2001年発表。第22回日本SF大賞受賞。
文庫1冊、300ページ
読んだ期間:2日
[あらすじ]
二足歩行のカメ型ロボット=レプリカメのかめくんは、勤め先の合併に伴い解雇され、社員寮から出る事になり、クラゲ荘という木造二階建てのアパートに一人暮らしする事に。
新しい就職先は木星戦争を展示する博物館。
毎日コンテナをあっちへこっちへとフォークリフトで運ぶ。
たまにはコンテナから巨大なザリガニ型怪獣が出てくるので、かめくんも巨大カメメカを操って怪獣退治に勤める。
かめくんの趣味は図書館から借りた本を読んだりDVDを観たりする事。
図書館には女子大生のミワコさんがアルバイトしており、かめくんの甲羅を調べて卒論を書く。
かめくんの甲羅は、成長する一種のメモリーバンクになっている。
しかし、かめくんにはところどころ記憶が抜けているところがある。
もしかすると以前は木星の戦争に行っていたのかも知れない。
でも、木星の戦争が何なのか分からない。
少しずつでも何か思い出すのかな…
そんな事を考えながらかめくんの日常生活は続く…
実に不思議な味わいのある小説です。
SFというよりはファンタジー色が強いと言えるでしょう。
カメ型ロボットという日常生活にそぐわないキャラがごく普通の日常生活を営むアンバランスさ。
それを不思議と思わせない、かめくんの朴訥としたやさしさ。
りんご(特に紅玉)が大好物なかめくん。
言葉を発せずワープロで会話するかめくん。
たまには子供にからかわれたり、女子高生に笑われたりするかめくん。
多くの人たちとのふれあいの中、少しずつ記憶がフラッシュバックし、木星戦争や他のレプリカメの事を思い出していくかめくん。
そして、自分の行くべき場所に旅立つかめくん。
実にほのぼのとした情景の中にありながら、ラストに向けて綿で心臓を掴まれるような、ちょっと物悲しい雰囲気を漂わせる作品です。
こんなかめくんと友達になりたい。
そう思わせるやさしいキャラでした。
(残念ながら本書は絶版のようです。)
