ある配信者がいた。
人気もなく、人もあまり来ない過疎配信。
それでも男はそこに救いを求めていた。
日が沈む頃、近くのコンビニへ男はニルヴァーナを聴きながら闊歩する。
その姿は派手な髪色で、小汚い格好であり、この世界では浮いた存在。それでも人目をはばからずに、男は闊歩した。
安酒と栄養ドリンクを買い、店員へ不要な程の愛想を振りまき帰宅する。
この買い物は夜の配信の準備のための買い物でもあり、外へ出る唯一の口実でもあった。
家族から出された夕飯を終え、自室で配信の準備をする。
大量に用意された薬と酒。そして配信は始まる。
…。誰かがコメントするまで男は喋らない。薄暗い画面の中で下を向き何かを作っている。
手慣れた手つきで男は茶色の葉を摘み、紙で巻いて手巻きタバコを幾つも作っている。
そして、酒を栄養ドリンクで割った黄味がかった飲み物を口にする。
バックで流れる音楽は「死」や「絶望」がテーマの曲だ。そしておもむろにポリっと薬をラムネのように咀嚼する。
…。男の様子は次第に変わり、とろんとした目で画面のカメラを見つめる。
自暴自棄の生配信。恥じさえなく、男はありのままを曝け出していた。
物珍しさから、ちらほらコメントがつくも、既に男の呂律は回っていない。ひどい有様。
それでも、誰かと繋がる事が出来る配信が男の救いだった。
とうとう、酒がなくなり配信が終わると、男はカミソリを手に持ち、リストカットをする。
すぅっと血が流れるのを感じながら、ふうっと溜め息をつく。唯一のストレス解消法だ。
そうして、気持ちが落ち着き、ベッドで眠りにつく。
翌日起きると、血が固まり瘡蓋のようになった左腕を洗いながし、身支度を整える。
そして日が沈む頃、男はまた闊歩する。
ニルヴァーナを聴きながら。