当とも思えてきます。


◆基準


◆C'mon, Let's go


◆KILA KILA(後半『ハヒヘホ』)
~徒然趣向~-スイカ夜話

『スイカ夜話/SUIKA』

01. スイカ夜話 with サイプレス上野
02. MUSIC JUNKIE
03. SKYFISH with STERUSS
04. ビートメイカー
05. Get On The Bus with Romancrew
06. スイカ夜話~Masterpiece
07. DRIP DROP
08. ミッドナイト、カラーバー with イルリメ
09. 孤独とダンス with リクオ
10. スイカ夜話~Body Movin'
11. 三つ目の恋
12. タマキハル with 降神
13. ほしずな with サト


冬を迎えようかという2010年11月にリリースされた、優しさに溢れた1枚。

SUIKAはキーボードやパーカッション、ポエトリー・リーディングなどを含む5人編成のユニットで、HIPHOPでは一般的とされる「MC+DJ」といった構成ではありません。
また、タイトルにもなっている『スイカ夜話』は、2004年から30回近くも開催されているという彼らの主催イベントの名前。アットホームな雰囲気が人気でリピーターも非常に多いのだとか。そこでの名物となっている、ジャンルを越えたアーティストとのセッションをパッケージ化したのが本作『スイカ夜話』。

冒頭に書いたとおり、アルバムを通しての印象は「優しい」。それこそ、生活の色んなシチュエーションにそっと寄り添うような楽曲が、多くのアーティストとともに作り上げられています。
非常にHIPHOPに精通していながら、その枠にはあえておさまらない雰囲気の楽曲は、時に先鋭性を感じさせてくれ、また時には懐かしさを感じさせてくれたりと、1枚通して聴いても飽きることはありません。
ファンキーな楽曲が飛び出したり、しっとりとした曲が続いたり、そんな風に油断していたら、「04. ビートメイカー」に代表されるような、HIPHOPマナーに則ったサンプリング・ビートが出てきたり。
トラック面では、1本筋が通っていながらも彩り豊かな印象。

また、「優しさ」を感じる要素としてぜひ挙げたいのがポエトリー・リーディング。
メロディーに乗るのとは違う、でもラップとは明らかに異なるそれは、その名の通り詩を読むかのような温かい印象を僕達リスナーに与えてくれます。

表現は非常に難しいですが、安心感が得られるような印象があります。そんなポエトリー・リーディングを担当するtotoとはある意味対照的な、タイトなラップをするタカツキとATOMのコントラスト、はたまた豪華なゲスト陣とのコントラストがとても魅力的だと感じます。

そんなtotoの数ある言葉の中でとても印象に残った一節を。

狂うことが恋というなら
わたしは世界中のものに恋をしている
あなたにつながるすべてに つながらないすべてに
        (09. 孤独とダンス with リクオ)

さてさて、ゲスト陣。
やっぱりHIPHOPアーティストが目立ちますが、それぞれが個性を残したままで、SUIKAの独創性と良い化学反応を起こしているように思います。サイプレス上野なんて1曲目の初っ端から「やりてぇなぁ」ですからね。

そんな多彩なゲストの中でも秀逸だったのが、STERUSSと降神。

STERUSSは、BELAMA2とCRIME 6の2MCの器用さが際立っているように感じます。本作中では珍しい部類に入るであろう疾走感あるトラックを見事に乗りこなしているにも関わらず、言葉のひとつひとつがしっかりと聞き取れます。素晴らしい働きだと思います。

そして降神。もはや、「降神」という名前でクレジットされているだけで興奮を覚えてしまうほどユニット名義でのリリースから遠ざかっている彼らが召還されたのは、まさにHIPHOP絵巻というべき、15分を越える超大作。
メンバーそれぞれが長めの小節をまたいで描くのは、それこそ1冊の小説のような物語。
それでも長さを感じさせないのは彼らのスタイルが全く異なり、個性に溢れ、無意識のうちに心ごと奪われているからではないでしょうか。

この作品『スイカ夜話』を手にしようとしているなら、どうか静かに歌詞カードを手にじっくり世界に浸ってほしいと願います。お気に入りは数曲かも知れないけれど、その数曲に出会えたとき、きっと優しく穏やかな気持ちの自分と出会えるはずです。


◆タマキハル with 降神(edited version)


◆SKYFISH with STERUSS(live version)
~徒然趣向~-STRONG

『STRONG/呂布カルマ』

01. KILLING JOKE
02. 恥知ラズ
03. FUCK HOLIC
04. STRONG JET CITY feat. BASE, B-Drunky
05. 下世話
06. SKIT ~正直~
07. HOLY SHIT
08. UNDEAD MAN MARCH feat. CROSS BORN, VANGUARD
09. グロッキー・ボーイ
10. JET CITY PLAYERZ (Baby Baby Remix)


ランキングが少し上がったのを良いことに、平日も更新します。
いつまで続くことやら。

今回は東海地区を土壌に活動を展開する呂布カルマの最新作を。
とは言うものの、ほとんど知名度はないんじゃないでしょうか。。そんなアーティストの作品を紹介して「俺こんな人まで知ってるぜ」なんて優越感に浸りたいわけではありません。

僕もほとんど知らないんです。

とある方のブログに彼の1stアルバム『13 SHIT』が紹介されていたことがきっかけ(しかもメチャメチャ高評価)で、2ndアルバムの『四次元HIPHOP』を購入したことが彼との出会いでした。
ちなみに、『13 SHIT』の方は今も聴くことが出来ていません。どこかに売ってないですかね?

さて、このアルバム『STRONG』の購入に至ったのは、言うまでもなく前作『四次元HIPHOP』でぶっ飛ばされたからなのですが、その魅力は、やはりその自信に満ちたラップスタイルだと思います。それでいて、非常に韻がかたい。この韻のかたさは、個人的に大きな魅力であります。

「言いたいこと言うのがヒップホップだろ」とはどこぞのアーティストの言葉だったと記憶していますが、そこに重点を置くあまり、「言葉遊び」として大きな役割を担っていた韻(ライム)が二の次になってしまっている現状が寂しかったりするんですよね。

もちろん、メッセージ性が重視されることにより、アーティストの言葉がしっかりとリスナー側に届き、彼らの言わんとすることが明確な輪郭を有して伝わるという点においては、「言いたいことを言うヒップホップ」にも魅力は感じます。
でも、たとえば、韻を踏みながら、制限を受けることで限られる言葉の中で、「言いたいことを言うヒップホップ」が出来たら、そんなにかっこよく、スマートなことはないのではないでしょうか?

トラックが何を意味するかも分からない高校生だった自分が、ヒップホップ・・・もといラップに魅了されたのは、その制限を受ける中で、的確に自分の考えを形にするアーティストに衝撃を受けたからだったのです。

それから早10年弱。ずっとこのヒップホップという文化に触れる中で、様々なスタイルを持つラップ・アーティストが登場し、そのそれぞれがどこに重きを置くかは、まさに十人十色となりました。そのほぼ全ての個性が光っていて、相も変わらず僕は魅了されっぱなしなのですが、今回の呂布カルマは、先程の言葉で表すならば、「韻を踏むことで言葉に制限を受けながら、言いたいことを言うアーティスト」。

前作のタイトル曲『四次元HIPHOP』の一節に以下のような歌詞があります。

歌ったPEACEは何かを隠した 歌ったDISは己を写した
奪ったKISSが心を満たした ウザったいっすわ Who gotta listener?

やっぱり何気なく聴いていてこのようなラインに出会うと、その後の全曲が気になってしまうほどのパンチ力を感じます。もちろん、このきっかけを元に前作『四次元HIPHOP』はお気に入りになりました。

そんな彼の3作目。
どちらかと言えば大きな期待とともに聴きました。

やはり韻に関しては「さすが」と言えます。さらに、思えば前作からなのですが、DISをテーマにした曲が多い。別に特定の誰かを指すDISではないのですが、今の日本のHIPHOP(・・・と呼ばれるもの)に不満があるのでしょう。
初っ端の『KILLING JOKE』でも以下のようなラインが鋭く牙を剥いています。


ステージ上がったら鉄の意志で べスポジ指定
テクを見せてくれ つべこべ言わずにテクを見せてくれ

ただチャラいだけのラップさいなら ただ悪いだけのラップさいなら
ただアツいだけのラップさいなら ただ上手いだけのラップさいなら
何が足らんか分からないなら カルマのラップ聴きゃ明らか
まるでダライ・ラマ それかサイババ 存在感が違うでかいマラ

ここまで言ってしまうと、もはや爽快です。

基本的にはこのような歌詞を基準にアルバム1枚を駆け抜けていく感じで、巷で流れるラブソングや応援歌は皆無。非常に男臭い楽曲がこれでもかと羅列されています。それを良しとするか悪しとするかは、リスナーの判断に委ねられる訳ですが、世間の市民権を得るかどうかと問われれば、答えはノーだと思うわけです。

変な意味でも何でもなく、彼の曲がチャートにランクインしている姿は想像できないし、もしかしたら、彼自身にもそんな考えはないかもしれません。
僕個人的には、去年立ち上げたという自主レーベル「JET CITY PEOPLE」に集うレーベルメイトとともに、自分達の信じるスタイルを貫き続けてほしいと思います。「分かる人に分かれば良い」という考えは必ずしも正解とは言えませんが、そんな異端児が活躍できるフィールドが、HIPHOPには存在して良いんじゃないか。そんな風に思います。決して広いフィールドじゃなくて良いから。


◆24 Bars To Kill [JCP 3104Dancehall Remix]


もはやリミックスの枠を超えてますが・・・笑

◆STRONG (trailer)