「何故JR東日本だけ…」という声に | 新田鉄人「久慈だョ!全員集合」

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難病と闘いながらピンの鉄道芸人、その他で活動する、元本物の鉄道の駅員と電気部、さらに保線の経験を持つ、新田鉄人のブログへようこそ!岩手県久慈市公認、北三陸久慈市ふるさと大使。潜水士の資格取得済。

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昨日まで日本列島に大変な被害をもたらし続けた、台風18号。被害に遭われた方々には、心からお見舞い申しあげます。
一昨日は関東の西を通過、首都圏ではそれほど強い雨にはなりませんでしたが、大変風の強い日となりました。JRの在来線はほとんどが麻痺状態となり、列島の立ち往生による長時間の閉じ込めまで発生してしまいました。
並行する私鉄が動いているのに、何故JRばかりが止まるのかという声が大変多かったそうです。しかし、これにはきちんとした理由がありました。
荒川夢悟「テツろぐ」-東日本E217系→.JPG
現在JR東日本では、風速が毎秒20mを超えると徐行運転、そして25mを超えると運転を見合わせます。以前は、規制がそれぞれ風速毎秒5mずつ甘いものでした。ところが、4年前の羽越線の特急「いなほ」号の、突風による脱線転覆事故で死者が出て、これを教訓に規制を強化、沿線に設置している風速計も大幅に増やしたのです。
突風は、大変狭い範囲に起こる傾向があり、JR東日本くらい台数を増やさないと再び事故の起きる可能性があります。
ここで大切なのは、最大風速と瞬間最大風速は違うということです。最大風速というのは、10分間の観測の平均値の中で最も値の高い風速。最大瞬間風速は、当然もっと短い時間で測り、大抵は最大風速よりも1.5~2倍は強くなります。列車を転覆させたりするのは、もちろん瞬間最大風速のほうです。瞬間的に風が強くなるのは、地形などの影響もあって狭い範囲です。ですから、風速計を増やせば当然列車を停止させなければいけなくなる確率が高まるのです。それと同時に、事故を防ぐ確率も高まります。
失われた命からの教訓で、首都圏のJR在来線はストップしたのです。まだ過去の規定が続いていたら、どこかで事故が起きていたかも知れません。実際に、並行する私鉄の中には、倒木などの事故がありました。幸い電車にはぶつかりませんでしたが、走っているところに木が倒れたら大変なことになりかねません。何もなかった路線は、あくまで結果論です。
交通が麻痺すると、本当に不便を強いられてしまいますが、命には代えられません。過去に犠牲になった方がいらっしゃることは、忘れてはなりません。風で止まらない鉄道が便利なのではなく、風で止まらない鉄道のほうが怖いという場合もあるのです。