月一回開催、先生なし、女性だけの絵のクラブに参加して4年になる。入会のきっかけは月二回の絵のクラスの先輩Tさんから「先生なし、女性だけ、絵を描いて、一回千円で、一日遊べる」と誘われたからだった。一回試しに参加して入会を決意し、今に至っている。ほとんどが私同様の団塊の世代である。手を動かしつつ女性ならではの話題で盛り上がることが多い。また、絵が上手な10人の先輩諸姉からアドバイスも得られる。ありがたい会なのであった。

 

 先月、Tさんは、女性だけの絵のクラブに男性が入会したがっているということを私に伝えた。この男性は私も知っている人である。私達の住む区では、区の文化事業として、区の施設を使う絵の団体の合同展覧会が毎年行われている。Tさんもこの男性も私も、また女性だけの絵のクラブのIさんも、展覧会準備委員会の委員である。

 

 この女性のクラブには男性は入れないと聞いていたので、びっくりだった。男女参画、多様性が叫ばれるこの時代に「女性だけ」は問題かもしれない。しかし、会の誰もが、女性だけの心地よさを享受しているように見受けられた。この話を聞いた日、バスに乗ると、偶然にもI さんが乗っていた。早速、男性入会希望の話をする。Iさんは会則に男子禁制があるはずだと言う。論客で通っている彼女も男性入会には賛成ではないと表明した。Iさんがこう言うなら、クラブの仲間も同じ考えだろうと推測し、私は少し安堵したのだった。

 

 それからほぼ一ヶ月後、女性だけの絵のクラブで、Tさんは男性入会決議を提案した。会則に男性禁止はないことがわかったこと、この男性が入会するメリットを紹介した。毎月の難儀な場所取りも、この男性が一人で責任をもって行ってくれるという。私達の区に限らず、公共施設の場所取りは大変である。府中市にいる知人は、場所確保のために朝6時から市役所に並ぶという。このクラブも原則第四金曜日開催が、金曜日ではあっても第四にならないことが多い。Tさんと私の所属する月二回の絵のクラスでも、場所取り係8人が美術室使用に応募して、確保ゼロになったときもあったほどである。また、イーゼル、かなり重い絵のための机なども、この男性が運んでくれるという。

 

 決をとると、反対は私一人だった。女性だけのクラブに男性の入会希望者がいることをメールで友達に伝えた折「女性の会に同世代の黒一点、うーん、その人一人暮らし?それとも奥さんいる?」、「一人でも入ってくる人の感覚は、ちょっとわからない…他に絵のブループは、いくつかある気もします。結果を教えてください」、「女性に囲まれて絵を描く男性~どんな感性の方かしら?ちょっと見てみたい気もします」という返信を得ていた。クラブの仲間も女性だけの気楽さを手放したくない、と考えているだろうと私は思っていたのだが、これは、まったくの「読み違い」だったわけである。入会を断ると会の存続が危うくなるから賛成という人がいた。確かに、私が入会してからのこの4年間に、高齢などのために5人がやめ、入会は私だけである。他の絵のクラスもどんどん会員が減っている。その結果、会が成立しなくなり、合同展覧会参加の会の数は、この10年で半減しているという現実がある。

 

 絵のクラブが終わって、「男性がいたって、私達のおしゃべりには関係ない」というOさんと、I さん、私の3人で、いつものように帰りのお茶をした。この折、Iさんは「裏切ってごめんなさい」と私に謝った。Tさんに恩があるという。私にはわからない歴史があるらしい。

 

  入会を断ったために、その男性から「逆差別だ」と恨まれて、合同展覧会準備作業が円滑に進まなくなっても困る。そういう意味でも、男性入会決定は、一件落着ということになるのだろう。