夏海が初めての全国大会に出ることが決まったころ、
私はフルタイムで働いていた。
フルタイムと言っても、全員の定時が朝の10時から夕方5時半までという
少し変わった勤務時間の会社だった。
土日祝日は全部お休み。残業禁止、年末年始お盆GWも休みという
小さい子供二人を抱えている私にはありがたい職場だった。
いくつものホテルを経営している会社で、日々現場から現金を回収し
数えて銀行に預け、スタッフの給料を計算したり、必要な商品を
手配したり、仕入れ先にお金を払ったりする事務の仕事をしていた。
小さい子供を育てている家庭はどこもそうだと思うけど、
土日がお休みの職場じゃないと休みの調整が大変だ。
おまけに、未来の場合、二週間に一度はリハビリに通うのがいいとお医者さんは言うし、
とてもレアな病状のお子様だったので、何かと役所や病院、学校を煩わせることが多かった。命に別状はないのだけども、明らかに成長の状況が普通の子供とは違う。
役所と病院と学校は、個人情報の問題とかで、親の承諾なしに未来の情報を共有することも、病状を話し合ったりすることもできないし
こちら側も、病院や学校の受け入れがないと未来との暮らしがままならないので、役所病院学校役所病院学校役所病院学校、の無限ループ。
それに耐えないと私虐待してることになっちゃうのでしょうか?
私が虐待されてる状況の気がしないでもないんですけども。
少数にしてイレギュラーな障害児の中でも
カテゴライズされないイレギュラーな未来を、
役所も病院も学校も今あるルールの中でどう取り扱うのが最適なのか
困っていることは私にも痛いほどわかっていたので
病院にも学校にも役所にも文句はない。
頑張ってくれているのだチーム未来。
頑張ってこれが精いっぱいなのだから、あまり仕事を理由にノーを言うことはできない。
でも、仕事をしている以上、子供を理由に毎週のように休むわけにもいかない。
まして、女3人のその職場は、不妊で子供がいないAさんと、
離婚して旦那がいないBさんと、私のフォーメーションだったから、
なおさら子供理由で休みにくかった。そして、働かないでやっていけるほど、うちの経済状況は良いわけではなかった。
そこで、この10時からっていう始業時間が、本当に効いてくるのだ。
朝7時まず旦那を会社に送り出してから、次は7時20分に夏海を小学校に送り出す。
すぐに未来を乗せて車で家を出発して、
支援学校の送迎バスのくるショッピングセンターの駐車場に向かう、
7時50分に未来をバスに乗せて、すぐ家に引き返す。
8時20分にいったん帰宅して、
洗濯ものを干して自分の準備して9時半に会社に向かう普段の朝。
これで遅刻することはありません。
一般的な8時や8時30分始業の会社では成り立たない朝を
ハローワークさんの結んでくれた縁でどうにか働き続けさせてもらえらんだなー
役所やリハビリのある少し忙しい日は、朝8時半からの約束で役所や病院に行って、
9時半までの一時間で片づけて、未来を学校に送って、会社に滑り込めば30分程度の遅刻で済む。
同僚の一人が遅刻魔だったのもありがたく影響して、悪目立ちせずにすんでた。マジでこういうの神様が上手だーーありがたやーー
これよりもっと忙しい時はあきらめて一日お休みをもらうけど、絶対にダブルヘッダー以上詰め込んで、病院や学校をはしごする。
もう、売れてる子役のお母さんってこんな感じで次々スタジオをはしごしてんだろうなーと思いながら、自分もそいういう気持ちで行こうと必死だった。
お給料はそこそこだったけど、勤務時間が短くて、お休みが多くて。
それがこの会社のチャームポイントでした。
夏海が小学2年生のころは、5時半に退社して、5時45分までに学童にいって、
そして、6時に未来を迎えに行かないと延長保育料がかかるので、残業ないのもありがたかった。
この全国大会が決まったころには夏海も5年生だったから、学童に迎えに行かなくてよかったから、かなり楽になってきていたように思う。
未来は支援学校が終わったらバスに乗って帰ってくる。試合の時にいつも未来を預かってくれるグループホームのスタッフが未来を学校のバスから受け取って、私が迎えに来るまでの時間を見守ってくれていた。
仕事が終わって、未来をグループホームから連れ帰って。。。
全国大会を見に行きたいばっかりに、ここから急いで晩御飯を作って食べさせて、急いで風呂に入れて。そのタイミングで旦那が帰ってくるか、来ないかで夏海に未来を託して、週3~4、バイトに行ってたんだなー私。今思えばすごい頑張ってたなぁ。
どうしても試合見たかったってことだよねw
多分今でも同じ状況なら同じことしようとすると思うけどね。
同じことできる元気はまだ残っているのかな。残っててほしいな。
このあと、4人で全国大会に行くことができなくなってしまうのだけども。
この時はまだ、4人一緒以外を想像もしていなかった。