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『あなただけに渡します　落語「三枚起請」前編』江戸時代の夜明けの時間。朝の太陽が出て来た頃に多かったのがカラスなんだそうです🌅農村ではニワトリがコケコッコーと鳴きますが、都会だった江戸の街ではそこらじゅう…

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「源やん…ちょっと見てみ、あれ。」

「なんや？」

「あそこにメス犬が１匹歩いてて、その後ろをオス犬が３匹歩いてるねん。

あれ、やっぱり起請もらってるんかなぁ？」

「３人でムカついてるのにつまらんこと言うな‼️

え〜、邪魔するで」

「あら〜源さん起こしやす！

お久しぶりで、あのこもいーっつも

「なんで来ぇへんやろ？患ってはるんやろか？」

って…」

「ハハハ…😅

いやいや、もうあの子やらこの子やら言わんといて。

もうえらい目に遭って…」

「何を言うてはんねん。

あんさんとあの娘との仲、み〜んな知ってはるんやで？

お互いに堅〜いもんを握り合ってはりまんねやから…」

「それがなぁ…ちっとも堅くないんや。

もうグズグズになってしもてるわ」

「何ででんねん。

そんなことありますかいな、アホらしい。」

「ちょっと耳貸して」

「あら、怖いこと。耳貸せやなんて。

へぇ、内緒話？右と左どっちがいい？」

「そらどっちでもいいけど、よく聞こえる方で頼んまっさ」

「ほなこっちで…貸しますさかい、空いたらじきに返しとおくんなはれや。

なになに…うん…ふんふん…。

へっ？…はあはあ…あぁ、それは違う。

そんなん言うたったら可哀想…えっ？

いや、そら誰かの調伏…えっ！えぇ…？

ホンマに？…さよか…。

それやったらわても共々騙されてんまんねやな。

んまぁ〜、そんなことまで！

で、そのお二人さんも表に？

それを早よ言うておくんなはれ。

どうぞ、お連れさん！入っておくれやす。」

「こんばんは」

「こんばんは。騙され連中でござい！」

「んまぁ…ハハ…😅

悪いやつだっせなぁ…。

わたいも今聞いてビックリしましたんやわ。

そらまぁ、あれだけの顔持った娘は少ないよって。

せやけど、あんさん方もみな別々に遊びにお越しになるさかいそんな目に遭いまんねやで。

ウチヘずっと来てくれてたらそんなことない。

顔のええのんばっかり目掛けなはるさかいそんなめに遭いまんねや。

女子はココ（顔）よりココ（腹）だっせ❗️」

「はぁ…やっぱり胃が丈夫な方が」

「アホなこと言うてんねやない」

「またええ娘を世話させてもらいますがな。

腹のええ娘を」

「さよか。ほなまた騙され直しに来ますわ」

「いちいちそういうこと言わんでええ」

「あ、おちょやん。２階の奥のお座敷なぁ。

あそこ片付けてお座布は１つだけ…お客さんは３人やけどちょっと訳あって１つでいいの。

あとぶぶ（お茶）も１つだけで、用意できたらお通しして。

源さん、小照さんなら心配せんでもどこへいても必ず私がもろてきますよって、ちょっと待っておくれやっしゃ」

部屋へ通される３人。

「源やん…さっきのあれはここの姐貴か？

ええ女子やなぁ〜！」

「ええ女子やろ？

前はキタから新地に芸妓で出てたんや。

ええ旦那が付いて立派に引き祝いもやってからここに店出したけど、出して間なしに旦那が死んでしもた」

「えっ！ほな今、空き家か⁉️」

「空き家っちゅうやつがあるかぃ。

まぁ…後家はんみたいなもんやなぁ。」

「へぇ〜っ！

わい、もう小照やめてここに養子に来るわ！」

「お前みたいなもん養子にするかい！

ほらっ、履き物がそんな並んでたら小照がピンと来るやないか。」

「しかしいい座敷やなぁ。

源やん、いつもここ来てたんか？

へぇ〜、気が利いてあるなぁ。

わいも今度１人で来た時に小照に知らしたろ！」

「まだそんなこと言うてる…。

3人並んでたら何のために座布団１つにしてるかわからんやろ。

清八は衝立の後ろに、喜六は押し入れへ隠れろ。

清八、お前は背が高いんやからもうちょいかがめ。」

「源やんだけ小照と差し向かいはズルい‼️」

「ドアホ‼️

何のために来たんや。

早よ襖ピシャッと閉めんかい！」

「ちょ、ちょっと開けといて。

入る時に１発大きいのがブーっと…」

（バタンっ！）💢

「小照さん、送ります」

「お客、誰？源さん？源さん⁉️

まぁ〜こちの人かいな！嬉しいわぁ♫

実は昨日に神棚に線香上げたんやけど、神棚のお灯明に大きな丁子が乗ったら待ち人が来るって言いますやろ？

ホンマかいなぁと思ってたら、よう当たるもんやなぁ。

源さんが来てくれはったわ♫」

「源やん、小照来てるで♫

神棚に大きな丁子が乗ったんやて。

やっぱり３本乗ったんかな？」

「いらんこと言わんでええから黙っとけ！」

「源やん、あいつは口がうまいからな。

最初に２つ３つボンボ〜ンとドツいてから話を付けなあかんで」

「わ、わかったよ。」

「源やん、清八はあない言うてるけど、ドツいたるのは可哀想や。

ドツかなあかんかったらワシの頭を…」

「うるさいなぁ、お前ら！」

源さんがキセルで煙草を吸い始めると、部屋に小照がやってきます。

「あらどうも、こんばんは」

なんてことは言いません。

嘘にでも「年季が明けたら夫婦になろう」と言う仲。

黙ってスススーっと入ってくるなり、体でドンと押す。

「源さん、起こし…。長いことだしたなぁ。

よぉここへ来る道を忘れなんだこと。

どっか患ってたんか、あんた？

ずっと心配してたんやし」

「…あぁ」

「…何やのん、けったいな顔して」

「ふぅ…けったいな顔は生まれつきだすわ」

「？…どっかで喧嘩でもしてきたんか？

もう〜置いてや喧嘩は。

若い時はしゃあないってなもんやけど、これからはわてという厄介者がもうじきできるんやさかいな。

ケガでもされたら敵わんさかいなぁ。

胸さすって辛抱できるとこは辛抱してや？」

「スーっ…はぁ〜…。

その手も…ようさん呼ばれましたなぁ」

「憎たらしいこと…タバコばっかり吸って。

ちょっとわてにも一服吸わしとぉ。」

「…ほれ」

「…はぁ〜あ。

こんな商売の女子、何が楽しみだんねん？

たまには好きな人が来てくれて、優しい言葉の１つでもかけてくれる。

それだけを頼りに商売してるのに、それをツンツンツンツン…。

何が面白ないのか知らんけど。

キセルまで詰まってるやないの！」

「これこれっ！コツコツやるな！

詰まってるんなら通すもんやるからそう言え。

ほらっ、これで通せっ！」

「あらっ！

源さん、反故（ほご・いらなくなった紙）使ってんの？

歳やなぁ〜。

前は何やるにでも半紙持って、泥でも跳ねたらそれでクシャクシャ、パーっと捨ててたから、男らしいとは思ってたけどあんなこと所帯持ってからされてたらたまらんなぁと思ってたら、反故持って歩くようになった。」

小照が紙をちぎりながら何となく見ると内容がちらっと目に入りました。

「なんか手紙みたいやな。

女の人の手？（手＝女性のような文字のこと）

読んでもええか？

…！…源さん⁉️」

「どうした？」

「こっ…これ…あんた、私の書いた起請やないか⁉️」

「ま、起請といえば起請。

チラシみたいなもんや」

「チラシ…⁉️

人が命懸けで書いたものをチラシやなんて！

知ってるがな、島之内の方に逢い戻りができたあるってことは聞いてたから私も案じてたけど、こんな商売してるもんが悋気したら愛想尽かされると思うさかい、言いたいこともよう言わんかった…。

一生懸命遠慮してたのに…。

あんた卑怯やし！

切れたいんやったらハッキリ言うたらどう⁉️

愛想尽かしに起請出して、これでキセル掃除せぇやなんて…ハッキリ…ハッキリ言うてくれたら私…わぁ〜っ！」

「…どこをひねったらあんな上手いこと涙が出るんやろなぁ…？

ホンマに涙が出てるわ…。

小照…今オマエ、『命懸けで書いた』と言うたな？

命懸けで書いたんなら…１枚より他無いな？」

「当たり前やないか！

そんなもん何枚も書くやつがどこにあんねん？」

「それがあるから世の中面白いんや。

オマエ…きぃ公に書いたやろ？」

「きぃ公って誰やねん？」

「とぼけんでもええがな。

下駄屋の喜六。知ってるやろ？」

「下駄屋の喜六ってあの…小ちゃ〜い色の黒い団子みたいな男か？

んまぁ〜源さん、もうちょっと悋気するんやったらマシな人に悋気してほしいわ。

あれが私に起請書いてもらったとか何とか言ってたんか？

まぁ何ということ言うねやろなぁ、ホンマに。

あのジャガイモの焦げたようなやつが…」

「おい、ジャガイモの焦げたの。

ちょっとここへ出てこい！」

「コラ、小照❗️」

「あっ、来てんのやわ！」

「オマエ…❗️」

「ちょ、ちょっと…ヒソヒソ…。

アンタと私とは何や？…夫婦やないか！

ここは辛抱して！ヒソヒソ…」

「そんなオマッ…むぐむぐ…」

「あのな源さん。

あるお茶屋さんで義理に詰まって書いたけど、あれは字が２つ抜いてあるやろ？」

「わぁ〜っ！それ…ムグムグ…！」

「（ヒソヒソ）辛抱してってば！」

「ふふっ…あぁ、そうか。

字が抜いてあるって言うならまぁええわい。

まだある…」

「もうどこにも無いっ！」

「清八に書いたやろ？」

「清八ってどこの人や？」

「いちいちとぼけんでもええ。

指物屋（さしもの・机や箪笥など木材品）の清八。

知らんとは言わさんぞ！」

「清八…清八ってあの…背の高〜い、長背（ながせい・ノッポみたいな意味）か？

まぁ〜ようそんなこと…あんな入日の影帽子みたいなやつ…。

ここにいてたら向こう脛かじり付いたるわ！」

「おーい、向こう脛かじってもらえ、入日の影帽子！」

「おいっ‼️」

「あぁっ、そっちも来てるんやな…。

ああ…あんさん方、徒党して来なはったんか。

まぁこう揃われてしもたらどうもしょうがおまへんわな。

清八さん、あんたそれでわてをドツきなはる？」

「コラッ❗️」

「さぁさぁドツいておくんなはれ。

ドツき殺してもらいまひょ。

気の済むように。

でも私の体、頭のてっぺんから足のつま先まで証文に入ってまんねやで？

ちゃんとそれを片付けてからドツき殺すなとな。

ちょっと〜おちょやん！

ちょっとウチの親方に証文持ってくるように言うておくんなはれ！

清八さんがわてを殴り殺すって言うてはります」

「お、ちょ、ちょっ、そういうわけでは…」

「ほなその手はなんでんねん⁉️」

「これはオマエ…だから、これぐらいの松茸があったらナンボほどするやろと…」

「お金積んでドツく甲斐性はおまへんやろ⁉️」

「ハハっ、無い、無い♫」

「きぃ公、黙っとれ！清八も座れ！

コイツには勝てんわ。

…おい、小照。

『騙します』って看板上げてる商売のオヤマに騙されんのはこっちが悪い。

そら悪いけれどもや。

ちぃと考えろよ？清八なんかエゲツないがな、騙され方が！」

「えらいすんまへん…。

そらもうええことやとは思ってやしまへんけども、最近のお客さんの方がもうずーっと上手（うわて）で…。

なかなか通ってくれはらへん。

起請でも書いて渡さんことにはとてもとても…。

せやからこの頃は初回の晩から起請渡してましたんや」

「初回の晩⁉️」

「いちいち書いてたら間に合わんさかい、石板刷りにしよかと思ってたんや」

「石板刷り…おいおい、『あだに起請を１枚書けば熊野でカラスが３羽死ぬ』って言うんやで？

オマエみたいに起請散らしてたら熊野中のカラスが皆死ぬやろうなぁ」

「熊野中どころか、世界中のカラス殺してやりたいわ」

「なんでや？？？」

「私も勤めの身。

カラス殺して、ゆっくり朝寝がしてみたい」

〜終〜

さて、いかがでしたか？

ゴールデンウィークなので長いお話を２つお出ししました(^^)

さて遊廓は簡潔に言えば現代のキャバクラと風俗が一緒になったような場所です。

楽しくもてなされた後に情事に及ぶという、まぁ男としてはハマってしまう気持ちもわからないことも無いような気がしないでもありません🤖笑

少なくとも実際にそこから結婚する夫婦もいましたから、そういう点では今のキャバ嬢や風俗嬢よりも女郎達のイメージは悪くなかったように思います🤔

ホステスさんも大変ですが、落語の時代と違う点は現代にはホストがいることでしょうかね？

双方とも（？）疑似恋愛を楽しみにいくような場所ではありますが、いつの時代も時に本気にしてしまう人がいるようですねぇ。

恋愛沙汰をこじらせると大変ですが、しかしいつの時代も老若男女みんなこういう話が好きなのは変わりませんね

この演目はもともと上方落語のものでしたが、さすが吉原のある江戸落語でも演じられるようになっております。

（少しだけ内容の違う部分も面白いです♫）

テレビドラマ「タイガー&ドラゴン」でも題材になっていたのが印象的です🐅🐉

なかなか長くなってしまいましたがこれからもよろしくお付き合いくださいませ🙇🏻‍♂️

ではまた(^^)

あなただけに渡します 落語「三枚起請」後編

あなただけに渡します　落語「三枚起請」後編