1961年に発表された中篇5本をまとめたもの。ヒューゴー賞受賞。
遥か未来の地球。
太陽からの異常放射により植物以外の生物のほとんどが死滅。
地球は植物の王国と化していた。
地上に生きる植物以外の生物はわずか5種。
虎蜂(トラバチ)、木蜂(キバチ)、草蟻(クサアリ)、鋼白蟻(ハガネシロアリ)、そして人類の末裔達。
ヒエラルキーの最下層に生きる人類の末裔達は、自力で歩き、飛ぶ食肉植物や、敵対する蜂や蟻達との闘争と過酷な自然環境の中、小さな集団を作り、細々と暮らしていた…
はっきりとした年代が記されてはいませんが、数億年から数十億年未来の話になります。
(「太陽はノヴァ化している」や「月が軌道を変え1惑星として存在」などの記述あり)
想像を絶するような多種多様な生き物が存在した地球が描かれておりますが、
本書はSF小説というよりも妄想ドキュメンタリーと言った方がピッタリ来るという印象。
物語性はかなり希薄で、ラスト30ページあたりで若干、感じられる程度。
昨今、よくあるネイチャードキュメンタリー映画のように、複雑怪奇な未来の生き物たちの生態観察記録のようです。
よく、漫画家が「キャラが勝手に動き出してストーリーが進んでいく」という表現をしますが、本書の場合、著者の頭の中で生まれたイメージが勝手に増殖し、それを文字で著したような感じで、これを意図的に計算しつくして書かれているとすると(そうなんでしょうが)凄い事だと思います。
おかげで本書は全く先が読めません。
次々に現れる異形の生物たちに目眩がしそう。
特に植物類は凄いです。
動物のように飛んだり跳ねたりする食肉植物がたくさん出てきます。
ファンタジー映画でよく出てくる巨体を揺らしながら大地を闊歩する巨木とか、宇宙空間まで種を飛ばす巨大蜘蛛のような綱渡(ツナワタリ)とか、大地に君臨するベンガル菩提樹とか、文字で書かれた植物図鑑のようです。
上のあらすじでは植物以外は5種と書きましたが、読み進めていくうちにさらに多くの生き物が登場します。
(本書は、状況が主題となっていますので、あらすじを進めるとドンドンネタバレしてしまうのであまり書けません。)
一応、主人公らしきものもおりますが、状況に流されるだけの存在と言ってもいいものなので、感情移入するとか言った行為は出来ません。
人類の末裔達は女性をリーダーとする小集団での生活を営んでおり、希少な男性を多くの女性で守っているという状況。
ライオンの一家に似てるかも。
男性は生殖以外に役に立ってないので、この主人公の少年も最初はわがままな子供に過ぎないですが、色々な経験を経て成長していく…それほど成長はしてないかも(^^;
まぁ、とりあえず自立はします。
人類が原猿から知恵を付けていった理由付けの箇所は少し面白かった。
全ページ330ページとそれほど長くはないですが、読むのに時間がかかりました。
かつて上遠野浩平氏は本書をして「グロテスクな小説」と評しましたが、正にその通りの小説です。
これから読む人は、そのあたりを心して読む事をお勧めします。
