最後の講義「大林宣彦」

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NHK-BS1で放映された映画監督

大林宣彦さんの番組を見ました。

 

昨年、最新作「花筐」(はなかたみ)を完成させた監督。

実はクランクインの直前

監督に肺がんが発覚。

しかも3ヶ月という余命宣告を受けていたのです。

 

それでも映画は、見事に完成し

さらには日本の映画賞を総なめにしました。

 

余命3ヶ月!

体力も衰え、痛みと戦い、何より死の恐怖と戦う。

それは究極の逆境。

その中でいささかも衰えを見せない映画を完成させる。

 

そんなことがどうして可能になるのか。

監督にとって死とはなんなんだ。

どうしても知りたい。

 

もしかすると私が追い求めている答えが

そこにあるかもしれない。

 

そんな気持ちで番組を見ました。

 

内容は

氏が大学生に講義をするいう

いたってシンプルなもの。

 

講義にはいくつかキーワードがありました。

 

「映画とはフィロソフィー(哲学だ)」

そして

「100年後にわかる映画」

 

「映画がフィロソフィー(哲学)」とはどういうことか。

監督によれば

「自分が80歳になっても若々しい映画を撮れるのは

フィロソフィーがあるからだ」と強調します。

 

氏が作った映画は30本

本人曰く、その全てがぶれていないそうです。

 

それは氏の戦争体験に根ざしています。

その思いが映画作りの背骨になっていると。

 

氏は言います。

「周りの人がどんどん死んだ。

 あまりにも死ぬので

 それは映画の中の虚構体験のようだった」

 

7歳で終戦を迎えます。

しばらくして母とお風呂に入ります。

母の柔らかい肌が嬉しかったことが語られます。

 

風呂上がり、座布団に座って向かい合った母子。

その間には短刀が置かれていました。

それを見て大林少年はすぐに理解します。

進駐軍がやってきて僕たちを食べてしまう。

だから母ちゃんは僕を殺して自分も死ぬんだなと。

 

氏の映画に戦争の話いつも出てくるわけではありません。

アイドル映画もたくさん撮っています。

けれども少年の心に刻まれた強烈な戦争体験は

映画の奥深くに込められていきました。

 

「その時代のアイドル映画、ファンタジー映画、

 その中になんとか戦争の記憶を刻もうと努力してきた。」

 

そしてこうも言いました。

「売れる為の映画を作ったことは一度もない」

 

今の監督でこんなことを言える監督はいませんし

もしいれば変人扱いです。

 

大林さんが言えばさすがに圧巻の説得力。

 

氏は学生達に告げます。

「みなさんにゆるキャラになってほしくない

 国民総ゆるキャラ化。

 それは政府にとって極めて都合がいい。

 けれども同時に国民の不幸なのだ。

 映画はいつも真剣勝負。研ぎ澄まされたキャラになりなさい」

 

 「映画というのは楽しんで笑って、そしてすぐに忘れてしまう。

 そういうものに敗戦後の国家によってさせられてしまった。」


 

そして、氏は告白します。

「黒澤監督を意識している」

 

 黒澤監督の言葉として

「戦争という狂気に対峙する力は僕らの正気でしかない」

「正気とは何か。それは万物の本能」

 

大林監督は

「僕は僕だけが知っている過去のことをみなさんに伝えなければならない。

 それは未来を作る為の行為なのだ」

 

未来へと伝えていく映画

 
最新作「花筐」は
戦争の再現に重きを置いていません。
それは過去から見えてくる未来の姿を描いているのかもしれません。
 

「100年後にわかる映画」

氏の目指すものです。

では100年後にわかるものとはなんなのか。

 

氏が出した例はピカソのゲルニカ。
「もし、あの絵が戦争を忠実に描いていたものであるならば
子供から大人まであれほどの共感は得られなかったでしょう」
 
「私の映画もそう。
 全部が本当じゃない。けれど嘘が誠を伝えるということ。
 それができるのが映画であるし、誠を伝える映画を私は作りたい」
 
後世にそれが伝わり未来を作る力になる。
 
黒澤さんは大林さんに伝えています。
 
「平和を作るには400年かかるが戦争は一瞬で始まる
 それを君受け継いでくれないか」
 
大林監督は黒澤監督から引き継ぎ
大切なメッセージを伝えようとしています。
 
そして、自分が朽ち果てたら次の世代にそれを託そうとしています。
 
そのバトンリレーの中で
余命宣告に嘆いている余地などありません。
 
余命宣告を受けたとしても
爽やかな弁舌は健在です。
 
自分の肉体は滅びても
映画というものに託したものは続く。
 
監督にとって自身の死とは何か。
通過点です。
 
死の先に未来を夢見る遠大な視点。
 
それが番組を見て私が感じた答えでした。
 
 

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