$アルバレスのブログ

1925年頃執筆。
単行本1冊、223ページ
読んだ期間:2日


[あらすじ]
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1917年のロシア革命から7年後の1924年12月。
ある街角で一匹の野良犬=シャリクが苦痛にあえいでいた。
何か食い物をが無いかと徘徊していたところ、食堂のコックが熱湯を浴びせかけたのだった。
痛みに苦しむこの犬を助けたのは旧体制の世界的脳外科医プレオブラジェンスキー教授。
シャリクは教授の家で裕福な暮らしを始めた。
しかし、1週間後、シャリクは強制的にある手術を受けさせられた。
教授の目的はシャリクを使って生体実験をする事だった。
死後間もない男の体を入手した教授は、シャリクの脳下垂体と精嚢を、男のものと入れ替えた。
すると予想外にもシャリクは徐々に人間に姿を変えて行った…

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90年近く前に執筆されたのソ連作家の古典作品が最近刊行されたので、タイトルに惹かれ買ってみました。

ブルガーコフと言う作家は全く知らなかったんですが、「巨匠とマルガリータ」と言う傑作小説をものした方だそうですね。

本書はSF的な様相の中にソ連共産党・共産主義への痛烈な批判を内包したファンタジックな小説です。

1行目から犬のシャリクの苦悶の呻き声から始まり、その後約90ページ近くにわたってシャリフの目線からストーリーが進み、プレオブラジェンスキー教授の片腕のボルメンターリ医師による術後ノートを間に挟んで、ポリグラフ・ポリグラフォヴィチ・シャリコフと名乗りだした元シャリクだった男のハチャメチャな行動に右往左往させられる人々の様子を描く展開に変化していきます。

犬目線の箇所や犬から人間への変化の過程が中々面白い。

それと比べると後半のドタバタ劇は若干落ちるものの、どう決着するのかまでの引っ張り方は巧いです。

執筆年がレーニン死後1年後あたりのスターリン統治下と言う事を考えると、勇気のある作品と思います。

プレオブラジェンスキー教授は革命前の旧体制の代表のようなものであり、その上でシャリクに行った手術は共産主義実験と対比され、生まれた犬人間シャリコフは共産主義なわけで、シャリコフが如何にめちゃくちゃかを描けば、当然共産主義批判に直結するわけですし。

ただ、そういった内に秘めた(秘めてもないか)主義主張を度外視しても本書は中々面白い小説です。
何しろ文章も読みやすいし。

たまにはこういう本を読んでみるのも良いな。