ウインダムの造型 | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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ウインダムの造型

初代「ウルトラマン」(66年)が終わって4月からスタートの「キャプテンウルトラ」(東映)を半年間楽しんだ後のタケダアワー枠の新作が「ウルトラセブン」(67年)でした。

まず講談社の「ぼくら」や「少年マガジン」で、宣伝をかねた表紙や巻頭グラビア、特集記事、連載マンガで、「ウルトラセブン」の予習をしました。夏休みが終わったあたりからと思います。夏休みは「長篇怪獣映画ウルトラマン」の公開で、初めてカラーで動くウルトラマンを観て大興奮したばかりです。

「キャプテン」は宇宙怪獣が興味深くて飽きないんですが、いかんせん、巨人型ヒーローが出ません。シュピーゲル号も好きでしたけど、青い綺麗な宇宙は、モノクロテレビではほとんど黒です。

その点でも「セブン」は、宇宙人に宇宙、超兵器と「キャプテン」と似た感じでしたが、そこは成田さんの非凡なデザインセンスに惹かれた事は間違いありません。

新作は、現在でも子供たちは同様に番組や映画が始まる前に紙面から想像を膨らませますが、当時は限られた情報でした。講談社は「セブン」の敵を、宇宙の悪魔・宇宙魔人とネーミングしました。実際はそこまで怖い存在ではなくて、宇宙人たちはむしろ戦いの専門家であるセブンの敵には相応しくないほどでした。

ぼくは、セブンは見た目がちょっと怖い感じがしました。その分、速攻で惹かれたのがウインダムです。

当時のスケッチブックに、何回かウインダムが描かれています。6歳の子が夢中になる想像の先には、これが主人公で、セブンと一緒に戦う(いやその通りなんですが)、勇ましいヒーローだと思い込みが膨らみました。

10月に始まった第1話でさっそくウインダムはセブンより先に登場します。大活躍です。

なんといっても、まだ子供の目に、ウインダムがやられ役という意味は分かりません。カプセル怪獣たちは要するにセブンへのつなぎで、敵の技をぜんぶ受けますから、一種のテスターになります。そして、必ず力足らずでやられます。

そのやられっぷりが、時にマヌケで、時に可愛くて、面白い。いつの間にか、当初描いたセブンと共に颯爽と戦うイメージのウインダムをよそに、セブンの子分でも満足しました。動きも可愛かったし。

 

ウインダムももちろん成田さんのデザインで、フクロウなどの猛禽類をメカニカルにした意匠です。体はそのままロボットです。

造型は高山さん。なんと、ウインダムのラテックスで抜いたものが残っていたんですね。でも2つに折られてどうにもなりません。ドンゴロス(米やコーヒーを入れる大きな麻の袋と同じ素材)が裏打ちされていたので、硬くなってはいましたが、かえって腐ったりもなく形が保たれていました。後日、内側に粘土をつめて形を出して複製したものが、展示で使われます。

ウインダムは、マルザンのソフビでも良い出来でした。もしプラモデルで出ていたら最高だったでしょう。プラモデルは未就学児童には難しくて最初からモーターを無視して作りました。ホーク1号は動かなくても分離合体で、十分に遊びを満足させました。

前回書いたように、大期待の1話の怪獣なのに(宇宙人)、クール星人はソフビが出なかった事が残念でした。

ソフビは、セブンより明かにウインダムが格好良くてこれからどんな活躍をするのかと期待しました。結局、カプセル怪獣たちはレギュラーでありませんでした。

成田さんに言わせると、オモチャのための番組ではないと。青くするつもりのセブンを、オモチャメーカーが並んで反対して、子供が手に取る赤にしてくれと営業を説き伏せたそうです。

そこで、シャドー星人が爆破する倉庫は○3(マルサン)倉庫と名付けられました。

シャドー星人もラテックスの試作が残っていて、ペタンコだったのを、内側から粘土を詰めてふくらませて抜いたものが展示で使われています。

 

ちなみに、マルサン商店の怪獣は大ヒットしたのに、経営がよろしくなくて、お金が残らない、と言う相談を占い師の助言によって、マル(○・お金)が残るよう、ザンとしたのが、マルザンKKの言われです。

「セブン」のソフビは、キングジョーとユートムが最後でした。あとはブルマァクで、再放送時の発売です。

そうして、67年の放映から、80年の高山家訪問で、オリジナルのウインダムと出会うまで13年ですか。嬉しかったですねぇ。

 

「ウルトラマンZ」に出たウインダムは、生命体ではありませんが、ウルトラマンと一緒に戦うレギュラーです。オープニングでは、セブンガーとウインダムがウルトラマンZと出撃する映像で、とても嬉しいんです。

まさか、夢がいまごろ叶うとは思いもしません。

3号機はキングジョーだと思っていると、きっと外しますよね。Zと戦う強敵に、キングジョーはとっておくと思うんです。いっそ、鋼鉄巨人Gとかは。

いや、ペギラも良かったですね。黒い煙を出しながら飛んだらもっと良かった(※ちゃんと再現したんですね、作業中なので見逃しました)。

野長瀬監督に、なんで黒い煙だったんですか? と聞いたら、だって、ペギラのあの形は吊ったら格好悪いんだもの、と。

 

さて。やはり7年前、関西の知人からの依頼でウインダムを作りました。

かぶれるサイズです。送る前に自分でかぶって写真を撮りました。かぶれるよう、高山さんがやったように、自作の番線を編んだヘルメットを入れてあります。覗き穴も開けました。

自分用につくっておけば良かったですけどね、石膏型なので、壊して中味を取り出して、あとは破棄でした。

原型そのものは苦労はしないんです。楽しんで作れました。

ウインダムはパーツ類で悩みました。昔なら電気パーツは秋葉原で探せましたがデジタル時代に当時のジャンクを探す事は無理です。ぜんぶフルスクラッチにしました。

体の穴は、歯磨きの蓋を押したもの。したがって穴の周囲はギザギザです。首はラテックスで、ドンゴロスで裏打ちしました。ちゃんと表面にドンゴロスの模様が浮かび上がります。

本来は表面に目地が出ないようにガーゼでもはさむと丁寧な仕事なんですけど、当時の時間のない時の再現なので、面白かったですよ。