今週末の欧州首脳会議を控え、ユーロ相場はこう着状態が続いています。
そして私は、欧州債務危機はようやく終局を迎えつつある考えます。
そもそも欧州債務危機がここまで悪化した原因は、欧州首脳の政策行動の遅れにあります。
まずは今回の問題のおさらいをしてみましょう。
ユーロ圏とは、ドイツ、フランスなど、ユーロを通貨とする17カ国の通貨同盟をさします。
この17カ国は単一の通貨「ユーロ」を使用しますが、各国の財政、財政規律はそれぞれの政府に任されています。
各国が好き勝手に行動した結果、ギリシャのように財政が悪化する国が現れます。
さて、財政が悪化したギリシャはどうするのでしょう。お金を借りたいけど利子が高すぎて借りられない、そんな状況にあるわけです。
増税しようにも、国の経済は弱々しいのでそれもできません。
ギリシャはまさに破綻寸前になりました。
一般的に国が破綻した場合、IMFから援助を受けながら、通貨を切り下げ、輸出競争力を上げて、数年かけて復興していきます。
この、「通貨を切り下げ」というのが重要なポイントです。
あたりまえですが、ユーロはギリシャだけの通貨ではないので、ギリシャが勝手にその価値を切り下げることなど出来ません。
ユーロ建てで発行した国債はユーロ建てで返済しなければならないので、ギリシャは明らかに「自分たちの国力を過大評価した」通貨で借金を背負うことになったのです。
平時であれば、ギリシャがここまで借金漬けになることを他のユーロ採用国は認めなかったでしょう。
しかし、2008年のリーマン・ショックで痛んだ自国経済を救うため、ユーロ圏の各国はこぞって財政出動に乗り出し、大量のお金をつかったのです。
要は、「赤信号皆で渡れば怖くない」の心理が働き、お互いの財政規律に口出しをするのが難しくなったのです。
最も放漫財政であったギリシャが最初に標的となりましたが、市場のメッセージはもっと深かったのです。
ギリシャ問題が悪化し、スペインやポルトガルまで問題が波及し始めた際、欧州の首脳はこの問題をギリシャ一国で収めることを念頭に置きました。ギリシャを救えば、市場の不安は遠ざかると考えていたいのです。
しかし、市場はギリシャ一国を疑っていたのではなく、「ユーロ圏」の健全性に疑問を持っていたのです。そのメッセージは、
財政規律の異なる17カ国が単一通貨を採用しても上手くいくはずがない、
つまり、
ユーロは解体する必要があるかもしれない
ということだったのです。
我々金融機関は、このメッセージに比較的早く気がつきました。
そして、この債務危機は最後の砦である、ドイツまで波及すると見ていました。
しかし、当のドイツはもとより、財政規律の甘さではギリシャのことを全然笑えないフランスですら、ギリシャ問題はギリシャとポルトガル、スペインなどの国で収まると思い込んでいました。
その結果が、EFSF(欧州金融安定ファシリティ)のしょっぱい拡充をはじめとする、がっかり感満載の一連の政策行動だったのです。
ドイツの首相であるメルケルと、フランスの大統領サルコジが手を取り合って債務危機に対抗する共同声明を発表するたび市場は一喜一憂を見せましたが、根本的な解決には至りませんでした。
結局、債務危機はユーロ圏全体に及び、フランス、ドイツの2カ国ですら資金調達に支障をきたすようになりました。
では、欧州債務問題の根本的な解決策とはなんでしょうか?
それは、ユーロ圏各国の財政規律の統一と、この統一プロセスを各国が乗り切るための圧倒的な資金供
給です。
財政規律を正すというのは一朝一夕では達成できません。
各国、特に財政規律のゆるい国、南欧諸国は当面の間、低成長の中で財政改革を行うことになります。
圧倒的な資金供給なしでは、財政改革の途中で力尽きるのが目に見えています。
だからこそ、財政規律の強制と圧倒的資金援助の双方が必要なのです。
欧州の債務問題に終わりが見えてきたと私が考える理由は、欧州首脳がようやくこれら2つのポイントを示唆する発言をはじめたことです。
欧州版IMF設立計画の前倒しはこの一環だと言えるでしょう。
ただし、17カ国全てが賛同しないと一歩も前に進めない性質をもつユーロ圏、
一筋縄にはいかないと思います。
以上(笑)