大間原発でMOX燃料によるプルサーマルを実現しようとしてる「電源開発株式会社」(J-Power)が、その筆頭株主である英国投資ファンドTCIから「経営状況の改善のための役員受け入れ」を打診された、という短いニュースをロイター電で読み、これはいよいよまずい、という思いを持っていました。


まずは経緯と背景から振り返ります。


電源開発 の沿革は以下の通りです。

(主要設備運転開始時期等)

1952年9月 - 「電源開発促進法」に基づ1き、政府出資の電源開発株式会社設立
1956年1月 - 糠平発電所運転開始(糠平ダム)
1956年4月 - 佐久間発電所運転開始(佐久間ダム)
1960年12月 - 奥只見発電所運転開始(奥只見ダム)
1961年1月 - 御母衣発電所運転開始(御母衣ダム)
1965年10月 - 佐久間周波数変換所運転開始
1967年3月 - タイ国クワイヤNo.1(シーナカリン)水力発電計画
1967年5月 - 磯子火力発電所運転開始
1975年3月 - 鬼首地熱発電所運転開始
1978年7月 - 奥清津発電所(揚水式)運転開始(二居ダム・カッサダム)
1979年12月 - 北海道・本州間連系設備 (本州~北海道間)運転開始(日本初の直流送電による連系設備)
1999年3月 - 沖縄やんばる海水揚水発電所運転開始(世界初の海水揚水発電所)
2000年7月 - 橘湾火力発電所運転開始(出力:210万kW 日本最大級の石炭火力発電所)
2003年10月 - 「電源開発促進法」廃止
2004年10月 - 東京証券取引所の第1部に上場。
2004年10月 - タイ・カエンコイ2ガス火力発電所事業参画
2005年3月 - 比CBK発電所(総出力72.8万kW)買収
2006年4月 - 米テナスカ・フロンティア発電所権益取得
2006年11月 - 米エルウッド・エナジー発電所権益取得
2006年1月 - 豪クイーンズランド州クレアモント炭鉱開発
2007年9月 - 米グリーン・カントリー発電所権益取得
2007年11月 - 中国漢江一貫水力開発プロジェクト参入、権益取得(海外IPP件数:6カ国・地域 運転中16件、建設中3件)

政府出資の政策会社が、電力開発促進法の廃止(原子力百科事典 ATOMICAのリンク )に伴って民営化された企業です。


そして、民営化以降、現在筆頭株主に英国の投資ファンドを冠するこの総合エネルギー企業が、大間原発のMOXプルサーマルを稼動させるため、六ヶ所村再処理のプルトニウムを使うことを計画していこともまた、よく知られています。

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ここで、大間原発 (Wikipedia)は、「政策的な位置づけ」としての核燃料サイクルを推進するものです。

大間原子力発電所は、ウラン燃料だけでなく、MOX燃料を全炉心に装荷できることが特徴であり、1995年8月の原子力委員会決定によると、「中期的な核燃料リサイクルの中核的担い手である軽水炉によるMOX燃料利用計画を拡げるという政策的な位置付けを持つ。」とされている。

これは何も決め付けではなく、当のJ-Powerも掲げている看板です。

J-Power 電源開発株式会社 原子力発電事業


安全第一に原子力発電を推進

 J-POWERでは1954年以来、原子力の開発に関する調査・検討を重ねてきました。現在、青森県下北郡大間町において、大間原子力発電所の建設計画を進めています。大間原子力発電所は、国および電力会社の支援のもと、全炉心でのMOX燃料利用を目指した改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)であり、わが国における軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)計画の柔軟性を拡げるという政策的な位置付けを有しています。
 現在、わが国の原子力発電は、総発電電力量の約3分の1を占め、電力の安定供給のために重要な位置を担っています。また、燃料供給や価格の安定性のほか、運転時にほとんどCO2を排出しないなどの優れた特性(管理人: やはりいつもながら、この点だけが強調されています)もあります。
 資源の少ないわが国にとっては、一度利用した燃料(使用済み燃料)に残っているウランやプルトニウムを回収し、再利用する「核燃料サイクル」を確立することが原子力政策の基本となっています。

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そして、J-PowerのMOX燃料供給源についてのプレスリリースを見てみます。

大間原子力発電所でのMOX燃料利用について

平成18年1月6日 電源開発株式会社


 日本原燃株式会社の六ヶ所再処理工場では、本年2月から使用済燃料を使用したアクティブ試験が開始される予定であり、再処理の製品であるプルトニウムが分離されることになります。当社が計画している大間原子力発電所のMOX燃料に必要なプルトニウムは、国内の電力会社が国内外の再処理工場で回収し所有するプルトニウムのうちから譲渡されることから、大間原子力発電所でのMOX燃料利用計画について下記の通りお知らせします。



 大間原子力発電所(改良型沸騰水型軽水炉〔ABWR〕、138.3万kW)は、平成22年度の燃料装荷、平成23年度の営業運転開始を目指し、平成16年3月に原子炉設置許可を申請し、現在安全審査中です。 

 大間原子力発電所に装荷するMOX燃料については、計画的かつ段階的に利用していくことを基本的な考え方とし、初装荷として炉心の1/3程度以下を装荷し、段階的に全炉心MOX燃料利用を目指す計画です。 

 再処理工場に隣接して建設される予定の六ヶ所MOX燃料加工工場が操業開始するまでの間は、海外の再処理工場で回収されるプルトニウムを譲り受け、海外のMOX燃料工場で加工する計画です。 

 六ヶ所MOX燃料加工工場の操業開始以降は、原則として、六ヶ所再処理工場で回収されるプルトニウムを譲り受け、MOX燃料に加工する計画です。 

 六ヶ所再処理工場回収プルトニウムの利用開始時期は、六ヶ所MOX燃料加工工場の竣工予定時期である平成24年度以降を計画しています。取替燃料として、毎回、炉心の1/3程度のMOX燃料を装荷する段階において、プルトニウムの利用量(装荷するMOX燃料に含まれる核分裂性プルトニウム量を1年当たりに換算した年間利用目安量)は約1.1トンとなる見通しです。 以上

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今回の、株主提案は下記のような内容で、しかし当のJ-Powerは「報道を遺憾に思う」こと、また経営体制に問題があることついては否定しています。


ロイター 英TCIが電源開発に株主提案、役員受け入れなど要求

2007年 12月 4日 12:55 JST

 [東京 4日 ロイター] 電源開発(Jパワー)(9513.T: 株価, ニュース, レポート)の筆頭株主、ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)は、Jパワーに対して役員の受け入れなどを要求した。関係筋が4日、ロイターに明らかにした。Jパワーは、経営成績や経営体制について問題があるとは考えていないとの考えを示したうえで「書簡の内容については今後慎重に検討する」とのコメントを発表した。

 TCIは11月22日付でJパワーの経営陣宛に書簡を送付した。Jパワーが2004年に完全民営化した後も利益が低迷していることを指摘したうえで、TCI幹部を非常勤役員として受け入れるよう要求したほか、他社との株式の持ち合いを解消することなどを求めた。

 英投資ファンドのTCIはJパワー株式を9.9%保有する筆頭株主。今年6月のJパワーの株主総会で年間配当の引き上げを提案したが、反対多数で否決された。同時にTCIは、Jパワーの資本調達コストの低減や余剰資金の有効活用も訴えていた


J-Power 本日の一部報道について

平成19年12月4日 電源開発株式会社


 本日、ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンドが11月下旬に当社経営陣に書簡を送ったとの一部報道がありました。

 本件は、非公開を前提としたものでありますので、このような形で報道されたことを遺憾に思います。書簡の受領は事実ですが、内容は非公開でありますので、コメントは差し控えさせて頂きます。

 ただし、当社としては、報道にありますような経営成績や経営体制につきまして、問題があるとは考えておりません。

 この書簡の内容につきましては、今後慎重に検討してまいります。

以上

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MOX燃料を取り巻く重層的な問題について本来は最初にまとめておくべきなのですが、環境負荷の重さと技術的な危険性とともに、どんな弁を弄しても、核不拡散になんら効果がないという点も挙げられます。

しかも、日米の裏取引と言ってもよい手続きで、GNEP推進に「相乗り」した形でMOX燃料に、偽りの核不拡散性のめっきをかぶせています。

原子力資料情報室 

原子力委員会は何と言おうとも、MOXは核不拡散性に優れていない
投稿者: 原子力資料情報室 投稿日時: 2007/2/21 16:57:03


2007年2月20日に原子力委員会の政策評価部会が「原子力政策大綱に示している原子力の平和利用の担保に関する基本的考え方の妥当性の評価について(案)」を議論した。気になるところがたくさんあるが、MOX(プルトニウムーウラニウムの混合酸化物)の核兵器転用の可能性を否定することに原子力委員会がいかに苦しんでいるかを証明する一カ所だけをここで取り上げたい。

2006年11月17日に新潟市で原子力委員会政策評価部会は「ご意見を聴く会」を開催した。参加者の何人かが、政府等の主張と違ってMOXは核不拡散性に優れていないと指摘した。つまり、IAEA(国際原子力機関)が採用している保障措置基準においては、保障措置上の査察業務量を決めるときの目安とされている「適時性目標」に関して、プルトニウムとMOXとは同じ転換時間(異なった形態の核物質を核爆発装置の金属構成要素に転換するのに必要な時間)のカテゴリーに分類されている。この事実は明らかにMOXが核不拡散性に優れていないことを証明するので、「ご意見を聴く会」でうまく答えられなかった。核物質管理センターの代表(内藤香氏)は正直に以上の事実を確認しただけである。

そのままに放っておいては駄目だということで、原子力委員会の事務局は「妥当性の評価(案)」にMOXを正当化しようとする文言を加えた。しかし、読んでみれば、MOXの核不拡散性をアピールすることにいかに無理があるかがよく分かる。2月20日に提出された「妥当性の評価(案)」にこう書いてある:

「なお、IAEAが採用している転換時間は、酸化プルトニウム及びMOXについては1~3週間となっていますが、MOXの場合はこの範囲の上端に、プルトニウム単体の場合は下端に位置する傾向にあるとされている。」

核爆発装置の金属構成要素に転換する時間が1週間から3週間まで増えたからと言って、いったいだれが安心するだろう。

もともと、日本のMOXに基づいている再処理計画の核不拡散性論には物理学的な根拠がないので、今まで原子力委員会は、アメリカをはじめとする国際社会の理解を得たから大丈夫だと言って来た。しかし、その理解の根拠は、日本の粘り強い外交のためにアメリカが妥協したということに過ぎない。そして、今まで物理的な矛盾が拭えなかったため、新しい言い訳を求めてまたアメリカに目を向けた。2月20日に提出された「妥当性の評価(案)」にこう書いてある:

「さらに、最近、米国が提案しているGNEP(グローバル原子力パートナーシップ)のトラック1で採用しようとしている再処理技術については、製品がMOXであることが用件とされています。これは、MOXがプルトニウム単体よりは核不拡散性に優れているという判断に基づくものです。」


実は、ブッシュ政権が2006年2月に提案したGNEPは核不拡散性に優れていないと多くの学者が指摘している。しかし、原子力委員会が言う「製品がMOXであること」は、最初に発表されたGNEP案にあったものではなく、原案はあまりにも非現実的であり、実現性があるとしても何十年も先になるので、もっと近い将来に採用できる技術から始めようという考えから出た案の一部である。結局、30年前に日本がどうしても再処理計画を進めたいからアメリカを説得したごとく、今ブッシュ政権はどうしてもGNEPを進めたいから核不拡散性の物理学的な根拠がなくても押し進めるという考え方から生まれた案である


六ヶ所再処理工場で作るMOX製品であれ、GNEPのトラック1の中で提案されているMOX製品であれ、核不拡散性に優れていない。原子力委員会は正直にそのことを認めるべきである。

フィリップ・ワイト

◆弊ブログエントリー

07/09/26
甘利経産相続投にあたり、原子力ルネサンスについてまとめます(郵政の資金も原資とされる?)


まるで芋づる式と言いたくなる、利権とご都合主義の連鎖が見られます。


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さらなる情報として、J-Power問題については、FACTA Onlieで、すでに07/6/25~27にわたりTCIの介入を予測する記事が書かれていました。


Jパワー対英ファンドTCI(1)――バーチャル株主総会

Jパワー対英ファンドTCI(2)――バーチャル株主総会

Jパワー対英ファンドTCI(3)――バーチャル株主総会


また、実際の株主総会では(同じくFACTAより)、


Jパワー対英ファンドTCI(4)――肩透かしの株主総会


にあるように意外な肩透かしがあったとのことですが、むしろ相手は長期戦略に出ていたということでしょう。


※このネット記事に先駆けて、2007年7月号のFACTAの本誌に掲載されているそうです。

 電源開発に挑む英ファンド株主の「倫理」



原子力利権にただならぬ闇と国策の名のもとの利権があることは理解していましたが、この、クリティカルな産業で、配当性向の向上や、経営への参画を行おうとする、海外からの大株主が「株主利益向上」のために、遠く離れた日本の北部地域で、世界が降りようとしているプルサーマルを推し進めることは十分に予見できます。


もの言う株主、という存在に(それが外資であれどなかれど)、日本全体に核のクライシスをもたらすスイッチとなることを許してはなりません。


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また、話題は変わりますが、柏崎刈羽原発について、先週末に以下のニュースを知りました。

(Googleニュースでは最近、こうした損傷発覚の話題がきわめてひっかかりにくくなっています!)

柏崎刈羽3、7号機でも損傷

11月30日10時3分配信 時事通信


柏崎刈羽原発5号機の原子炉内点検で、ずれているのが見つかったジェットポンプの振動を抑えるくさび(写真下)。2003年の定期点検時に撮影された写真(同上)では、正しくはめ込まれている(東京電力提供)(時事通信社)

最終更新:11月30日10時3分

この下の画像が、外れたジェットポンプです。



071130ジェットポンプくさび_5号機(震災前と後)



建屋の上での最大2000ガルの揺れ、放射能漏れ、作業員の被爆、制御棒の錆かどうかも分からない理由での抜き取り問題、燃料集合体のはずれ、ポンプの金具(と言ってもくさびの部分という重要部品)のはずれ、タービン翼の106枚以上の損傷、さらには160センチの構内の地表の隆起、結局断層が直下にあったことを国も電力会社も認めざるを得なくなりあとは「いつ分かったことにするか」という判断になったことなどからして、そろそろ、ほんとうのことを語るべきときが来た、という認識はないのでしょうか?


東電が県に復興支援金30億円


 東京電力は5日、中越沖地震の復興事業に取り組む県に30億円を寄付すると発表した。例年、県に入る核燃料税に相当する金額で、東電は「柏崎、刈羽など被災地の一日も早い復興に向けた県の事業に役立ててほしい」としている。

 30 億円は今月中に県に送る予定。東電は地震発生直後の7月下旬にも、柏崎刈羽原発がある柏崎市と刈羽村に2000万円ずつ、県に3000万円を寄贈している。今回の寄付については「これから本格的な復興の計画が出てくると聞いており、その役に立てればと判断した」と説明。金額は「社として総合的に勘案して決めた」とする。

 同原発は中越沖地震で全号機が運転停止し、使用する核燃料に課税される核燃料税が本年度は県に入らない見込みになっている。30億円は県の減収分とほぼ同額となっている

 寄付に対し、泉田裕彦知事は「(使い道は)柏崎市や刈羽村と相談するが、全県的に影響を受けた人に支援が届くような観点で考えてみたい」とコメント。同原発の運転再開への影響については「この話と技術的な問題はあくまで別だ」と語った。

新潟日報2007年12月5日

この期に及んで、企業の社会的責任(の最低レベル)遂行としてまず真っ先に行うべきことは、知りうる限りの真実を明らかにすることであり、明確な表明を封印しながら、支援の名で札束ををつらつかせることではありません。もちろん、住民の危険性の訴えと反対を押しきったことから、復興支援をするだけの責任はあります。


しかし、電源交付金や核燃料税が、地方の間にも新たな溝と地域振興への壁を作ったことに一切の当事者意識のないと見える東電が、税と全く同じ額を悪びれず支援することに、「税収を補填する=金を出すならいいだろう?」と平然と虚勢を張る様子を感じ取ります。


泉田知事の「この話と技術的な問題はあくまで別だ」とは、きわめてもっともな見解だと考えます。


【追記】

東電、4年前にすでにM7クラスの地震を把握していたそうです。

保安院への報告がなぜ今、この時期に「分かった」のでしょうか??


まさか、東電も保安院も揃って「記憶になかった」とおっしゃるのではないでしょうね?

他に何を忘れていますか?

もう自浄作用は期待できないのではないですか?

東京新聞 03年には「M7級」と把握 原発沖の断層で東電
2007年12月5日 23時00分

 東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)沖の海底断層を過小評価していたと指摘された問題で、東電が2003年、1つの断層を「マグニチュード(M)7の地震を起こす活断層の可能性がある」と再評価し、経済産業省原子力安全・保安院に報告していたことが5日、分かった

 この断層が動いても原発の揺れは想定を下回り、安全上の問題はないとして、再評価時や新潟県中越沖地震後も公表していなかった。同日、総合資源エネルギー調査会の会合で、中越沖地震後の調査も踏まえ「長さ約20キロの活断層」と報告した。

 東電はこの断層を、1980年代の原発増設申請の際に「長さ7キロ程度で活動性はない」と評価。国も安全審査で認めていた。東電は70年代以降の調査で、この断層を含めて4つの断層が原発沖にあることを確認。最も短い1つを除き活断層ではないとしていた。

(共同)


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UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA

引き続き、柏崎刈羽原発停止への署名↑をお願いいたします。

被災された方々の不安と風説被害に心よりお見舞い申し上げます。

同時に風説被害解消を挙げつつ安全宣言をいたずらに急ぐ政府・企業方針に懸念を覚えます。


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