$アルバレスのブログ

2008年発表
文庫1冊、314ページ
読んだ期間:2日


カナダの心理学教授で「犬のドリトル先生」としても有名な著者の31篇のコラム集。
実はこの方の事は全然知らず、本書で初めて知りました。

ワンコたちの楽しいエピソードをまとめたエッセイ集と言うものではなく、ワンコにまつわる数々のエピソードを交えて、ワンコの生態や歴史、人との関係性などを解説したものです。
なので、ちょっとした専門知識なども入る読み物。
表紙のかわいいワンコ写真のようなものが豊富にあるわけではなく、著者自身によるイラストと文章だけなので、そこんところ間違わなければ実に興味深い内容。
特にワンコ好きで読書好きな方なら満足できると思います。


内容をちょっとかいつまんでみますと…


ネアンデルタール人とクロマニヨン人の内、後者がなぜ生き残ったかの原因のひとつにワンコの存在があるとか。
社会性が高く集団生活をしていたクロマニヨン人はワンコとの共生の絆が生まれ、集落に危険が迫った時、いち早くワンコが警告を発するおかげで危険を回避する確立が高かったとか。
何と現代人が今のような繁栄を勝ち得た理由のひとつにワンコが深く関わっていた。
そう思うと、ワンコたちに頭を下げないといけません。


雄は攻撃的に思われがちですが、それは威嚇してるだけ。
雌は縄張り意識が強く、攻撃に容赦がない。
繁殖期間に入った頃、雌はぬいぐるみやボールを子供に見立てて隠したり守ったりする。
ウチでは雄しか飼った事が無いので比較が出来ないんですが、そんな感じですかね~


飼い主とワンコは似てると言いますが、これについても研究されてるそうです。
人はワンコを飼う時、自分の感性や趣味に合うコを選びます。
例えば長髪の女性が耳長のワンコや長毛種のコを選びがちで、ショットカットの人が短毛種のコを選びがちとか。
あと、有名な例で英首相チャーチルが飼い犬のブルドッグそっくりとか言う話は、実はチャーチルが飼っていたのはプードルで、娘がパグを飼っていたとか。
話がごっちゃになったんですかね。


世界中に優れた嗅覚を活用した警察犬がいます。
犯人のにおいを追跡したり、麻薬を見つけたり、爆発物を発見したり。
ハナペチャ系よりハナ長系のワンコの方がやっぱり嗅覚は上。
そのワンコの中で最も優秀なハナの持ち主はブッラドハウンドだそうです。
とぼけた顔して凄いんですなぁ。


ワンコのハナが濡れてる理由と言うのでこんな話が載ってました。
「ノアが箱舟にたくさんの動物の乗せて船旅している時、船底に小さな穴が開いてしまった。
それに気づいたワンコが自分の鼻先を穴に突っ込んで水が入ってくるのを防いだ。
神様はその行為にいたく感心され、皆にそれを忘れさせないためいつもハナが濡れているようにした。」
ワンコらしい御伽噺ですねぇ。


もう一つ御伽噺を。
ワンコはなぜ尻のにおいを嗅ぐのか?
「ワンコは本当は人の言葉も分かるしお互いに話も出来る。
音楽も好きだしダンスも好き。
しかしそれを人間に知られると猜疑心の強い人間はワンコを遠ざけるだろう。
だから人前でダンスなんかしないように神様は注意を促した。
ある時、人間がパーティを開いていた。
あまりに楽しげだったので、ワンコたちは離れたところでダンスに興じていた。
二本足で立ってダンスすると尻尾が土ぼこりを上げて邪魔だったので、みんな尻尾を取って重ねておいた。
すると騒がしいので様子を見に人間がやってきた。
ワンコたちはあわてて手近にあった尻尾をくっつけて家に帰った。
朝、起きてみると自分のしっぽじゃ無かった事に気づいた。
それからワンコは仲間に会うたびに自分のしっぽを付けてないか確認するために尻をクンクンするようになった。」
ほほえましい話です(^^)
ちなみにワンコ同様、人間も肛門のあたりにフェロモンを発生させる器官があるそうで、人の尻やまたぐらに顔を突っ込むワンコがいるのはにおいで状態を確認するためとか。
ウチのコも良くやってたなぁ~


忠犬ハチ公のような話は世界中にあるそうです。
また、はるかかなたから主人の元に返ってくるとかも良く聞きます。
最長記録は9ヶ月で2880km戻って来たフォックス・テリア。
小さいのに頑張りました。
また、80kmを泳いで帰ったつわものもいたとか。


バウリンガルの話も載ってました。
バウリンガルは有名な日本音響研究所所長の鈴木松美氏の開発した、ワンコの鳴き声を日本語に翻訳する機械の事。
実際は6種類の鳴き声にあらかじめ登録した200種程の日本語に関連付けさせるものだそうですが、似たような事を実践してる国があるそうです。
イスラエルの軍隊では基地警備にワンコを使っており、ワンコの警戒した鳴き声をを分析し、本当に危険が迫っているかどうかを識別する装置を使っているとか。
ワンコと話をする事が出来たらどんなに楽しいかと思った事は何度もありますね。
ただ、意思がはっきり伝わらないからこそ深く結びつく事もある。


ワンコがニャンコを追いかける理由についても面白い事が書いてありました。
ワンコとニャンコでは表現行動に微妙な違いがあり、それが誤解につながるからとか。
ニャンコが興味深げに目を見開いてみてるのは、ワンコにとっては威嚇に見える。
だからワンコはそれに対応してほえる。
ニャンコは危機回避のため逃げる。
逃げるものを追うのが本能のワンコは必死で追いかける。
尻尾が立ってる寝てるも意味合いが違うそうです。


人間は子供の頃にワンコと住んでいると協調性やリーダーシップが向上する。
さらにアレルギー疾患に強くなるとか。
人間の子供とワンコが戯れている姿は心和みますが、それ以外にもプラスがたくさんあるらしい。


アメリカでもワンコは法律上は器物扱い。
だからハリケーン・カトリーナが大災害をもたらした際、ワンコたちも悲惨な思いをした。
人間優先だからとヘリやバスに乗せてもらえず泣く泣く別れ別れになった飼い主とワンコ。
しかし、それに手を貸した人々も大勢いた。
先ごろの東日本大震災でも同じような光景を見ましたよね…
離婚の際にワンコの親権で争う事も多々あるそうで、やはりここでも法律上は器物扱いだからと冷たくあしらう裁判官もいるようですが、人間の子供と同等に判断するのが多くなっているようです。
ワンコは家族ですから。


中国ではペキニーズは貴族の飼い犬として定着していた時期があり、中華人民共和国が成立した後、ブルジョワ階級をイメージさせると言う事で大量虐殺されたとか。
ワンコに罪は無いのに…
今、生きている種は19世紀に中国に侵攻したイギリス軍が連れ帰った末裔との事。
全滅にならなくて良かった。


著者自身が動物虐待の汚名を着せられかけた話も載ってます。
ここは是非読んでみてください。


哺乳類で初めて衛星軌道を回ったのはロシアのワンコ=ライカ(雌)。
彼女は結局生きて戻ってはこれなかったものの、後任のベルカとストレルカは無事帰還。
ストレルカの子はケネディ家の飼い犬になりました。
アメリカではワンコを飛ばした事は無い。
その理由は「ワンコの飼い主が国中にたくさんおり、非難轟々になるのが目に見えていたから。」
気持ちは分かる。


ワンコは戦場でも活躍していました。
かつてアメリカは第二次大戦時、各家庭からワンコを徴用し軍用犬にしました。
戦争終結後、家族の元に返す契約だったはずが、結局は大半が処分されてしまう。
これもやはりワンコは道具と言う扱いのため。
最近ではこういう事はなくなったようです。
人間の都合でいいようにされてしまうのは残念です。


ワンコと一緒に寝るのは楽しいですが、弊害もあります。
ワンコは夜中結構寝返りや歩き回りをします。
そのせいで寝不足になったり。
第一次大戦の撃墜王、リヒトホーフェン男爵もそのせいで痛い目にあった。
彼の愛犬はグレート・デン。
いつも一緒にいて当然寝る時も一緒。
ある夜ワンコが落ち着かなく睡眠不足になったまま出撃。
帰らぬ人となった…
まぁ、これはワンコのせいとばかりは言えないですが、残念ですねぇ。


ワンコは天国に行けるのか?
キリスト教では魂がある者は天国に行ける。
魂があるのは人間だけだ。
だから犬は天国に行けない。
こういう事になってたそうです。
結局、ヨハネ・パウロ二世にこれは否定され、晴れてワンコも天国に行けるようになったようです。
こんな事説明されなくてもワンコは天国にいますよね。
ウチのコもいます。


かなり乱文ですがこういった話が掲載されています。
ワンコの本なのでワンコ中心ですが、ペットを飼っている人ならそれぞれに該当する事もあるはず。
思わず泣ける話もあります。

タイトルの「犬があなたをこう変える」も泣かせます。
原題とは異なりますが、この邦題を付けた編集のセンスに脱帽です。
確かにわたしも人生が大きく変わった気がします。
彼がくれた思い出の数々は深く心に刻み込まれてます。
思えば次の日曜日は彼の18回目の誕生日でした…