7月19日(火)

空模様も悪い、なんだか滅入るような日、YAHOOニュースを見ていたら、突然、原田芳雄さんが今日、亡くなったことを知って、衝撃を覚えた。71歳、肺炎による死というが、以前にガンの手術をされていたから、体調の方も衰えていたのかもしれない。

先日、原田さんが主演した「大鹿村騒動記」の舞台挨拶をニュース番組で見たとき、そこに車いすの原田さんが登場して、そのあまりの痩せ細った姿を見て、大きなショックを覚えたが、まさかこんなに早く天国に逝ってしまわれるとは、思いもしなかった。



原田芳雄さんは、僕の大好きな日本映画の俳優だ。あの松田優作が俳優になったのも、原田さんに憧れてのことで、初期の優作は、原田さんのようなワサワサヘアーにレイバンのサングラスに、ジージャン姿まで、原田さんのスタイルをそっくり真似ていたことは、有名なハナシである。実際松田優作は、原田さんを慕うあまり、下北沢にある原田さんの家の隣に引っ越すほど、原田芳雄を敬愛していた。


原田さんは実に沢山の映画やTVドラマに出演しているが、調べたら、アカデミー賞は一度も取っていない。90年に「浪人街」と「われに撃つ用意あり」でブルーリボン主演男優賞を、92年にキネマ旬報の主演男優賞を「寝取られ宗助」で、97年に「鬼火」で毎日映画コンクール主演男優賞を、2000年に「スリ」でキネマ旬報主演男優賞を取っている。だが2003年には紫綬褒章に輝いている、日本を代表する名男優である。


初期の頃70年代の原田さんは「やさぐれ刑事」とか「野良猫ロック暴走集団71」とかで、いわゆるアウトロー俳優としてのイメージを強烈に植えつけた。あの苦み走った顔とワサワサの長髪としゃがれ声、その突っ張り野郎ぶりは超かっこよかった。この頃、初期のころの作品では最近DVD化された「反逆のメロディ」がいい。それと「野良猫ロック暴走集団71」。もうひとつ桃井かおりと出た72年の「赤い鳥逃げた?」もいい作品だが、なぜかDVDになっていない。


70年代後半からは、単なる無頼派のイメージから脱して、多くの作品で幅広い役柄を演じていった原田さんだが、その演技力はなにを演じても圧倒的な自己の存在感を感じさせた。80年の「ツィゴイネルワイゼン」、「寝取られ宗助」などが、その最たるものだろう。


僕は原田さんの映画は、なるべく沢山見るようにしてきたが、あえてマイベストをあげるなら、97年の望月六郎監督作の「鬼火」だ。ヤクザから足を洗って出所した中年男が、若い女と出会い、彼女の復讐のために、再び殺しの道に手を染めていく・・・という話だが、これがまさにハードボイルド!というべき、原田芳雄が寡黙な殺し屋の役を見事に演じているのだ。ジャン・レノの「レオン」に負けるとも劣らぬハードボイルドの傑作である。

また2000年の「スリ」でも素晴らしい演技を見せている。そして60年代の元学生運動の過激派を演じた90年の「われに撃つ用意あり」も素晴らしい。だが、「スリ」以外は廃盤か未DVD化なので、なんとかしてほしい。


原田芳雄さんは、野太い声といかついルックスで、やや怖いイメージがあるが、タモリ倶楽部に出たときなどは、電車オタク丸出しで、無邪気に楽しそうに電車のことをしゃべったり、コミカルなブルースを歌ったりと、ユーモアのセンスも持っていた人だった。かっこいいのに、自分ではカッコつけずに、自然体でいつも振る舞い、皆の兄貴として慕われていた。毎年年末には原田家で恒例の餅つき大会が開かれ、そこにはベテランから、TOKIOの松岡、ベッキー、妻夫木聡・・・等の若手までもが集まるというから、原田さんがいかに多くの人たちから敬愛されていたのかがわかるというものだ。


これはハナシだけのことなのだが、3年くらい前に、ある知り合いの映画監督が撮ろうとしていた映画があって、その映画には原田芳雄さんが出る予定で、その原田さんの弟分のホームレスの役で、ボクがオーディションを受ける、という「ハナシ」があった。だが結局、その映画のハナシは、スポンサー等の問題で、遂に撮影されることはなかった。もしそれが実現していたら、原田さんと会うことができただろうが、それはもう不可能となった。

別に原田さんのミーハーではないから、会いたいとか、サインが欲しいとかはない。ただ今の若い世代の人たちにも、原田芳雄という素晴らしい俳優が、素晴らしい演技をしていたことを認識してほしいと思うだけである。

とりあえず、中古で探してでも、「鬼火」、「スリ」、「反逆のメロディ」、「野良猫ロック暴走集団71」、「赤い鳥逃げた?」、「ツィゴイネルワイゼン」・・・・等々の原田芳雄主演の名作を、是非見て欲しいと思う。


俳優、原田芳雄の魅力とは、男はこうであるべきというストイックな生きざまを、決してきばらずに、自然体のままで、ふつふつと誰よりも強烈に、感じさせていた、その素晴らしい演技力にあったのだと思う。

名優、原田芳雄さんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。



鳥井賀句のブログ


映画「反逆のメロディ」より:原田芳雄



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映画「われに撃つ用意あり」より:原田芳雄