マリオ3Dコレクション感想 カメラを逆にするという愚行 | 司法書士のゲームブログ

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我が青春のゲーム、スーパーマリオサンシャイン。これこそがマリオシリーズの最高傑作だと断ずるに、一片の躊躇もない。

 

 

 

本作と直接の関係はないのだが、スイッチオンラインにて「スーパーマリオコレクション」も配信された。マリオ35周年記念の一環である。

 

つまり、スイッチ1台あればスーパーマリオブラザーズ、2、3、ワールド、USA、64、サンシャイン、ギャラクシーといった歴代のマリオシリーズがまるっと全部遊べるのである。自分のようなマリオで育ってきたゲーマーにとって、これほど幸せな状況があるだろうか?ついでにスイッチにはオデッセイも入っているから、本当に35年ぶんだ。

 

 

 

さて、そんな訳で同じくマリオ35周年記念の一環として発売された「スーパーマリオ3Dコレクション」だが、この約7000円という価格設定はどうなんだろう

 

WiiUでマリオ64が配信されたときは1000円だった。残りの2作品がそれぞれ3000円だとしよう。今なら原作のソフトを買えばもっと安くで手に入るんじゃないか?


実際、自分も本作を買ったときは弟から「え?もう全部持ってるじゃん。何でわざわざ買ったの?」と言われた。しかし上の概算はあくまで「そのハードを持っているなら」という前提である。64やゲームキューブなどは既に手元にないという人も多いだろう。マリオサンシャインなんか、ソフトのほうもプレミアが付いていてAmazonで3万円の値段がついていた。それだけに今回の再販は嬉しい人も多いだろう。

 

それぞれハードの異なるマリオ作品が一緒にまとめられているというだけでも有難いし、ソフト入れ替えの手間がないというのもいい。何より3つのマリオが1本に入っているというゴージャス感に抗えず、発売決定と同時に即買いしてしまった。3本ともとっくの昔にやり込んでいるにも拘わらず、である。

 

 

ただ、贅沢ついでにもう1、2点付け加えるなら、マリオ64はDS版で出して欲しかった。あっちのほうがスターは30枚も多いし、ワリオ・ルイージ・ヨッシーも使える。ミニゲームもついている。早い話が上位互換である。

 

DS版のときは十時キーだったので操作性に若干の難アリだったが、スイッチ版で再販されればその欠点はなくなる。原作が偉大すぎて発売以降なかなか再販されることのない作品だが、こっちを出してくれればお得感はさらに増しただろう(ミニゲームに関しては、タッチ操作の問題があるので難しいかもしれないが)。

 

あるいは、マリオギャラクシーは2も同梱して欲しかった。マリギャラはやっぱり1、2揃ってこそだろう。これが入っていれば価格的にも一切文句の付けようがない、超ゴージャスな作品として驚かれたに違いない。が、さすがにそこまでは求めすぎか。

 

 

 

そういう訳で、予めダウンロードし発売初日から遊べるようにしていた本作。もちろん最初に遊ぶのはスーパーマリオサンシャインである。

 

懐かしの起動音、描かれるM字マーク、謎の笑い声(誰の声なんだあれ)、オープニングムービー……何もかも記憶の中のままである。そうして最初のステージ「エアポート」を訪れるのだが、画面の中のマリオはまさにかつて自分が操作していたマリオのまま……ではない

 

マリオが思い通りに動いてくれない。ジャンプやスライディングは問題なくできるが、何かがおかしい。しばらく動かしてみて合点がいった、カメラの動きが逆なのである。しかし、あれほどマリオサンシャインを愛していた自分が、カメラの動きを間違えるなんて事があるのか?

 

慌ててネットで検索してみたが、やはりと言うべきか同じ状況に陥っている人がかなりいた。そりゃそうだ。手に馴染んだ操作をそうそう間違えるはずがない。

 

カメラには「ノーマル」「リバース」と呼ばれるものがあるが、早い話、マリオサンシャインについてはカメラが原作と逆になっているのである。また、他のボタンについても一部配置換えがなされており、原作のままの感覚で操作するとマリオが思わぬ動きをすることがある。

 

本作の中にキーコンフィグはない。しかし、スイッチ本体側でボタンの割り当てを変えることは可能である(設定→コントローラーとセンサー→ボタンの割り当てを変える)。

 

 

これが、自分が苦心の末に編み出した「マリオサンシャイン専用」キーコンフィグである。右側のボタン配置がガラリと変わっているのが分かると思う。なるべく原作に近い感覚で操作できるように調整しているが、そもそもGCコンとスイッチプロコンではハード的なボタン配置がまるで違うので、違和感を完全に払拭することはできない。

 

といっても、実はボタン配置が原作と変わるであろう事は発売前から予想していた。なぜなら、マリオサンシャインには「放水」アクションがあるからである。

 

GCコンはRボタンを押し込む強さによって入力を変えられるので、「弱放水」と「強放水」を1ボタンで切り替えることができた。

 ⇒話は逸れるが、これはGCコンの特徴を活かすために任天堂が編み出したアクションの1つなのだと思う。「少しだけ放水」したいときはちょっとだけ、「思いっきり放水」したいときは強くRボタンを押し込めば、その通りに水が出るというわけだ。ユーザーの心理と入力方法が完璧に一致した、素晴らしいシステムだと思う。

 

ところがスイッチプロコンにそんなアナログ的な機能はない。あくまで「押す」「押さない」を判別するのみである。

 

だから、マリオサンシャインがスイッチで出ると聞いたときは「放水のやり方は変わっちゃうんだろうな」と覚悟はしていた(R→強放水、ZR→弱放水というのはイメージと逆だったのでコンフィグで入れ替えたが)。

 

が、しかし。カメラに関しては違う。放水アクションは、原作から変更する正当な理由がある。しかしカメラにそれはない。いわば、カメラ操作という全く変える必要のなかった部分を、「余計なことをして変えやがった」のである。

 

恐らく、最近のゲームではノーマル操作のカメラが多いからとかその辺が理由だろう。しかし、多数派・少数派の議論は一旦置いておくとしても原作の操作があるならそれに準じるべきだし、変えるにしてもコンフィグなりを用意すべきである(というか、最近のゲームにおいてカメラ設定なんてもはや標準装備じゃないか?)

 

カメラのリバース設定なんてシステム的にめちゃくちゃ簡単に実装できるはずなのに、何故それを怠ったのか。ちなみにオプション画面では、「振動の有無」と「字幕の有無」を設定できるようになっている。

 

原作のゲームキューブ版ではこの「字幕の有無」が「音声設定」になっており、ステレオやモノラルに切り替えることができた。つまり、今回スイッチ版が発売されるにあたって音声設定が「字幕の有無」設定に置き換えられたのだが、そうじゃないだろ

 

 

カメラについてうるさく言いすぎだが、その理由は他にもある。まず、マリオサンシャインにおいてカメラは極めて重要な操作であること。「放水」というシューティング的な要素を持つゲームだけに、カメラの重要性は高い。冗談抜きで、Lスティック(移動)の次ぐらいに触る機会の多い操作である。右に歩こうとしたら左に動くぐらいの違和感だと言っていい。

 

そしてもう1つは、そもそも本作がリバイバル的な作品であること。これが完全新作マリオなら何も文句は言わない。しかし本作は違う。かつて遊んでいた作品の再販であり「懐かしい!」と思って購入した自分のような人間も相当数いるだろう。

 

そんな懐かしさに訴えるタイプのゲームでありながら、原作の非常に重要な部分を、特に必要ないにも拘わらず、原作と真逆の操作に変えてしまい、しかもそれをユーザー側で変更することもできない。チュートリアルは丁寧なのに、コンフィグを付けることを極端に嫌う任天堂の欠点が最悪の形で現れた。

 

結局、クリアした頃には本作の操作にもようやく慣れ始めただろうか。しかし操作に慣れた今でも、この点だけはまったく擁護的に捉えることはできない。特に序盤はドロドロパックンやボスパックンを倒すため頻繁にマリオ視点を使うので、ストレスがハンパじゃなかった。何度でも言うが、この仕様変更は「あり得ない」

 

 

(※ 2020年11月1日追記 … アップデートにて、カメラのリバース設定が可能になることが発表された。

 

やはり、このカメラに違和感を覚えている原作ファンが多くいたのだろう。その要望に、公式が応えてくれた形である。

 

だから、アップデート後に本作を買う人たちにとっては、上のカメラに関する議論はすべて無視してもらって構わない。

 

本作最大の欠点であったカメラに関する不満が解消され、本作はより素晴らしい作品になった。ただ、自分から一言付け加えさせてもらうなら最初から搭載しといてほしかった。)

 

 

 

さて、カメラに対する溜まった鬱憤を書き連ねたところで、本作の内容についてである。もともと「神ゲー」と名高い3作だけに、今遊んでもその面白さはまったく色褪せない。

 

まず驚かされるのは、グラフィックの美しさに代表される進化の早さだろう。マリオ64→サンシャインの間はわずか6年しか経っていないにも拘わらず、この進化ぶりは驚異的である。

 

最近のゲームも間違いなく性能面での強化は重ねているが、誰もが一目見ただけで「前と全然違うじゃん!」と思うような「進化の度合い」については、やはりSFC→64、そして64→ゲームキューブの世代がずば抜けている。本作に収録された作品を遊んでみれば、それがよく分かるだろう。マリオ3Dコレクションという作品は、進化の歴史でもあるのだ。

 

特筆すべきは「水」の美麗さである。マリオサンシャインは南国の島が舞台なだけに、こと水の描写においては気合いの入り方がハンパじゃない。これが18年も前のゲームだと信じられるだろうか?最新ハードで発売されたゲームと比べても何ら見劣りするところはない、というよりむしろ勝ってる

 ⇒ちなみに、本作からさらに18年遡ると1984年、つまり「パックマン」や「マッピー」の時代である。初代スーパーマリオブラザーズすら、まだ発売されていない。この18年間のゲームの進歩たるや恐ろしい。

 

 

 

そしてマリオサンシャインもう1つの大きな魅力は、アクションの爽快感である。本作のマリオは「幅跳び」ができないので、64プレイヤーからすれば「え、今回のマリオは幅跳びできないのか…」と思ったことだろう。

 

だが心配はいらない。新しく搭載された「ポンプ」を使えば、水滑り、ターボ、ロケットなど、64よりもさらにスピーディに、かつ爽快なアクションを楽しめる。このポンプが、ただでさえ高いマリオの身体能力をさらに引き上げてくれるのだ。

 

ただしその代償として、導入時(初めて本作の操作に触れたとき)のハードルはやや高い。この後、ギャラクシーやオデッセイが極力シンプルな操作を基本としているのも、本作の操作難度を踏まえてのことだろう。

 

しかしそれだけに、その裏返しとしてマリオが持つポテンシャルはシリーズで最も高い。新たなテクニックを身に付けるたび、攻略のルートはどんどん構築されていく。そしてかなりの無茶もできるようになるので、使いこなし甲斐がある。

 

最近のゲームはグラフィックの向上に伴い、プレイヤーの分身たる主人公もなるべく「現実の人間」に近付けようとする傾向がある。人間離れしたジャンプはできないし、高い所から落ちれば容赦なく死ぬ。それが良い方向に作用することもあるのだが、悪い方向に作用すると、せっかくのアクションゲームなのにどこか自由度の低い、もっさりした挙動になってしまう。

 

しかし、こと超人マリオにおいてそれはない。高さ数メートルのジャンプは当たり前、どんな高所から落下してもヒップドロップで完全ノーダメージ。動かしていると分かるが、とにかく「縛られない」のである。アクションの爽快感を重視し、開放的なマップを3次元的に、自由自在に飛び回る。「キャラを動かしているだけで楽しい」という言葉は、マリオサンシャインというゲームのためにある

 

 

 

ところで本作を遊んでいてつくづく思うのだが、マリオサンシャインはシリーズの中でもかなりのイロモノである。

 

まず舞台を「南国」に限定している時点で珍しい。他のマリオシリーズでは、ワールドごとに全く毛色の違うマップを冒険するのが通常である。

 ⇒しかし、南国を舞台にしつつも、ビーチ、遊園地、高級ホテル、更には世界遺産ばりの遺跡など、観光地としての雰囲気を統一しつつ全く異なるワールドを提供し、ユーザーを飽きさせないようにしているから流石である。

 

他にももっと異質な部分がある。本作のマリオが「悪人」だということだ。その理由はゲーム開始直後に明らかになる。

 

 

 

酷い裁判だ。

 

似顔絵だけで犯人だと断じられるし、マリオには完全なアリバイがあるのに有罪判決が下されるし、弁護人すら付いていないし、なぜか傍聴席から異議が申し立てられるし、その異議もまったく聞き入れられずに却下されるし、そもそも似顔絵とマリオがそんなに似てもいないしもうどこから突っ込んでいいのか分からない

 

これは、あまり本作に詳しくない者からすれば衝撃的な展開だろう。情状酌量の余地すらなく、我らがヒーロー・マリオが悪人呼ばわりである。ミスタービデオゲームを公式が犯罪者扱いである。

 

これを外伝作品がやるならまだしも、数年に1度しか発売されない任天堂純正マリオ本編作品でやってしまうのだから驚かされる。他のマリオシリーズが「クッパにさらわれたピーチ姫を助けに行く」というド王道なプロットをベースにしているのに比べると、これはかなり浮いている。

 

それに、この「ポンプ」自体、マリオシリーズにおいてはかなり異色な代物だと思う。「スピン」や「帽子投げ」といったシンプルかつ分かりやすいアクションに比べると、ポンプはあまりに「何でも出来過ぎる」のだ。

 

 

なぜ本作はここまで尖った作品になったのだろうか?その理由の1つは、マリオ64の存在にあると思う。3D箱庭アクションの礎を完全に確立し、その規範となった「マリオ64」。偉大な前作を超えるという重すぎる「使命」を背負った本作への期待と、開発者の苦悩は並大抵のものではなかったと思う。

 

もちろんハードの変化に伴い、順当に進歩している部分も多数ある。グラフィックに関しては本作のほうが1枚も2枚も上手だ。しかしそういった「当たり前の進化」だけでは本作は終わらなかった。ゲームを遊ぶだけで南国気分を味わえる「雰囲気の徹底」や、探索しがいのある「マップの作り込み」、そんなマップを思うがままに冒険できる「アクション性の追求」をはじめ、本作に散りばめられた「遊び」の数々は枚挙に暇がない。だから面白い。だから何年経っても色褪せない。

 

 

 

「マリオ64」「マリオサンシャイン」「マリオギャラクシー」、もしこれらの作品を遊んだことがなければ、ぜひ本作を手に取ってみてほしい。これらは、いずれも当時のゲーマー達が寝食を忘れて没頭した思い出の名作たちである。

 

最初は操作に戸惑うことがあるかもしれない。原作経験者である自分ですらそうだったのだから、未経験者なら尚更そうだろう。しかし、少しずつコントローラーが手に馴染んでマリオを思い通りに動かせたとき、「こりゃ確かに気持ちいいわ」と、かつてゲーマー達が味わった何物にも代えがたい悦びを追体験できるのではないかと思う。そして是非、マリオサンシャインという唯一無二の世界に入り込んでみて欲しい。

 

こうして本作を遊んでみて改めて思う。自分はマリオサンシャインが一番好きだ